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ウィルスの新たな恐怖! 細胞間で謎のテレパシー?

2021.10.07 Thursday

2019.05.24 Friday

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Credit:depositphotos

Point
■ウィルスの中には遺伝情報を分割してバラバラに運ぶタイプが存在している

■ウィルスにとって体内は宇宙のように広大なため、遺伝情報をバラして運ぶ事は不利であり、これは生物学上の謎とされている

■今回、そんなウィルスが断片を全て揃えていないのに、細胞内で増殖していることが確認された、彼らは細胞をグループ単位で支配している可能性があるのだ

これはコンピュータウィルスではなく生物ウィルスの話だが、ウィルスの中には遺伝情報を分割ファイルにして運ぶタイプがいる。

インターネットなら回線速度の問題があるのでわからないでもないが、しかし、生物ウィルスは低速回線を使っているわけではない。わざわざ情報を分割することは彼らにとって不利にしかなりそうにない。

分割ファイルがすべて揃わなければ開けないように、分割した遺伝情報も揃わなければ機能しないと考えられるからだ。

ウィルスにとって体内は宇宙のように広い。シミュレーションによると3つ以上に断片化した遺伝情報が1つの細胞に偶然揃う可能性はほぼ無いと言う。

理論上では、4つ以上に遺伝情報を分割されたウィルスは存在できない

ところが世の中には、遺伝情報を複数に分割したタイプのウィルスが全体の40%近く存在している。中には8つ以上に遺伝情報を分割したタイプもいる。一体なぜこんなウィルスが存在できるのだろうか?

今回、そうした謎について、なんと断片化された遺伝情報が全て揃っていなくても、ウィルスが細胞内で正常に増殖しているという研究が発表された。

この研究報告は、フランスの研究者たちにより発表され、学術誌eLifeに掲載されている。

A multicellular way of life for a multipartite virus
https://elifesciences.org/articles/43599

なぜウィルスはDNAを分割するのか

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Credit:pixabay

私たちのよく知る、というよりよく苦しめられるインフルエンザウィルスは遺伝情報を8つの断片に分けて保有している。

彼らは非常に変異の速度が早いことで知られているが、それはこの8つに別れた遺伝情報を、細胞内でミキシングして新しい変異体を生み出しているためだ。

遺伝情報は、時間が経つごとに一部が微妙に変異する、その程度ならば通常大した影響はない。しかし、互いに異なる形で微妙に変異した遺伝情報を複数のウィルスが持ち寄って、それをシャッフルされてしまうと、抗体はたちまち対応できなくなってしまう。

これが定期的に発生するインフルエンザ大流行の原因だ。

つまり、遺伝情報を分割することにはウィルスには利益のある事なのだ。

ただ、インフルエンザウィルスはこの8つの断片を大抵一部しか持っていない。8つ全てを保有しているインフルエンザウィルスは全体の約10%程度だ。

これは非常に奇妙なことだ。彼らはこのままだと大増殖することが難しいからだ。しかし、インフルエンザウィルスは非常に猛威を奮っている成功者の一人だ。

今回研究の対象にされているのは、そら豆などに寄生するFBNSVというウィルスだ。彼らもまた、インフルエンザウィルス同様、遺伝情報を8つに断片化し、個別にパッケージして8種のウィルス粒子となって植物に寄生する

1つの細胞に取り付いて増殖するというのは、ウィルスにとっては惑星移民に匹敵する大移動だ。

建築技術や医療技術、はたまた男と女などが全部バラバラの移民船に乗って宇宙へ旅立つとしたらどうだろう? どう考えても、偶然全ての船が1つの惑星へたどり着くとは考えにくい。

こうした遺伝情報の断片を個別にパッケージすることは、遺伝情報の欠損というリスクしかないように思われる。

ではなぜこのようなウィルスが繁殖できるのか? この問題は、生物学者の間でもずっと謎とされていた。

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