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銀河に「暗黒物質が空けた穴」を発見!? ついにヤツの正体が…

2021.10.07 Thursday

2019.05.17 Friday

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Credit:depositphotos

Point

■銀河には恒星ストリームと呼ばれる光の筋が走っているが、その中に巨大な重力で引き裂かれたような痕跡が発見された

■推定される重力量は、恒星では存在し得ない強さであり、ブラックホールならば銀河中心の超大質量級のものになるが、いずれも可能性としては低そうだ

■この報告は、世界で始めて暗黒物質の痕跡を発見した可能性があると、多くの科学者が興味を寄せている

4月に米国デンバーで開催されたアメリカ物理学会において、非常に興味深いプレゼンが発表された。

我々の銀河の中に、巨大な重力の衝突で生まれたと思われる穴が見つかったというのだ。

しかも恒星の並びを変えるほどの影響があったにも関わらず、周囲にはその惨事を引き起こしたと考えられる巨大重力の天体は全く見当たらないのだ。

恒星としてはありえない重力で、ブラックホールの存在も観測できない。そうなると残された可能性は、巨大な重力を持ちながら我々に観測することの出来ない”何か”だ。

そういう物質のことを、我々は「暗黒物質」と呼んでいる。この報告を行ったアナ・ボナカ氏は、これが暗黒物質の影響である可能性を示唆している

もしこれが本当に暗黒物質の痕跡なら、それは世紀の大発見だ。

この報告は現在のところ学会発表されたのみで、査読付き学術誌への掲載などは行われていない。詳しい検証の結果、重力量の計算違いや、観測の見落としを指摘される可能性は否定できない。

しかし、この報告は権威あるアメリカ物理学会において4月15日付けで発表され、多くの研究者たちが強い関心を寄せている

New Astrophysical Probes of Dark Matter
https://absuploads.aps.org/presentation.cfm?pid=15143

ボナカ氏は一体何を見つけたのか?

ボナカ氏が今回発見したのは、GD-1と呼ばれる恒星ストリームに空いた不可解な穴だ。

「ちょっと待って、恒星ストリームってなに?」

という人は多いかもしれない。確かに一般にあまり馴染みのある天体ではない。

恒星ストリームとは別の小さな銀河や、球状星団(銀河の周りに浮かぶ球状に恒星の集まった天体)が、大きな銀河に引き込まれた際、銀河の重力で引き伸ばされてできる光のループのことだ。

Sig07-008
Sig07-008 / 恒星ストリームのイメージ図
我々の住む天の川銀河では、現在10本を超える恒星ストリームが発見されている。上の図のように、我々の銀河を外から眺めると恒星ストリームの輝くループが幾筋も見えるはずだ。

恒星ストリームは銀河へ引き込まれ伸ばされた場合、一本の線になる。これは銀河重力の影響で2つの方向へ引き伸ばされるためだ。

通常この引っ張りの起点部分には星の無い隙間ができる。だが今回報告されている恒星ストリームにはこうした起点の隙間以外に、2つ目の隙間が存在しているのだ。

恒星ストリーム上に2つ隙間が生まれる理由はうまく説明がつかない

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恒星ストリームの通常想定される形状(下)と観測された形状(上)

しかも、この2つ目の隙間のそばには、刷毛で掃いたように星の並びが乱れている箇所がある。ボナカ氏はこれをスパー(拍車)と呼んでいる。

これは明らかに何か巨大な重力を伴った天体が、恒星ストリームを貫いて通り抜けた痕だ。

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GDー1恒星ストリームに見られる2つの隙間とスパーCredit:APS

この影響範囲から計算した場合、原因の重力は一般的に恒星が維持できる質量ではないと考えられる。また、もしこれが発光する天体だった場合、そのサイズは10から20パーセク(30から65光年)の直径になると考えられる。

重力の発生源はブラックホールも候補に上がる。しかし、必要な重力量から計算されるサイズは、銀河中心に存在する超大質量ブラックホールと同等のレベルになってしまう。

いずれにしても、恒星ストリームに穴を開けた容疑者として支持するのは困難だ。

次ページ姿を見せない謎の存在 暗黒物質(ダーク・マター)とは?

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