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スマホと紙だけで子どもの中耳炎を診断できるアプリが開発される

2021.01.27 Wednesday

2019.05.22 Wednesday

Credit: Dennis Wise/University of Washington

Point

■鼓膜の奥の液体を探知することができるスマートフォンアプリが開発された

■紙製のじょうごを通してさえずり音を流し、その反響の仕方から、鼓膜内の液体の有無を判定

■中耳炎などの耳の感染症を家庭で早期に診断することで、痛みを伝えることが難しい子どもへのすばやい治療が可能に

親たちがよく子どもを病院へ連れて行く理由の一つが、耳の感染症だ。それは、鼓膜の奥の中耳内部に液体が溜まり、感染することで起きる病気で、中耳炎に発展するケースもある。痛みを伴うだけでなく、音が聞こえにくくなるため、言葉を学んでいる真っ只中の子どもに特に悪影響が生じる。

こうした症状は、周囲が気づきにくく、小さな子どもにとってどこがどう痛いかを説明することは困難だ。

そこで、ワシントン大学の研究チームが開発したのが、鼓膜の奥の液体を探知することができるスマートフォンアプリだ。必要なのは、スマートフォンのマイクとスピーカーと、1枚の紙だけだそう。

論文は、雑誌「Science Translational Medicine」に掲載されている。

Detecting middle ear fluid using smartphones
https://stm.sciencemag.org/content/11/492/eaav1102

紙のじょうごを組み立ててさえずり音を流すだけで…

その仕組みは、スマートフォンが出す一連の微かなさえずり音を、紙で作った小さなじょうごを通して耳へ流し、さえずり音が鼓膜に弾かれてスマートフォンへ返ってくる仕方に応じて、内部の液体の存在を判定するというものだ。

紙にはじょうごを作るためのガイド線が引かれていて、線に沿って切ったり折ったりするだけでOK。完成したじょうごをスマートフォンに取り付け、外耳に充て、アプリのボタンを押すと、0.15秒間ほどの音が連続して流れる。じょうごを通って音波は鼓膜に跳ね返され、再びじょうごを通ってスマートフォンに戻ってくる。この音波と、もとの音波をマイクが拾う。

Credit: Dennis Wise/University of Washington

この時、鼓膜の奥に液体があるかどうかによって、跳ね返って来る音波がもとの音波を異なるやり方で干渉するのだ。水を入れたコップを叩いた時に、水の量に応じて違う音が鳴るのと同じだ。

中に液体がなければ、鼓膜が震え、さまざまな音波を跳ね返す。これらの音波が、元のさえずり音を優しく邪魔することで、全体の音を広く浅く降下する。

これに対して、鼓膜の奥に液体があると、鼓膜が上手く震えないため、元の音波が弾かれて戻ってくるのだ。その音波は元のさえずり音をより強く邪魔するため、シグナルが狭く深く降下する。

次ページ判定精度は85パーセント 早期診断ですばやい治療が可能に

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