psychology

他者の意図を見抜く力は「諸刃の剣」だった

2021.01.27 Wednesday

2019.04.20 Saturday

Point
■他者の行動の背景にある意図を見抜く人の直感的能力は、他者に対する誤った判断への固執に繋がることもある
■こうした誤判断は、人が対象の場合には生じるが、意思を持たない物が対象の場合には起きない。
■他者が期待に反した行動をとる場合は、期待の影響を受けて正確な判断ができなくなる

人は、他者の行動の背景にある意図を、直感的に見抜くことができる生き物だ。

子どもに無理やりショーウィンドウの前に引っ張られて連れて行かれた時は「欲しいから買ってくれ」という意味だし、運動後にパートナーがドリンクを手渡してくれたら「喉が乾いただろうから、飲んでね」という意味だ。ショーウィンドウの前に立ち尽くして「どうしてここに連れてきたの?」と子どもに尋ねたり、冷たいドリンクを手にして「これ、どうすればいいの?」なんてパートナーに聞いたりする人は、そういないだろう。

だが、時にこうした傾向は、他者に対する誤った判断への固執につながるリスクもあるようだ。英プリマス大学の研究チームが、雑誌「Scientific Report」に掲載した論文の中で、その理由を論じている。

Cues to intention bias action perception toward the most efficient trajectory
https://www.nature.com/articles/s41598-019-42204-y

この研究は、人の他者の行動に対する「見方」が、自分自身が持つ期待によってわずかに歪められることを示した先行研究がベースになっている。

今回彼らは、これらの変化が、人が他者が持っていると考える意図をはっきり反映することを証明した。さらにこれらの変化は、人を見ている時には生じるが、意思を持たない物が対象の場合には起きないようだ。

見えていないものが「見える」!? 期待に反する他者の行動が誤判断を導く

研究チームは、被験者にいくつかの動画を見せた。対象物に向かってまっすぐに手を伸ばそうとする人と、障害物を避けるため弧を描くようにして手を伸ばす人の動画だが、どちらも対象物に手が触れる直前に手が消える。被験者は最後に手が見えた場所をタッチスクリーンで回答する。

この実験のミソは、障害物が無いのに弧を描くように手を伸ばす動画や、障害物が邪魔しているのに手をまっすぐに伸ばそうとする動画が、時おり織り交ぜられていたことだ。つまり、これらの動画で被験者が目にした場面は、人が取る典型的な行動についての彼らの期待と明らかに矛盾していたことになる。

障害物が映っているのに、期待に反してまっすぐに手が伸びる動画を観た被験者は、実際の動画から手が消えた場所よりも、わずかに高い位置で手が消えたと回答した。まるで、手が障害物を避けて弧を描こうとするのが「見えた」かのようだ。といっても、現実には手はそんな動きはしていないのだが…。

また、障害物がないのに、期待に反して手が弧を描くように伸びる動画を観た被験者は、実際の動画から手が消えた場所よりも、わずかに低い位置で手が消えたと答えた。つまり、現実に示された動画よりも、まっすぐに手が伸びたように「見えた」わけだ。

実験結果は、私たちがいかに、現実に起きていることではなく、自分の期待に基づいて他者の行動を見がちかを示している。先行研究では、前もって期待していた行動を他者がとった場合は、それを正確に判断できることが示されたが、他者が期待に反した行動をとる場合は、期待の影響を受けて正確な判断ができなくなるようなのだ。

次ページただし、対象が物の場合は大丈夫

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