「成果だけ」を求める上司は、逆に部下のパフォーマンスを下げていた

psychology 2019/07/29
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Point

■利益や成果だけを求める上司は、本来望んでいた利益や成果を逆に失うことが判明

■成果主義の上司は、部下からの尊敬・忠誠・人望を失い、部下の高いレベルでの課題達成を妨げる

■成果主義に潜む弊害に気づき、従業員の健康や倫理規範といったその他の項目にも注力することが大切

ブラック企業でよく見る風景です。

利益や成果だけを求める上司は、部下からの信頼を失ってしまうことがわかりました。

また部下にパフォーマンスを自制させることで、本来望んでいた利益や成果を逆に失うこともあるようです。

この説を発表したのは、米ベイラー大学の研究チーム。論文は、雑誌「Human Relations」に掲載されています。

The influence of supervisor bottom-line mentality and employee bottom-line mentality on leader-member exchange and subsequent employee performance
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0018726719858394?journalCode=huma

研究チームの1人であるマシュー・クアード博士は、「利益ばかりに目を向け、部下の健康や環境面・倫理面といったその他の重要な結果を気に掛けない上司は、部下にとって有害でしかありません」と説明。

このことは、上司に対する不信感・不満・愛着の欠如を生むばかりか、最終的には、部下が高いレベルで課題を達成し、要求されている義務以上のパフォーマンスを行うことを阻止してしまうのだそうです。

これまでも成果を重視する志向性(bottom-line mentality, 以下BLM)が従業員の行動に与える影響についての研究は行われてきましたが、「なぜそのような影響が生じるか?」という理由を示した研究は初めてです。

成果主義を掲げる上司は結果的に成果を得にくい

研究チームは、866名の人々を対象に調査を行いました。うち半数は上司で、残りの半数はこれらの上司の元で働く部下でした。データは、金融・医療・販売・法律・教育を含むさまざまな産業に従事する人々から集められました。

計測されたのは、上司のBLM、部下のBLM、タスクパフォーマンス、上司と部下の交流(部下が上司との関係について与えた評価)です。

Credit: pixabay

部下は、「私の上司は何よりも結果を重視する」、「私の上司は部下の健康よりも利益を気に掛ける」といった尺度項目をスコア化することで、上司のBLMを評価しました。また、上司と部下の交流は、「私は上司を人間的にとても好きだ」、「私と上司の関係は、ギブアンドテイクに基づいて成立している」といった項目で測られました。

上司は「この部下は自分に要求されている生産性を満たすか、それを上回っている」、「この部下はより生産性を向上させる方法を模索している」、「この部下は質の高い仕事を行うために全力を注いでいる」などの項目をスコア化することで、部下を評価しました。

収集した回答とデータをもとに分析を行ったところ、以下のことが明らかになりました。

・BLMが高い上司は、部下との関係性の質が低い。

・同様に、BLMが高い上司は、「上司と部下の交流の質が低い」と部下から認識されている。

・よって、部下はパフォーマンスを自制することで、その状況に報いる。

・上司のBLMが高く、部下のBLMが低い時、その損害効果は強化される。

・上司と部下のBLMがどちらも高い時でも、パフォーマンスの低下が見られる。

特に最後の項目は、「似たような価値観を持つ者が一緒にいるとポジティブな結果が生まれる」という社会通念と矛盾する点で、興味深いものです。

部下自身がBLMの要素を持っていたとしても、好まれるのは成果だけではなく、部下との健全な社会的交流関係を強化する人間関係の側面を重視する上司でした。

成果主義のネガティブな効果を払拭する3つのステップ

利益と生産性は、企業にとって永遠のテーマです。「組織の中でBLMに関するネガティブな作用が働いていないか?」と心配を抱くリーダーたちに対し、研究チームは以下のステップを実践するよう勧めています。

・従業員の健康や倫理規範といった、その他の事柄を疎かにするBLMや成果主義の手法には慎重になること。

・上司が「成果こそすべてだ」と豪語する時に、部下へ伝わるメッセージ(及びそれによってもたらされうるパフォーマンスへの反響)に気づくこと。

・成果を強調する必要のある組織では、BLMのマネージメント方式に、ポジティブな結果を生むことが知られているその他のマネージメント方式を組み合わせることを検討すること。

マシュー・クアード博士 / Credit: Baylor University

「部下の仕事の出来具合はどうだろうか? 求められている成果が出せているだろうか?」と、部下のパフォーマンスレベルを厳密に調査することは、何の疑いもなく上司の役割とされています。

また上司が、倫理的活動・個人の成長・職場での人間関係構築といった他の事項よりも、成果を追求する必要性を部下に対して強調することは、決して珍しいことではありません。

しかし、これらの行動が部下からの尊敬・忠誠・人望を失うことにつながり、結果的には利益や成果の低下を招くとは皮肉ですね。部下や後輩を持つ人は、成果主義に潜む弊害に気づき、成果以外の事柄にも目を向けることで、回り回って望んでいた成果が得られることを肝に銘じた方が良さそうです。

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reference: baylor / written by まりえってぃ

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