【強靭】自己質量の650倍重いモノを持ち上げる「人工筋肉ファイバー」が開発される

technology 2019/07/12
Credit: Courtesy of the researchers

Point

■MIT研究チームが、ポリマーを使った新たな人工筋肉ファイバーの開発に成功

■熱膨張率の異なる2種類のポリマーを組み合わせることで、従来よりはるかに優れた強度と軽量化を実現

■人工ファイバー自体の重さのおよそ650倍まで持ち上げることができる

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MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームにより、新たな「人工筋肉ファイバー」が開発された。

熱膨張率の異なる2種類のポリマーを組み合わせることで、今までになかった強度の伸縮力と軽量化の実現に成功している。

従来の人工筋肉には、水圧システムや自動制御モーター、形状記憶メタル、刺激反応性ポリマーといった技術が用いられてきたが、どれも質量が重すぎたり、刺激反応の時間が長すぎたりと問題が多かった。

しかし今回開発された人工筋肉ファイバーは従来の弱点を克服し、強度と軽さにも優れているため、ロボットや義手・義足などへの応用が期待できる。

研究の詳細は、7月12日付けで「Science」上に掲載されている。

Strain-programmable fiber-based artificial muscle
https://science.sciencemag.org/content/365/6449/145

人工筋肉ファイバーのメカニズム

開発を行ったのは同大学のポストドクターであるMehmet Kanik氏と院生のSirma Örgüç氏。

Kanik氏によれば、繊維の強靭な伸縮力のヒントとなったのは「キュウリ」であったという。

キュウリは成長する際、巻き蔓を伸ばして支えとなる棒や木に巻きつけて上へ上へと伸び上がり、太陽光を効果的に吸収することができる。

研究チームはこのキュウリの「巻きつけて伸縮する」というメカニズムにインスパイアされ、カールして収縮する人工繊維の開発に着手した。

Credit: Courtesy of the researchers

さらに人工筋肉の強度の高さを実現するため、熱膨張率の異なる2種類のポリマーを織り合わせる方法を採用した。

両ポリマーに加熱時の伸び率に差があると、片方のポリマーだけが早く伸びようとする。そして熱膨張率の低いもう片方のポリマーがそれを抑制することで、結果的に繊維全体がコイル状にカールし始める。

以上の仕組みが頑丈な強度を生み、個別のポリマーより数倍も強度の高い伸縮力を実現することができるのだ。

自己質量の650倍の重さを持ち上げる

また人工ファイバーは熱に敏感で、たった1度の熱変化で形状を変化させる。

実験ではファイバーを手に取った瞬間、手だけの温かさで繊維がカールし始めた。わずかな温度上昇でもコイル状に巻きつき、高い強度の収縮力が発生することが判明したのである。ファイバーは温度が下がると、元の長さに戻り始める。

研究チームはその後のテストで、ファイバーの縮小と膨張のプロセスがおよそ1万回まで反復可能であることを実証している。さらに強度テストでは、自己質量のなんと650倍まで持ち上げることができることが証明された。

Credit: Courtesy of the researchers

今後の研究では、人工筋肉ファイバーに電極のような加熱材を内蔵することによって、外部熱源に頼らない筋肉収縮の実現を計画している。また人工ファイバーをより多く織り合わせることで、より本物に近い筋肉繊維を再現できるかもしれない。

現在の義手・義足には30ポンド(約13kg)もの重さがあり、その原因の大部分が内蔵されている作動モーターの重さによる。これを人工筋肉ファイバーに取り替えることができれば、義手・義足を使う人たちの生活は今よりずっと楽になるだろう。

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reference: mit.edu / written by くらのすけ

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