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つい被害者を責めてしまう「公正世界仮説」とは何なのか? (2/2)

2021.01.27 Wednesday

2019.07.22 Monday

前ページ努力は必ず報われるべきだ

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被害者は「報い」を受けている?

さらに、私たちが公正世界バイアスによってメンタルヘルスを保っていると結論付ける研究もあります。このバイアスが真実であるとすれば、今良い行いをしておけば未来に希望が開けていくと心から信じることができるため、そんな人がうつ状態になることはないということです。

しかし、この正当化が悲劇を生むのは、何らかの形で「被害者」が生まれたときです。このバイアスが強ければ強いほど、どんな被害者であれ何らかの「報い」を受けているとみなされてしまうのです。

また、グループの一貫性を重視する「binding values(結合価値)」を重んじる人々は、その対の概念である「individualizing values(個別価値)」を大切にする人々よりも、被害者について「自業自得だ」と考える傾向が強いことも分かっています。

Credit: pixabay

これは、人々が支持する政党にも色濃く反映されます。たとえば米国共和党を支持する「red states(赤い州)」のいくつかは、医療保障制度について労働を課すことを条件にしようとしていますが、これは、働かない怠惰な人にはヘルスケアを受ける資格はないといった考え方に基づいています。

また、トランプ政権はオバマ時代の性的暴行に関するガイドラインを廃止して、より一層被害者救済を難しくしようとしています。

学校でのいじめについても、論争を呼ぶ「いじめられる側にも責任がある」といった言葉があります。本当にそうなのかは個別のケースを解剖しなければ分かりませんが、私たちが被害者側の非に注目してしまう傾向があることは確かなようです。

しかしやはり、最も注目されるべきは「加害者」の行動のはずです。被害者を自業自得だと思うことは、加害者の行動を正当化することに他ならないことを忘れてはいけません。

程度こそ分かりませんが、あなたの脳の中でも「公正世界バイアス」が少なからず作用しているはず。そうした事実を知っておくだけでも、これを知らない人よりは被害者の感情に寄り添うことができるのではないでしょうか。

子供を「いじめる側」にしてしまう親の特徴が明らかに

reference: theguardian / written by なかしー

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