人類の広がりにおける最後の謎がゲノム調査によって明らかに

history_archeology 2019/05/27
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Point
■南アメリカへの人類の移動は一度きりのシンプルなものだと考えられていた
■ゲノムの解析から、先に南アメリカへ移った先住民の他にも、明らかに異なるグループが移動していたことが示される
■アンデスの高地に適応した人々は、チベットの高地に適応した人々とは異なる方法で低酸素に適応進化している

DNA調査によって、人類が世界中に広まった時期が次々に分かってきているが、まだ残された謎の地域があった。

それが南アメリカだ。この地域は人類が最後に到達した領域であるが、DNAに刻まれたゲノムの解析は遅れていた。

今回、3つの研究で、古代の遺骨や現代のアメリカ先住民の子孫のゲノムデータが集められ、南アメリカへと人類が広まり、アンデスの高地に適応していった様子が浮き彫りにされている。アメリカ先住民族は南アメリカへと単純に一度きりの移動を行ったわけではなかったようなのだ。そして独自の方法で高地に適応している。論文は、「Cell」、「Science」、「Science Advance」で発表された。

Reconstructing the Deep Population History of Central and South America
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(18)31380-1
Early human dispersals within the Americas
https://science.sciencemag.org/content/362/6419/eaav2621
The genetic prehistory of the Andean highlands 7000 years BP though European contact
https://advances.sciencemag.org/content/4/11/eaau4921

南アメリカへ何度も移動していた

6万年前、人類はアフリカから飛び出し、世界中へと広がっていった。「Cell」と「Science」の2つの研究で共通して示しているのは、先住民がアメリカに広がった年代だ。25,000年前、アメリカの先住民はシベリアに住む部族と別れている。当時は氷河期であったので、シベリアからアラスカへは地続きで移動できたのだ。太平洋岸北西部にたどり着いたのが17,000年前から14,000年前の間だ。

アメリカに渡ったグループはカナダを経て、2つのアメリカ先住民へと別れている。一つのグループは東へと移動し、オンタリオの南に住むようになった。もう一つのグループは14,000年前に急速に南下し、現在の中南米の先住民となったのだ。

「Cell」に発表された研究から、この南アメリカへと移住したグループとは別のグループが2組あったことが分かっている。一つのグループは、カリフォルニアのチャンネル諸島に起源をもつアンデスの人々だ。もう一つのグループは9,000年前にはチリやブラジルにいたグループで、Anzick-1と呼ばれる12,800年前にモンタナにいた少年に結びついている。

「Science」で発表された研究でも、14,000年前の南アメリカへの移動が確認されている。そして、8,700年前にメキシコ、中央アメリカから、南アメリカと北アメリカの双方向に広がったグループが示されている。

アンデスの高地に適応した人々

「Science Advance」で発表された研究は、他の2つとは違うアプローチをしている。アンデス山脈に住むようになった民族に注目したのだ。アンデス山脈は標高が高く、気温が低い上に酸素が薄いため、とても生存に適した場所ではない。呼吸で酸素を取り込むことが難しくなるのだ。しかし、そこに適応して暮らしている人達がいる。

どのように人々が移り住み、適応するようになったのかを調べるため、ゲノム情報が解析された。調べられたのは、1,600年前から6,100年前までにペルーの高地で生きていた人達7人の全ゲノムと、現在ボリビア高地に住むアイマラの人たち、チリの港湾に住む人達の全ゲノムである。

これらのゲノム情報を比較した結果、低地に住む人達と高地に住む人達が、8,750年前から前後数世紀の間に別れたことがわかった。さらに面白いことに、高地に住む人達は低酸素に適応するために、心機能を強化するような遺伝子が多くなるように進化したことがわかっている。

これは、別の高地に適応したチベットの人たちと比べると面白い。チベットの人たちは、血液が酸素を多く取り込めるような方向に進化しているのだ。同じ環境に適応するために、違った方法で進化ているというのは面白い発見である。

昔の人類が辿った痕跡をゲノム情報でトレースできるというのは、面白いことである。人類が生きて生活してきた記憶が、知らない間に情報として刻み込まれているのだ。もちろんそこに問題提起をして、読み解く研究者がいなければ、何の意味もなさないデータにしかならないのであるのだが。

最古の菌類の化石が発見 10億年前は思ったより「現代的」かも…

referenced: National Geographic / written by SENPAI

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