快挙! -23℃で超伝導を確認 常温まであと一歩

animals_plants 2019/05/24

Meissner effect p1390048

Point
■これまで超伝導に至る温度の最高記録は-58℃だったが、一気に記録更新して-23℃での実現が報告された

■超伝導は電気抵抗が0になり、磁界が完全に弾かれるという不思議な現象、これが常温で実現されれば超高速通信や電力の保存など夢の技術が実現可能になる

■ただ、今回の報告は170GPa(ギガパスカル)というとてつもない高圧状況下のため、今後は常圧での実現を目指すことが課題となる

常温(摂氏0度)超伝導という現象については、たびたび耳にすることがあると思う。

超伝導は導体(電気を流す物質)の電気抵抗が0になるという現象で、通常、絶対零度(-273℃)という極低温でしか確認できない。

今回のニュースを聞いて-23℃の何が高温なの? と思った人もいるかも知れないが-273℃付近が当たり前と聞けば、それがいかにすごいことか理解できるだろう。

これは半年前にも報告されていたものだが、その段階では信憑性を疑う声も存在した。それが今回、査読・検証を通過し、正式な成果として科学の場で認められたのだ。

ただ残念ながら、この研究の超伝導では、高温と引き換えに超高圧の環境が必要となってしまっている。コスト的な面を考えればプラマイ0と言えるだろう。しかし、限りなく常温に近い温度でも超伝導を可能とする材料を確認したというのは、かなり素晴らしい快挙だ。

この研究報告は、シカゴ大学の研究者たちにより発表され、正式な科学的報告としてNatureに掲載されている。

Superconductivity at 250 K in lanthanum hydride under high pressures
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1201-8

超伝導とはそもそもなんなのか?

Photo credit: Argonne National Laboratory on Foter.com / CC BY-NC-SA

導体の電気抵抗が0になるすごさは、普通に生活しているとさほど感じないかもしれない。

しかし電気抵抗によるロスというのは非常に大きく、現在は発電した電気の数10%近くは、電気抵抗によって失われているのだ。

携帯電話の中に金が使われているという話を聞いたことがあるだろうが、なんでわざわざ高価な金を使うかと言うと、その電気抵抗が極めて小さいからだ。

電気抵抗を減らすためなら金でも使う。世の技術者たちはそれくらい電気抵抗というものに苦しんでいるのだ。

また、電気というものは使いやすい反面、そのままの形で保存することができない。バッテリーなどは化学反応を利用して擬似的に電気を貯蓄しているもので、発電所レベルの電力を保存する方法は現状世界に存在しない。

必要なら常にその都度作らなければならないのだ。だが、電気抵抗0の回路が作れたら、そこに電気を還流させて置くだけで電気の保存が可能になる。

他にも超伝導は磁界を弾くという特殊な性質を持っている。これは磁石の上に安定して浮き続けることができる状態を意味しており、リニアモーターカーなど、近未来の乗り物に応用できる可能性を秘めているのだ。

なんで低温でしかできなかったのか?

導体の電気抵抗は温度が高くなると比例して上がり、温度が低くなるとやはり比例して下がる性質がある。

では、温度とはそもそもなんなのか? それは分子、原子の持つ運動エネルギーだ。温度が高いというのは、物質の持つ運動エネルギーが高いという事を意味する。

空気中の分子が高い運動エネルギーを持っていると、彼らは激しく動き回ってバシバシぶつかってくる。バシバシぶつかられたら当然うざい。これが暑いという状態だ。

Credit:mayekawa

物質の温度が高い場合は、構成する分子が激しく振動している状態となる。電気は物質内を流れる電子の運動なので、当然激しく分子が振動していれば邪魔なわけだ。そのため抵抗が上がるのだ。

絶対零度と言われる、物理学上もっとも低い温度がなぜ摂氏-273度なのかというと、その温度で、この世のすべての物質が動きを止めるからだ。量子のゆらぎを除き、この世の全てが静止した世界、そんな冷たい静寂が絶対零度なのだ。

なので温度が低くなると、当然電子を邪魔するものが減り、電気抵抗も少なくなる。

ただ、これは低温で電気抵抗が減少する原理で、超伝導の原理とは異なる。超伝導はこうした通常の物理の現象とは異なり、量子力学の現象になる。

温度が下がると、電子の持つエネルギーも当然少なくなる。もっともエネルギーの少ない状態の電子を基底状態という。

素粒子にはいわゆる同担拒否のオタク女子のような性質のフェルミ粒子と、「仲間がいるのもいいよね」というリア充みたいな性質のボーズ粒子があるのだが、電子はフェルミ粒子だ。

電子は最低エネルギー状態になると、そこに他の仲間が入ってくることを激しく嫌う。しかし、ある電子は仲間を見つけて対になるとリア充のボーズ粒子のように振る舞う。

こうなると電子のペアは基底状態の電子たちから弾かれて激しく動き回ることになる。一方ATフィールドの強すぎるオタク女子のような最低エネルギー状態の電子たちは、強固に固まって磁界さえ弾くようになってしまう。

こんな状態が、超伝導といえなくもない。

低いエネルギー状態を作るには温度を下げるのが早いので、低温でのみ超伝導は観測されることになるのだ。

高圧だと常温で超伝導を起こしやすいのは?

サラッと説明したが、実は、超伝導の原理には諸説あり、まだ一致した見解は無い。

しかし、上で怪しく説明したBCS理論というものに基づいて考察すると、超伝導は軽い元素の結晶ほど高い温度で起きやすいと考えられている。

最も軽い元素は水素だ。しかし、軽いせいで常温では気体になってしまう。そこで、水素ガスを高圧で固めて結晶化できれば、高温でも超伝導できるだろう、というのが物理学者たちの予想だ。

今回の材料はそんな予想に従って発見されたものだ。

ただ、私たちが暮らす世界の標準気圧は101325パスカル、だいたい1メガパスカルだ。今回の実験は170ギガパスカルということなので、かなり差が大きい。

研究者たちは、次は常圧でこれを実現させることを目指すと話している。

このパスカルについている、「メガ」とか「ギガ」は、私たちが普段使うデータ容量の場合とほぼ意味は同じだ。昨日まで170Gバイトのスマホを使っていたのに、明日から1Mバイトのスマホを使えと言われたら、誰でも「無理!」と思うだろう。

常温常圧で超伝導を起こすのは、それくらい、まだまだ難しい問題なのだ。

確実に前進し続けている常温超伝導に向けた研究だが、先は長そうだ。頑張れ〜!

本物か? 世界を一変させる「室温超伝導」の発見が報告されるも、疑惑の渦へ…

reference:phys,physicsworld,jstage/written by KAIN

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