メタンと二酸化炭素を置き換える一石二鳥なメタンハイドレートの採掘方法が見つかる!

technology 2019/06/28
Credit: 産総研

Point
■海底に沈む天然資源メタンハイドレートの利用については、世界中で研究が進められているが、現在のところ実用化に漕ぎ着けている方法はない

■二酸化炭素とメタンを置換して天然ガスを取り出しつつ、温室効果ガスを海底深くに封印してしまおうという一石二鳥な方法が研究されているが、シミュレーション結果は思わしくなかった

■今回の発表では、このガスの置換を窒素を絡めて二段階の工程で行うことで上手くいくことを示している

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日本近海は世界有数のメタンハイドレート埋蔵地帯といわれている。これが上手く取り出せれば、天然資源に乏しい日本が一躍資源国となれる可能性があるのだ。

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そんなわけで、何かとよく話題に上るメタンハイドレートだが、現在のところ、その上手く取り出す方法というものは確立されていない。

これは海外も同様で、メタンハイドレートの利用は世界中で今ホットな研究テーマになっている。

一方、天然ガスなどの利用は地球温暖化を推し進める要因になっており、世界中で問題視されている。

天然資源を手に入れつつ、地球温暖化も解決するような上手い方法はないだろうか?

そんな2つの問題を一挙に解決してしまう欲張りな研究が存在する。

それが、海底のガスハイドレートのメタンと二酸化炭素を置換して、天然ガスを取り出すと同時に、温室効果ガスの二酸化炭素を海底深くに封印してしまおうというものだ。

今回の研究はテキサス大学オースティン校の研究者により発表され、アメリカ地球物理学連合の学術雑誌 『Water Resources Research』に掲載されている。

Nitrogen‐Driven Chromatographic Separation During Gas Injection into Hydrate‐Bearing Sediments
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1029/2018WR023414

氷のガス? メタンハイドレートとは?

メタンハイドレートという用語自体は、多くの人が聞き慣れていると思われる。

しかし、メタンハイドレートとはそもそも何なのだろうか?

日本ではメタンハイドレートだけが有名だが、専門家の間ではガスハイドレートという呼び方が一般的である。

共通するのは「ハイドレート」という単語だ。

ハイドレートというのは、水分子が籠の様になって、中にガスの分子(ゲスト分子と呼ばれる)が捕らわれている状態のものを指している。

赤い水分子の籠の中に、緑のゲスト分子が捕らわれている。©MH21 Research Consortium

これはメタンなどが水分子と化学的に結びついているわけではなく、水分子に囲まれて捕らわれているだけの状態なのが特徴だ。メタンハイドレートは常圧に戻すと体積の170倍近い天然ガスを取り出すことができる

この水分子の籠は、氷とは構造が異なっているため、個体になっているが氷なわけではない。

こうした特殊な状態は、低温高圧の状態で自然と形成される。例えば常圧の場合にハイドレートを作ろうとすると、マイナス80℃以下の低温にしなければならない。しかしこれが50気圧の高圧になると、6℃の温度でも形成できるようになるのだ。

50気圧というのは、だいたい水深500メートル以下の環境だ。陸地でも深い地層の中なら高い圧力を得られるが、地面の深い場所では高温の地熱が問題になる。深海は水温が低く海底では4℃ほどまで低くなる。

そんなわけでメタンハイドレートは、海底という環境でのみ見つかる天然資源なのだ。

メタンハイドレートはどうやって取り出すのか?

Credit: NOAA

基本的にメタンハイドレートは天然ガスと水でできており、両者は化学的に結びついているわけではないため、ハイドレートの構造を崩してしまえば簡単に天然ガスを取り出すことが可能だ。

一般的な方法では、熱湯を流し込んで温度を上げるか、水を抜いて圧力を下げることで実現できる。

ただし海底深くにあることが問題で、どちらも実行が難しい。

また、ハイドレートの安定を崩す物質(インヒビター)を使う方法があるが、これはコストが掛かるため、経済的ではないと言われている。

そしてメタンハイドレートの氷床を完全に崩してしまうと、海底の地盤が崩れて大惨事になる可能性もある。この辺りも難しい問題の1つだ。

メタンと二酸化炭素の置換

そんな中で注目される方法が、メタンと二酸化炭素を入れ替えるという方法だ。もともとガスハイドレートは何かしらのゲスト分子が水分子に捕らわれて成立しているため、人類にとって不要なガスと天然ガスを入れ替えれば一石二鳥だろうというのである。

この方法なら、メタンハイドレートの氷床を破壊することも無いため、地盤を不安定にしてしまう問題にも対処可能なので、温暖化問題と共に実際は一石三鳥と言ってもいいかもしれない。

良いことだらけの様にも思われるが、現在のところこの方法はシミュレーションではあまりうまく行っていない。

原因は、高圧の状態のままではガスの置換が上手く進まず効率が悪いという点、そして連続してこの反応を繰り返すことが難しい点にある。メタンと二酸化炭素の置換は最初は順調に進むが、ある程度置換が進むと徐々に効率が落ちていってしまうのだ。

この問題に対して、新しい方法を提案しているのが今回の研究だ。

これまでの方法は、一挙にメタンと二酸化炭素の置換を実行しようとしていたが、新しい方法では窒素を添加して一旦ハイドレートの結合を解いて天然ガスを取り出してから、二酸化炭素を注入して再びガスハイドレートに戻すという二段階の工程で行われている。

この方法ならシミュレーション結果はかなり良好で、二酸化炭素濃度を増加させていけば、連続してこのプロセスを繰り返すことができるという。

これにより、天然ガスの開発と、二酸化炭素の封印が実現できるのだ。

Credit:pixabay

世の中を見渡すと、一方を立たせると片方が成り立たずという問題ばかりなので、なんだかこの方法は全てが上手く行き過ぎていて疑いたくなってしまうが、現在のところ研究者たちは非常にこの技術に期待を寄せているようだ。

日本人としては、ぜひとも早くメタンハイドレートの利用を実現して欲しいところだ。

思わぬ落とし穴が無いことを祈りつつ、研究の行く末を見守ろう。

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reference:phys,MH21,J-Stage/ written by KAIN

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