バイバイ物忘れ。高齢者の記憶力を電気パルスで回復させる実験が行われる

life 2019/04/10
Credit: depositphotos
Point
■ワーキングメモリーの衰えは病気の有無に関係なく老化によってだれにでもおこる
■前頭前野と側頭葉の間のリズミカルな同調の衰えがワーキングメモリーの低下とつながっている
■電気刺激によって高齢者の脳の同調を回復させることで、ワーキングメモリーが若者レベルまで回復

実用化されたらされたでちょっと怖いかも…。

一時的な記憶能力であるワーキングメモリーは、年齢とともに衰えていきます。しかしその衰えたワーキングメモリーを、科学の力で回復できるかもしれません。

新たな研究では、ワーキングメモリーの衰えた高齢者に害のない形態で脳に電気刺激を加えると、記憶力が一時的に回復することが示されました。研究は「Nature Neuroscience」に掲載されています。

Working memory revived in older adults by synchronizing rhythmic brain circuits
https://www.nature.com/articles/s41593-019-0371-x

ワーキングメモリーは誰でも衰える

この研究は、年齢による認知機能の衰えについての理解を深めるだけでなく、認知機能の回復をもたらす新たな治療法につながる可能性があります。認知機能が若返るのです。

ワーキングメモリーは、計算や意思決定をするために必要な情報を一時的に覚えておくための記憶能力です。顔認識や、計算、見慣れない環境での進路決定など、幅広い能力で必要とされる重要なものです。

ワーキングメモリーは認知症などがなくても、年齢とともに衰えていきます。この衰えの原因は、脳の2つの領域、前頭前野と側頭葉の間の接続が弱まるためと考えられています。

若い人の場合、この2つの領域の脳電気活性はリズミカルに同調しており、活発に情報をやり取りしているものと科学者たちは考えています。しかし、年をとると同調性の緊密度が下がります。

若者と高齢者グループで記憶能力をテスト

実験に参加したのは、20歳から29歳まで42人の若者と、60-76歳の42人の高齢者たちで、ワーキングメモリーを評価するテストが行われています。テストの結果、高齢者のグループではスピードも正確性も衰えていました。テストを受けた全ての参加者に対して、25分間の健康に害のない脳刺激が行われました。その目的は、2つの標的領域を同調させることです。頭蓋骨を通して弱いパルス性の電気刺激が脳にあたえられています。

この介入を行った後に再びワーキングメモリーのテストを行った結果、高齢者にグループでは、若者グループに匹敵する程度の改善が50分間に渡って見られました。最初のテストで特に成績の悪かった人ではさらに高い改善が見られています。

Credit: Nature

研究者は慎重だが、将来的には応用が期待される

認知症などの認識力低下の回復へと期待のかかる結果ではありますが、研究者は慎重な姿勢を示しています。まだ、二重盲検試験を通ったわけでも厳しい臨床試験を通ったわけでもないからです。サンプル数も少ないため、今後大規模な追試が必要となるでしょう。また、副作用についての評価もなされていません。ワーキングメモリーは改善されても、他の認知機能に悪影響が及ぶ可能性もあるのです。

しかし将来アルツハイマー病や統合失調症など、ワーキングメモリーが衰える病気の症状改善への応用が期待されるのも事実です。

 

社会の高齢化が進行し、認知症患者の介護が社会的な負担となってきていますが、新たな技術を使って認知機能の改善ができるようになれば負担も軽くなるでしょう。また、高齢者の学習能力が改善することで歳をとっても若々しく、新しいことを覚えて、いつまでも活躍できる社会となるかもしれませんね。

生涯現役じゃ。87歳の老人でも「神経新生」が行われている証拠が見つかる

reference: The Guardian / written by SENPAI

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