太陽に降る「雨」が、太陽コロナの謎を解く鍵かもしれない

space 2019/04/09
Credit: © 1994 Úpice observatory and Vojtech Rušin, © 2007 Miloslav Druckmüller

太陽にも雨が降るって知っていましたか?

もちろん、降るのは水滴じゃありません。電離した気体(プラズマ)の熱い塊がコロナから太陽表面に降り注ぐのです。その温度は数10万度にも達します。熱いなんてもんじゃありません。遠目で見る分にはしだれ柳の花火みたいできれいですが、仮に地球に降るとしたら…?

コロナの雨は太陽活動の正体を探る上で鍵となる現象です。太陽表面で100万度に過熱されたプラズマは磁力線に沿って駆け上がり、はるか上空で冷えて太陽に降り注ぎます。このときのメカニズムを追うことで、太陽周辺の熱活動をよりよく理解できると期待されています。

太陽フレアのあとにコロナ上層から降り注ぐ雨がしばしば観測されていましたが、2017年にNASAゴダード宇宙飛行センターの研究チームは、思いもよらない場所で小さな雨を発見しました。この「棚ぼた」の発見が、太陽活動にまつわる2つのナゾを解く鍵になるかもしれません。

研究の詳細は4月5日付の「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されています。

Observations of Solar Coronal Rain in Null Point Topologies
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ab0c5d/meta

「苦行」の末の発見

研究チームの一員である大学院生のエミリー氏は、来る日も来る日も太陽の画像をチェックし続けていました。探していたのはヘルメット・ストリーマ(かぶと型の磁力線ループ)に降る雨。計算上ではそこに雨が降るはずなんですが、一向に姿を見せません。

ある日、探していたのとはぜんぜん別のところにちっぽけな雨を見つけます。「これじゃないんだよね…」という思いだったのでしょう、ミーティングに現れたエミリー氏は「ぜんぜん見つからない。なんか別のところにはしょっちゅう見えるんだけどね」とそっけなく報告します。それを聞いたメンバーは仰天。

「ちょっとなにそれ。誰もそんなもの見たことない」

コロナの雨から2つのナゾを探る

Credits: NASA’s Solar Dynamics Observatory/Scientific Visualization Studio/Tom Bridgman, Lead Animator

コロナは太陽表面とくらべて300倍も高温で、これは太陽物理学の大きなナゾの1つです。コロナの雨は大きな熱変化を伴う現象なので、太陽コロナの熱源を解明する鍵になると期待されています。

ゴダードのチームはこれに加えて「遅い太陽風」の発生メカニズムを探るという目標を持っていました。二兎を追っていたわけですね。観測によると、「遅い太陽風」の一部はヘルメット・ストリーマから発していて、宇宙空間に放たれるためにはまず極端な温度まで熱せられてから冷やされる必要があります。コロナの雨はこれに一枚噛んでいると思われたのです。

エミリー氏がヘルメット・ストリーマよりはるかに小さい磁力線ループにコロナの雨を発見したことで、コロナの加熱がこれまで考えられていたよりも低い高度で局所的に起きていることがわかりました。

Credits: NASA’s Solar Dynamics Observatory/Emily Mason

ヘルメット・ストリーマで雨が見つからないのは予想外でしたが、もう1つ予想外のことがありました。それまでの常識では、コロナの雨は太陽表面上の2点をつなぐ閉じた磁力線(ループ)にだけ発生するはずでしたが、エミリー氏は一方の端が宇宙に向かって開かれた磁力線にも雨が降ることを発見したのです。彼女たちのチームはこれを「磁気リコネクション(再結合)」によって説明しました。

二つの磁力線がぶつかると、交差したポイントで瞬間的に磁力線が切れ、つなぎ変わって再結合することがあります。閉じていた磁力線の一端が再結合で開かれると、蓄積されていたエネルギーが宇宙空間に一気に解き放たれます。これが大規模に起こると太陽フレアやコロナ質量放出になると考えられています。

太陽表面近くの小さな雨でもリコネクションが起き「遅い太陽風」を発生させている、というのがゴダードのチームが出した結論です。

偶然の発見から糸口をつかむ

棚から落ちたぼた餅がずいぶん役に立ったようですが、科学的発見にはこうした例がたくさんあります。現在の宇宙論の基礎になっている「宇宙波背景放射」はまったく別の目的で観測をしていた最中に偶然「ノイズ」として発見されました。カミオカンデで超新星爆発のニュートリノが観測されたのも偶然です。

 

これらはノーベル賞を生んだ偶然ですが、たんなる偶然だったとは言えません。常軌を逸するほどの注意深さと粘り強さで観測を続けていたからこその大発見です。エミリー氏もこうした「苦行」のようなことが大好きだと言います。まさに粘り勝ちというところですね。あ、でも、エミリー氏1人ではみすみす発見をふいにしていたかもしれません。チームで合わせ技一本の勝利というべきでしょう。

死んだ恒星を周回し続ける惑星を発見!

reference: nasa / written by Nazology staff

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