芝刈りの匂いがステキに思えるのはなんで?

biology 2019/05/11
Credit: pixabay

芝刈りの後に強くなる緑の香りは、なぜ心地よいのだろうか?

この緑の香りの正体は、炭素が原料となっている揮発性物質、Green Leaf Volatiles(GLV)が混ざりあったもの。植物は昆虫などに食べられたり、病気や芝刈り機などで損傷を受けると、このGLV分子を放出する。

ではこの混合分子の組成は興味深いことに、何が原因で放出されたかによって変わってくる。

マックスプランク研究所による研究で、タバコの葉は昆虫の唾液と共に穴を開けられたり引っかかれたりすると、水によって突かれたり触られたりしたときとは異なる組成の匂いを発することが分かっている。

Insects Betray Themselves in Nature to Predators by Rapid Isomerization of Green Leaf Volatiles
https://science.sciencemag.org/content/329/5995/1075

GLVは風に乗って運ばれるほど小さな物質だ。風に乗って何キロも先まで運ばれることもある。草を食べる昆虫や、その昆虫を食べる捕食者は、GLVの香りに対してすごく敏感だ。

Geocorisというカメムシは、タバコスズメガがタバコの葉を食べたときに放出されるGLVに誘引される。つまり、植物が放つ独特な匂いは、捕食者に対して餌が近くにあることを教えているのだ。

芝や虫を食べない人間が、芝の匂いに惹かれるのはなぜ?

ところが、人は芝やそれにたかる虫を好んで食べるわけではない。それでも匂いを好ましく思うのは、私たちが食べる植物が放つ匂いが、芝のような草が放つ香りとそれほど違わないためだ。芝の香りに敏感な理由はそこにある。

すべての野菜も一種のGLVを放っているし、熟した果実もそういった分子を放出している。人は進化の過程で、熟した果実が近くにあるという情報を、香りを通して利用していたのだ。

余談だが、植物自体もこの匂いを認識して反応することができる。GLVは、近くの植物の花が食べられたりちぎられたりしていることを示している。そこで、例えば糖分や有用な資源を根っこや花以外の部分に退避させるという反応を示す。それによって、食べられた後に再び復活するための力を貯め込むのだ。

この反応は、芝刈り機が最初の草を刈り始めてから数分で始まるという。つまり、芝刈りを端っこから始めた段階で、芝たちはあなたが来たことを察知し、抵抗する準備を始めるのだ。

 

私たちが芝の香りを好ましく思うのは、その匂いに野菜や果物との共通点があるからだろう。ただ、どの成分が好ましい匂いであるのかまでは特定されてはいない。同じ匂いを昆虫も植物も利用して生きている。芝の香りは、生物同士が交わすコミュニケーションの一部なのだ。

なぜ青い生物は少ないのか?

reference: Live Science / written by SENPAI

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