宇宙の謎の一つ「高速電波バースト」の発生場所をついに特定!

space 2019/07/01
高速電波バースト
Credit: CSIRO/Dr Andrew Howells

Point

■2007年に発見された高速電波バーストは、一瞬の間に強力な電波が発せられる謎の天体現象だ

■2016年には繰り返し高速電波バーストを放つ天体が発見され、発生位置などの特定が行われたが、単発のバーストについては依然発生位置の特定が困難となっていた

■今回の研究では、単発の高速電波バーストの発生源を特定することに成功した

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宇宙には未だに原因が特定されていない、謎の現象が存在している。

その1つが高速電波バースト(FRB:fast radio burst)だ。ちなみに英語ではFRBと略しているが、連邦準備制度理事会のことではない。

これは、1000分の1秒単位の短時間で、太陽が1万年間に放出するのと同等のエネルギーが放たれる天体現象だ。

あまりに発生時間が短いため、その多くは謎に包まれている。

2017年にはバーストを繰り返す天体が発見され、発生源の特定に成功したのだが、一回限りの単発FRBについては依然発生源が特定できていなかった。

そこで今回、最新鋭の電波望遠鏡群ASKAPを用いることで、単発FRBについても発生源の特定に成功したという観測報告が発表された。

ただし喜びもつかの間。その発生源は従来のFRB発生原因の仮説では説明のつかない場所にあり、さらなる謎を生み出してしまったのだ。

この研究はオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究チームより発表され、6月27日付けでSienceに掲載されている。

A single fast radio burst localized to a massive galaxy at cosmological distance
https://science.sciencemag.org/content/early/2019/06/26/science.aaw5903

謎の天体現象! 高速電波バーストってなんなの?

高速電波バーストは2001年に最初の確認がされたと言われている。しかし、あまりに強いエネルギーが一瞬のうちに放出されているため、地球内から発生しているノイズを検出したのではないかと疑われ、天体の現象とは認められていなかった。

電波天文学は遠い天体から届く僅かな電磁波を観測して分析している。そのため、電子機器のノイズを勘違いして観測していたという問題も多く、長年観測を続けていた電磁波の正体が実は電子レンジによるものだったという例も実際に存在している。

しかし、高速電波バーストは2007年に正式な天体現象であることが確認された。

だが、この高速電波バーストはあまりに短時間に一回限り発生する現象のため、めったに受信することができなかった。

天文台では一度に全天を観測している様なイメージを抱いてしまうが、実際天体観測では空のごく小さな領域を集中的に観察している。高速電波バーストは存在が正式に認められた2007年から2016年までの間にたった10数件しか観測できなかったのだ。

そのため、発生源も発生メカニズムも全てが謎に包まれていた。

そんな中、2016年に繰り返し高速電波バーストを発生させる天体が発見される。これにより、高速電波バーストの発生源へ正確に望遠鏡を向けて観測することができるようになり、およそ30億光年離れた矮小銀河の中心近くから発生しているということが明らかにされた。

だが、単発で発生する高速電波バーストについては、相変わらず発生位置を特定することはできなかった

技術の飛躍的進歩! 電波望遠鏡群ASKAPの始動

Credit:CSIRO

この写真のように、広範囲にいくつも巨大なパラボラアンテナを並べた望遠鏡施設を見たことはあるだろうか。

電波望遠鏡は非常に狭い範囲のみを観測するため、高速電波バーストのような現象を見つけることは非常に困難だ。しかし、この様に沢山のアンテナを微妙に角度をずらして広範囲に並べることで、観測範囲を大きく広げることが可能になる

上の写真はオーストラリアに建設されたASKAPという電波望遠鏡だ。ここでは、直径6kmの範囲に12mもあるアンテナが36機配置されており、満月の1000倍という面積を一度に観測することが可能となっている。

この施設を使うことによって、高速電波バーストの観測数は飛躍的に増加した。

また、それぞれのアンテナの位置が離れているため、電波の受信タイミングが微妙にずれる。その時間差を利用して、電波の方向を特定することができるのだ。

Credit:ICRAR

電波発信源の距離については、電磁波の成分(周波数)ごとに速度が異なるという特性を利用する。発生源から地球までには何10億光年という距離があり、その間にはプラズマ化した星間物質やガスが存在している。

波長の長い電磁波はエネルギーが低いため、障害物の影響で減速していく。どれだけ距離があれば、どれほどの星間物質が存在するかを予測し、電磁波の成分ごとの受信タイミングのずれから距離測定を行うのだ。


Credit:ICRAR

このASKAPによって、単発の高速電波バーストの発生位置も分析することができるようになった。

これは例えるなら10メートル離れた場所から、人間の髪の毛の幅を測れるほどの精度になるという。

これにより確認された単発の高速電波バーストの発生源は、36億光年離れた天の川銀河と同等規模の銀河の外縁近くだという。

さらなる謎が発生!? FRB発生メカニズムの不思議

高速電波バーストについては、未だにその発生原因が謎に包まれている。

そのため、様々な仮説が唱えられ、中には宇宙人のラジオ放送だという説も登場した。

そんな状況は、この研究に携わる天文学者が「観測された高速電波バーストの数より、発生メカニズムに関する仮説の方が多いくらいですよ」と、冗談交じりに言うほどだ。

そんな中でもっとも有力な仮説は、中性子星の衝突を原因とするものだ。一瞬のうちに強力なエネルギーが放出されるため、それは非常に説得力のある説に思える。

しかし、その仮説はバーストを繰り返す謎の天体の発見により否定されてしまった。リピートするバースト現象は、位置の特定に貢献したが発生原因については逆に謎を深める結果となってしまったのだ。

代わりに登場したのは、巨大ブラックホールと、マグネターという強力に磁化した中性子星の相互作用という説だ。繰り返しバーストの発生源は、若い矮小銀河の中心、巨大ブラックホールの近くだったためだ。

Credit:ESO/L. Calçada

しかし今回の発見は、我々の銀河と同等の古い星を含む巨大な銀河の辺縁を発生源としており、またも仮説と矛盾してしまっている。

こうなると、高速電波バーストは複数の発生原因を持っており、繰り返し発生する場合と単発の場合では別々のメカニズムで起こっている可能性がかなり高い

また、高速電波バーストは我々の住む銀河内からの発生は確認できていない。これはつまり、30億年前には起こっていたことだが、過去300万年程度の時期には発生しなくなっている現象である可能性があるということだ。

そんなことがあるのだろうか。謎は深まるばかりだ。

しかし天文学者はもう1つの可能性についても考えている。

それは、「天の川銀河内で発生している高速電波バーストも我々はキャッチしているのだが、あまりに強すぎる反応のために、地球圏内から発せられたノイズとして無視されている」というものだ。

もし貴重な電波データをせっかく観測し続けているというのに、気づかず捨てているのだとしたら、それは天文学者にとってはあまりに悲しい事実だ。

宇宙にまだ未知の現象が残っている。それはとても興味深い話だが、地球が電波に満ち溢れる現代、電波天文学者の仕事は大量に絡まった糸を解き続けるような大変な作業になっている。

とりあえず、スマホとか使いまくってごめんね、と一言謝っておこう。

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reference:CSIRO,phys,NATIONAL GEOGRAPHIC/ written by KAIN

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