なぜ小さな銀河が巨大ブラックホールを持てるのか? 謎に迫る

space 2019/07/30
Credit:NASA / ESA / Hubble

Point

■銀河の中心には例外なく、超大質量ブラックホールが存在しており、銀河とブラックホールは共進化の関係にある

■そのため、大きな銀河の中心ブラックホールは大きくなり、小さな銀河では中心のブラックホールも小さくなると考えられている

■今回発見されたのは、非常に小さい規模の若い銀河だが、その中心ブラックホールは不釣り合いに大きく、これまでの定説を書き換える必要があるかもしれない

宇宙には予想外の「匂い」が漂っている

銀河の中心には、太陽の何百万倍以上という超大質量ブラックホールが存在しています

素直に考えれば、銀河はこうした超大質量ブラックホールに引かれて集まった物質から生まれたというシナリオが思い浮かぶでしょう

しかし最近の研究では、実は大質量ブラックホールと銀河の形成は無関係かもしれないとする説も登場しているのです。

こうした大質量ブラックホールと銀河形成の謎について、新たな事実となる銀河が発見されました。

これは幅約3000光年という天の川銀河の数分の1サイズの小さい銀河でありながら、太陽の数百万倍の質量という不釣り合いなほど巨大な超大質量ブラックホールを中心に持っているというのです。

こうした新しいタイプの天体の発見は、超大質量ブラックホールと銀河の関係性に、新しい知識を教えてくれるかもしれないため、注目を集めています。

この研究は、英国レスター大学天体物理学の研究者より発表され、王立天文学会月報にて公開されています。

超大質量ブラックホールが先か? 銀河が先か?

ブラックホールは一般的に、太陽の30倍近い質量を持った恒星が死んだ場合に生まれます。

しかし、天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホールは、太陽の400万倍の質量、アンドロメダ銀河の中心では太陽の1億倍ともいわれています。

こうした銀河の中心をなしている超大質量ブラックホールは、私たちの知る通常のブラックホールの形成方法では生まれることができません

ではどうしてそんな巨大質量のブラックホールができるのかというと、大量にいろんな星々を吸い込むことでブラックホール自身も成長・進化するからなのです。

この考え方に従った場合、現在の天体物理学では、銀河と超大質量ブラックホールの関係について、どっちが先に生まれたのかという問題に答えることができません

超大質量ブラックホールがガスや塵を集めて、巨大な銀河へ成長させていったのか、あるいは銀河が先にあり、その中で生まれたブラックホールが周囲の天体を飲み込んで大きく成長していったのか、まさに卵が先か鶏が先かというようなお話になってしまうのです。

現在は、これらはほぼ同時期に発生し、両者の成長過程の早い段階から共進化の関係が始まるという考え方が一般的です。

そのため、巨大な銀河の中心では大きく成長した大質量ブラックホールが存在し、小さい銀河の中心ではそれに見合った、ほどほどの大質量ブラックホールになると考えられています。

これは天の川銀河とアンドロメダ銀河の大質量ブラックホールを比較した場合とも一致しています。

ブラックホールと銀河の共進化

Credit: depositphotos

ブラックホールは一般的に餌となるような物質を吸い込むと活性化し、強力なエネルギーで渦巻きます。そうなると、周囲のガスは摩擦により加熱され、ブラックホールに落ちることなく周囲を力強く回るようになるのです。

これは強力に星を生み出す原動力にもなりますが、この状態ではブラックホールは新たな餌を得られないため成長できません。ブラックホールのサイズはこの状態では安定することになります。

ここからさらにブラックホールが成長するには、周囲の銀河が更に大きく成長し、餌となる天体をブラックホールへ押し出してくれるのを待つしかありません。

これが、小さな銀河の中心には小さなブラックホール、大きな銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在する理由です。

小さい銀河に大質量ブラックホールの謎

今回発見されたのはブルーナゲットと呼ばれるタイプの小さく若い銀河です。

ナゲットと言われても私たちにはチキンナゲットしか思い浮かびませんが、この言葉は「塊」というような意味で使われています。

若い高温の星は波長の短い青い光を放ちます。青い色はその銀河で活発な星形成が起こっていることを示しているのです。

銀河中心部に大量のガスが流れ込み、小さくて密度の高い星形成の領域が作られると、それがブルーナゲット(青い塊)と呼ばれる銀河になります。

こうした銀河は非常に遠い宇宙にしか見つかりません。遠い宇宙とは、つまり初期の宇宙という意味です。ブルーナゲットは現在は存在しない天体です。

この新たに発見されたブルーナゲットには、そのサイズに不釣り合いな巨大ブラックホールがありました。これは銀河とブラックホールの共進化というモデルに逆らうものなのです。

星生成の停止した銀河 レッドナゲット

この不釣り合いな巨大ブラックホールを持つブルーナゲットは、レッドナゲットと呼ばれる銀河と関係があると考えられています。

レッドナゲットは、年老いて低温になった暗くて赤く光る星ばかりとなった銀河です。ブルーナゲットとは逆に赤い塊に見えることからそう呼ばれます。

レッドナゲットは星生成が停止してしまった進化していない銀河です。死んでしまった銀河とも言えるかもしれません。

そうはいってもレッドナゲットは、星を作るために必要なガスは十分に存在している場合があります。この銀河が星を作れなくなる理由は、中心部の超大質量ブラックホールから吹く風が、ガスを銀河中へ散らしてしまい圧縮できないためだと考えられています。

超大質量のブラックホールは、物質が落ち込んだ際に活性化しますが、そのとき開放されるエネルギーが大きすぎるせいで、周囲を取り巻くガスを吹き散らしてしまうというのです。

Credit:NASA/CXC/M.Weiss

この辺りのメカニズムは、まだ完全には解明されていません。ただ、星生成の停止した銀河レッドナゲットが生まれる原因は、そのサイズに対して大きすぎる質量のブラックホールを持つことが原因の可能性があります。

今回の銀河サイズに対して大きすぎる超大質量ブラックホールを持つブルーナゲットも、いずれはレッドナゲットへ変わると考えられ、このメカニズム解明に一役買うかもしれません。

超大質量ブラックホールと銀河の進化過程についてはまだわからないことが多く、両者が本当に共進化の過程にあるかどうかを疑う意見もあります。

研究者はさらなるデータを集めていかなければ、これ以上の推論は難しいとしています。

一見わかりやすそうなブラックホールと銀河の関係についても、未だに謎の部分が数多く残されているのです。

星は何かに生成を阻害されている? 銀河に3%しかない「星の生産工場」の謎

reference: space.com,AstroArts,sci-news/written by KAIN

SHARE

TAG

spaceの関連記事

RELATED ARTICLE