2次元でも生命は存在できる! 物理学者が新説を発表

space 2019/06/28
2次元生命
©KONAMI
Point

■私たちの宇宙は3次元(空間)+1次元(時間)で構成されているが、たとえば2次元+1次元でも生命は存在可能なのだろうか?

■基本的な議論では、2次元という制約下では神経ネットワークなど複雑な3次元のシステムを再現できないため不可能とされている

■そんな物理学の常識に対して、生命に必要な複雑な構造が2次元上でも構成可能だとする論文が発表された

え? 物理学者ってまだその段階なの? 俺(私)の彼女(彼氏)は10年前から2次元生命ですけど?

そんな未来に生きる人たちにとっては常識でいまさらな議論が、論文発表され、『MIT Technology Review』に掲載された。

いやいや、これは一部の人には自明のことであっても、物理の議論としては非常に難しい問題だ。

3次元上に築かれた物理システムは、2次元上に全て構成可能なわけではない。例えば生命にとって重要な構造である神経ネットワークは、2次元では再現できない。これは回路の交差などレイヤー構造を2次元では作れないためだ。

ネットワーク

今回発表された論文は、そうしたネットワーク構成の複雑さを2次元で表現する方法について、詳しく議論しているものだ。

この論文はカリフォルニア大学の物理学者により発表され、現在は未査読でコーネル大学arXiv(アーカイブ)にて公開されている。

Can Life Exist in 2 + 1 Dimensions?
https://arxiv.org/abs/1906.05336

次元ってなんなんだ?

物理や数学の話題が好きな人たちは、たびたび登場する次元という単語に辟易とした思いを抱いているかもしれない。

最新の物理の話題には必ずと言っていいほど登場する超弦理論では、宇宙は10次元だ、と主張しており、もはや何が何だか意味がわからない。

けれど、我々がこうした話題の意味を理解しようとするときに、次元の問題をそんなに難しく考える必要はない。大抵の場合、次元というのは、計算するために必要なパラメータがいくつ必要かと言うだけの問題に過ぎないからだ。

例えば誰かと待ち合わせをするとき、どんな取り決めをするだろうか?

©2019 Google

まずは場所だ。これは地図上のXYという2次元座標を決めているわけで、2次元の情報だ。もしそれが建物の場合には、何階にいるという情報も付随する。これで高さZを含めた3次元の情報になる。

ただこれだけでは待ち合わせの取り決めには不十分だ。普通はさらに時間を決める必要がある。何日の何時、ここまで決めると時間Tを含めた4次元の情報になる。

人と待ち合わせるために4つのパラメータが必要ということは、私たちの住むこの世界が4次元構造であることを表している。

よく空間は3次元だけど、時間を含めると4次元になるというのはこのためだ。ただ、通常時間軸は空間軸の様に自由に操作可能な軸ではないため、我々の宇宙を表現するとき4次元空間という呼び方は避けられる。

だいたいが3次元+1次元の時空という言い方をしている。

まどろっこしい言い方に聞こえるが、では動画の場合は何次元かと言うことを考えてみよう。

Credit:YouTube Japan 公式チャンネル

2次元の画像に対して+1次元のシークバーがついているので、この動画は2次元+1次元ということになる。一般的には平面は2次元、立体は3次元という言い方をされるが、時間のような空間からは独立したパラメータが付属することで、2次元平面の動画も理論上は3次元構造になったりするのだ。

なので、一般的に2次元と言った場合は可愛いおn…平面のことを指しているが、数学や物理で考えた場合、単に座標の指定や現象の記述に2つしかパラメータが使えない、という理解の仕方で問題ないだろう。

なんでわざわざ2次元を考えるのか?

それにしても、物理ではたびたび異なる次元の話が登場するが、そもそも2次元宇宙とか考える必要があるのだろうか?

そうした疑問に答えるのが、最近よく話題に上るホログラフィー原理だ。

1万円札のホログラム / Credit: 国立印刷局

ホログラフィーとは、お札やクレジットカードに印刷してあるモヤッと浮き出るシールのことだが、別にこれは「Nintendo 3DS」の画面と言っても意味は同じだ。2D画面上のものが3Dに飛び出して見えるのは、2D上に3D情報が保存、表示可能だからだ。

こうしたホログラムとか、3DSみたいに、現実世界も実は3次元に見えているだけで、本当は2次元に張り付いた情報を見ているだけなのではないか? というのがホログラフィー原理の考え方だ。

真面目に考えると、なんだか馬鹿馬鹿しい理屈に聞こえてしまうが、この理論が言いたいことは、3次元空間の情報が全て2次元空間とデータ連携可能ということだ。

Credit: gungho

ソシャゲはデータ連携しておくと、別の環境でゲームを起動しても、同じデータを使って遊ぶことができる。2次元と3次元の間でも大事な情報を連携して保持しておくことができるため、現象を説明するために利用可能だというのだ。

なんでこんな珍妙な考え方を物理学者たちがするのかというと、次元を減らした方が考えるのが楽になる場合があるからだ。

現在物理学における大問題が、「重力が何なのかはっきりしていない」ことだ。マクロな世界で重力の影響を記述している一般相対性理論と、ミクロな世界を記述する量子論はまとめて語ることができない。

ホログラフィー原理は、以前ナゾロジーでも紹介したホーキング放射や、超弦理論などの複雑な理論によって導き出されたものだ。しかしこの原理を用いて3次元空間の情報を2次元空間へ移動させれば、量子論について重力を考慮せずに考えることが可能になる。

というより、一般相対性理論は2次元では機能しないため、重力の影響を考えずに量子論の話ができるようになるのだ。

これは重力の問題を量子論と絡めて考える場合に、非常に有効な手段になる。

なるほど、わからん! となってしまうが、こうした記事で難しい科学の話をするときも、余計な情報を取り払って次元を落とすことで、いくらかわかりやすく伝えられるようになる。

物理学が次元を減らしたりして物を考えるのは、複雑なものをどれだけ単純化できるか考えた末と思っておけばいいだろう。

次元を落として考える

Credit:Pixabay

ホログラフィー原理では、重力が2次元には存在しないとしているが、今回の論文を発表したJames Scargill氏は、純粋なスカラーの重力場ならありうる、と理論を展開している。彼の理論によれば、2次元空間でも太陽系のような星系を作ることも可能なのだという。

色々検証が進んでいるホログラフィー原理に対抗する理屈がどこまで信憑性があるのかは、疑問だが今回の論文の一番の核になっているのは、神経回路のような3次元構造の複雑なネットワークを2次元でも再現可能という部分だ。

交差が利用できない2次元で複雑なネットワークの回路を作ることは非常に難しい問題だ。しかし、彼はこれをいくつかの理論を組み合わせて再現できると考えている。

今回論文は、2次元に生命が生存可能かという難解な問題に挑んでいるが、実際のところこれはキャッチーなタイトルのための例えだと思われる。重要なのは、3Dの驚くほど複雑な構造を2Dの構造がサポート可能であることを示唆していることだろう。

こうした問題を考えることは複雑な生物の行動を解明するためにも意義のある研究と言える。

物理の話題はまさに次元の違う、難しい話が多いが、次元を落として考えるというのは、複雑な問題を考えるときにとても重要な方法になる。

彼女(彼氏)ができない! という問題も次元を落とすと解決できるのも、きっと同じ理由なんだろう。

いや、違うか…。

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