挿し木の謎を解明。たった1つの遺伝子が細胞を無傷で「幹細胞」に変化させていた

animals_plants 2019/07/10
Credit:pixabay

Point

■ヒメツリガネゴケの遺伝子に、細胞を無傷の状態で「幹細胞」に変化させる遺伝子が発見される

■「ステミン」と名付けられた遺伝子は、細胞の文化を促す化学修飾を外すことで幹細胞への変化を引き起こす

■一つの遺伝子を人工的に操作するだけで幹細胞を生み出すことができたのは全生物で初めての快挙

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細胞は基本的に、いったん分裂・増殖すると元の状態には戻らない。

しかし植物は、挿し木や葉挿を行うと、葉っぱ・茎・根っこなどに分化していた細胞がリセットされ、そこからどんな器官にもなれる「幹細胞」が生まれる。

ハートの7を破いたらそこからジョーカーが生えてくるみたいなものだ。

基礎生物学研究所(愛知県)の新たな研究で、こうした植物特有の不思議な能力は一つの遺伝子が鍵となって働くことが判明した。

さらに実験では葉っぱが無傷の状態でも、ステミンを働かせるだけで幹細胞を作り出すことにも成功している。

たった一つの遺伝子を人工的に操作するだけで、無傷の生体内に幹細胞を生み出すことができたのは全生物で初めてとのことだ。

この遺伝子は、主任研究員の石川雅樹助教授によって「ステミン(STEMIN=STEM CELL INDUCING FACTOR)」と名付けられた。

研究の詳細は、7月8日付けで「Nature Plants」上に掲載されている。

Physcomitrella STEMIN transcription factor induces stem cell formation with epigenetic reprogramming
https://www.nature.com/articles/s41477-019-0464-2

無傷の状態で「幹細胞」が発生

研究チームは、切り離したヒメツリガネゴケの葉を水につけておくだけで、断面の細胞が幹細胞に変化することに着目した。

ヒメツリガネゴケの葉は切断後12〜24時間で切り口のタンパク質が増加し、幹細胞が作られる。

こうしたコケ植物の驚異的な再生能力を解明するため、ヒメツリガネゴケが持つ全遺伝子3万2926個を分析。その中から幹細胞化に関係する遺伝子の候補15個を特定した。

Credit:nibb

そしてこの15個の内、たった一つの遺伝子を活性化させることで、無傷の葉細胞が幹細胞へと直接変化したのだ。この遺伝子がステミンである。

ステミンが幹細胞化に関わる遺伝子であることを証明するため、植物内のステミンを壊してみたところ、幹細胞への変化が遅れることが明らかにされている。

遺伝子変化の抑制を「オフ」にする

それではステミンはどのようにして葉細胞を幹細胞へと変えているのか。

葉細胞というのは一般的に、葉っぱの形状を保つため、幹細胞化を引き起こすような遺伝子グループの働きが完全に抑制されている状態にある。

茎や根っこに分化した細胞がそれぞれの機能を維持できるのは、幹細胞化する遺伝子を抑えつけ、茎や根に特有の遺伝子だけを働かせているからだ。

ところが実験では、ステミン遺伝子を働かせると、この抑制がオフ化され一挙に幹細胞化が起こり始めたのである。これは活性化したステミンが特定のDNA配列に結合することで、細胞の化学修飾が外れることによる。

Credit:nibb

特定の位置で化学修飾が起こると細胞が分化・専門化される代わりに、余分な遺伝子が働かないように抑圧される。つまり化学修飾が外れると、抑えつけられていた遺伝子が働き始めて幹細胞へと変化するのである。

こうしたステミン遺伝子はコケ植物以外にも、イネやバラのような植物にも存在していることが分かっている。

それらのステミンがそのような働きをするかはまだ不明だが、コケ植物のように無傷の状態で増やすことも可能になるかもしれない。

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reference: mainichinibb / written by くらのすけ

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