1年間が7分!? とんでもない速度で公転する連星を発見

space 2019/07/27
Credit:Caltech/IPAC/R. Hurt

Point

■2つの白色矮星が共通の重心を回る食連星と呼ばれるタイプの連星で、高速軌道を回るものが発見された

■この連星の軌道周期は約7分間で、これまで発見された同タイプの連星の中では2番目に公転周期が速い

■こうした連星は相対性理論により強力な重力波の波紋を生み出していると予測されており、2034年稼働予定の重力波望遠鏡LISAの観測候補になっている

宇宙最初の巨大天体は暗黒物質で輝く「ダークスター」だった

空の星を眺めていると、動いているのか疑問に思うほどほとんど変化を感じません。

地球は実際、時速10万7280kmというものすごい速度で太陽軌道上を移動していますが、まず実感することは無いでしょう。

天体はどれも人間にとってはスケールが大き過ぎて、わかるような変化がほとんどないのです。

しかし白色矮星の連星には、恐ろしい高速度で軌道を周回するタイプのものが見つかっています。

これまで発見された中には、かに座HM星系の軌道周期5分21秒や、J0651連星の12分45秒など、地球なら1年間に当たる公転周期が数分単位に収まっている天体があるのです。

今回発見された「ZTF J1539 + 5027」(略称:J1539)は、軌道周期が6分54秒で、観測史上2番目に周期の速い連星です。

1番じゃないのかよ、と思うかもしれませんが、同タイプの連星を多く発見することは、こうした天体の理解や研究を深めるために、とても重要な発見となります。2番でもダメじゃないんです

これらの天体は食連星と呼ばれるタイプで、強い重力のさざ波を生み出すと考えられています。そのため今後稼働が予定されている重力波望遠鏡LISAによる観測対象として期待が寄せられています。

この発見報告は、カルフォルニア工科大学の研究者たちにより発表され、科学誌「Nature」に7月24日付けで掲載されています。

General relativistic orbital decay in a seven-minute-orbital-period eclipsing binary system
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1403-0

白色矮星の食連星

天体の話題にたびたび登場する白色矮星は、太陽と同程度の軽い恒星が死んだ後の姿です。

恒星の核融合は強力な重力による圧縮が原動力です。そのため、軽い恒星では、核融合が進んで電荷の高い原子ばかりになってくると、原子同士の反発力を抑えられなくなって核融合が進まなくなります。

そして、やがて取り囲むガスも放出して失われ、丸裸になったコアだけが残ります。これが白色矮星です。

宇宙に浮かぶ恒星の半分近くは、連星というペアを作って互いに回り合っています。そのため、宇宙にはそんな死んだ恒星だけの連星が数多く存在しています。

この中でも、特に観測に重要なのが食連星と呼ばれるタイプのものです。

食連星は互いの重力が釣り合う重心を中心として、もつれ合うように公転しているために、互いに食を起こして見えるため、定期的に2回の明るさの変化を起こす連星です。

Eclipsing binary star animation 2
一般的な食連星の例。1回の公転で2度の食を起こし明るさが変化する。
このタイプの天体は、食による変光を観測することで、軌道周期や質量計算が容易なため、天文学者には非常に重宝されています。

高速回転する食連星

今回発見されたJ1539は標準的な白色矮星です。1つは地球サイズですが、太陽の60%程度の質量を持っています。ペアとなる伴星はもっと大きいですが、質量は太陽の20%程度と軽い白色矮星で、2つの星を合わせて大体太陽と同じくらいの質量になります。

互いの距離は、月-地球間の距離の5分の1程度で、かなり接近している状況。これは土星の中に収まるほどの範囲です。そして毎秒数百kmという速度で、7分間で互いの重心の周りを公転しています。

J1539を再現したCGアニメーション。この動画の1秒は実際の2分間に相当する。/Credit:Caltech/IPAC

この2つの白色矮星は1日毎に26センチずつ接近しているといいます。このタイプの連星は、最終的には衝突し、より重い方の天体が軽い方の天体を取り込んでしまうのです。

J1539についても、数年も経てば、もう軌道周期は測定不可能なほど短くなると予想されています。

宇宙規模の運動としては、活動の変化が非常に速いため、こうした天体を早期に発見できることには、大きな意味があります。

この天体を観測し続けることで、数十年後には軌道崩壊の瞬間を観測できるかもしれません。

また、こうした非常に接近した状態でもつれ合って回る連星は重力波のさざ波を発生させるということが、一般相対性理論により予想されています。

J1539から発生する重力のさざ波/Credit:Caltech/IPAC

こうした重力の影響は、ESAにより2034年に打ち上げ予定となっている重力波望遠鏡LISAにより観測可能だと言います。

重力波望遠鏡LISA

重力波望遠鏡は、その名の通り重力波を検出する望遠鏡です。ただ、重力を伝えると言われる素粒子「重力子」はまだ発見されていないので、電波望遠鏡の様に直接重力波を捉えることはできません。

そのため重力波望遠鏡は、レーザー干渉計という装置を使い重力波の影響で起こる時空のゆがみで、光子の飛距離の変化を捉えて観測します。

Credit:AEI/Milde Marketing/Exozet

これまで重力波望遠鏡は、地上に設置された「LIGO」しかありませんでしたが、これは精度がブラックホールのような強力な重力源からの波しか捉えることができませんでした。

LISAは3機が宇宙空間上でレーザーを行き来させて重力波を感知する、高精度の重力波望遠鏡で、今回のような連星の生み出す僅かな重力波も捉えることができます。

今回の天体の研究が進み、LISAが本格稼働すれば、現在は数個しか見つかっていない連星が、数万個単位で発見できる可能性があります。

また、現在は食連星でなければ、詳細な軌道や質量を調べることができませんが、重力波望遠鏡LISAならば食を起こさないタイプの連星でも調査ができるようになることが期待されています。

それにしても、ゆったりと壮大なスケールで変化しているように思っていた宇宙で、分刻みのスケジュールで動く天体がいるなんて、なかなか忙しないお話だ。

相対性理論 vs 万有引力!? 白色矮星の質量を異なる重力理論で計算すると…?

【編集注 2019.07.27】
文中に一部誤りがあったため、修正して再送いたします。
reference: caltech,ESA,astroarts/written by KAIN

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