「世界最強の毒」の解毒剤が発見される

life 2019/05/13
Credit: boxjellyfish
Point
■オーストラリアウンバチクラゲの毒は、人を死に至らしめるほどの猛毒
■遺伝子編集技術を使ったスクリーニング法で、毒が作用するシグナル伝達系を解明
■そのシグナル伝達系に作用する薬剤が、解毒剤として使えることを発見

ゲノム編集技術が八面六臂の大活躍だ。

一匹で60人を殺せる「最強の毒」と名高いオーストラリアの殺人クラゲの解毒剤が、最新のゲノム編集技術を用いて発見された。

発見したのはシドニー大学の研究グループで、研究は「Nature Communications」で発表されている。

Molecular dissection of box jellyfish venom cytotoxicity highlights an effective venom antidote
https://www.nature.com/articles/s41467-019-09681-1

オーストラリアやフィリピン沖に生息するハコクラゲの仲間は非常に危険な毒を持っている。今回研究対象となったオーストラリアウンバチクラゲは、育つと体長3メートルにも達する大型のクラゲだ。

60本の触手それぞれに、毒を持った小さな刺胞が何百万も備わっているというのだからとんでもない。

ヒトが刺されると、強烈な痛みが起こり刺された場所が壊死してしまう。そして致死量に達すれば、心機能が停止して死に至るという恐ろしい毒なのだ。

作用機序の探索から解毒剤を発見

Credit:The University of Sydney

研究者は毒の作用を研究するため、ゲノム編集技術CRISPRを使って関連するシグナル伝達系を探った。CRISPRで全ゲノムを対象とした遺伝子の不活化を行って、対象となる遺伝子をスクリーニングしたのだ。

具体的には、まず、ヒトの培養細胞を大量に増やして、一つの細胞につき一つの遺伝子が不活化されるようにした。そしてそこにクラゲの毒を与えて、生き延びる細胞を探した。

通常クラゲの毒が作用すれば細胞は死ぬので、生き延びた細胞で欠損している遺伝子は、毒が作用するシグナル伝達系を構成する遺伝子であることがわかるというわけだ。

その結果、コレステロールを材料としたシグナルを伝達する経路が、毒の作用と関わっていることがわかった。幸運なことに、このシグナル伝達系に作用する薬剤はすでに存在し、その安全性も確認済みだった。

実際ヒトの培養細胞や、マウスによる実験でも解毒作用が確認されている。

実際の臨床試験はなされていないが、ヒトにおいても皮膚の壊死や傷、痛みを防ぐことは確実だろう。ただ心停止を防ぐことができるかは明らかになっておらず、今後の研究が必要だ。

マウスへの実験では静脈注射を行ったが、実際の解毒剤としては、スプレーやクリームの形で開発することが考えられているという。

 

毒が作用を及ぼす分子機構に注目して解毒剤が発見されたのは、これが初めてだろう。また毒の作用の分子機構がわかったことで、他の毒物についても研究が進むことが考えられる。

排泄時にだけ「肛門」が現れる謎の生物が発見される

reference: The University of Sydney / written by SENPAI

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