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銀河に隠れた数百万の「孤独なブラックホール」が見つかるかもしれない

2021.01.27 Wednesday

2019.08.02 Friday

天の川銀河中心部を飛び交う野良ブラックホールの想像図/Credit:慶応義塾大学

Point

■現在発見されているブラックホールは、銀河中心核となる超大質量のものや、連星の片割れなど物質の豊富な場所に限られている

■周囲に何もない、野良ブラックホールは数百万単位で銀河に存在すると考えられているが、観測が難しく数十個しか見つかっていない

■日本の天文学者が提案した新たな電波検出方法は、2020年中に孤立したブラックホールを700個以上発見できる可能性がある

最近はその姿を撮影した映像なども登場したブラックホール。今や当たり前に観測できると思ってしまいそうですが、実際は私達の知るブラックホールは宇宙の極々一部のものでしかありません

現在観測可能なブラックホールは、連星の片割れや銀河の中心核など、周囲に物質があふれた環境にある30個程度のものに過ぎないのです。

人と関わらないニートや引き篭もりの人が、社会にどれだけ潜んでいるのか正確にはわからないのと同じ様に、孤立して周囲に影響を及ぼさないブラックホールは、どこにどれだけいるのかさっぱり不明なのです。

こうしたブラックホールを検出するための新たな方法が、日本の天文学者により提案されています。

この方法は、ブラックホールの流出物質と、星間物質の衝突で発生する電磁波を捉えるというもので、2020年から稼働予定の電波望遠鏡SKAにより、孤立ブラックホールを700個近く発見できると期待されています。

この研究は、東京大学、京都大学の研究者から発表されていて、現在は正式な査読は受けていない状態ですが、王立天文学会月報での発表が予定されており、論文はコーネル大学arXivに公開されています。

Radio Emission from Accreting Isolated Black Holes in Our Galaxy
https://arxiv.org/abs/1907.00792v1

2種類のブラックホール

光さえ吸い込むブラックホールは直接見ることはできないため、周辺の物質に与える影響から、その存在を知る以外に方法がありません。

そのため現在宇宙で観測されているブラックホールは、連星に属するものと、銀河中心核を成す超大質量ブラックホールの2種類だけです。

連星系の片割れとなる恒星がブラックホールとなった場合、残された伴星がブラックホールに多くの餌を与えることになります。大量の吸われた物質は降着円盤(ブラックホールを取り巻く円盤状の塵)を作り出し、そこから強いX線を放って輝きます。

伴星を吸うブラックホールCredit:ESO/L. Calçada/M.Kornmesser

また、連星では食を起こしている場合があり、これによる伴星の輝きの変化もブラックホール観測の手がかりとなります。

銀河中心核の超大質量ブラックホールは、周囲に星間物質や恒星が豊富なため、やはり同じ様な原理でその存在を観測することが可能です。こちらは連星よりももっと強力なX線を放つので、その姿を撮影することさえ可能となります。

2019年4月に撮影に成功したブラックホールは、こうした銀河中心の巨大ブラックホールです。

楕円銀河M87中心ブラックホールの画像/Credit: EHT Collaboration

現在見つかっているブラックホールはこうした、太陽質量の10倍から100倍程度の連星系に属する恒星質量ブラックホールと、100万倍以上の超大質量ブラックホールしか見つかっていません

2つのブラックホールの質量にはあまりに大きな隔たりがあるため、このミッシングリンクを埋める中間質量ブラックホールも存在するだろうと言われています。

ブラックホールの形成メカニズムは未だ不明確な部分が多く、なぜ中間質量のものが見つからないかは明らかではありませんが、原因の1つに周囲にあまり物質の存在しない孤立したブラックホールが発見できないという問題が考えられています。

孤立したブラックホールを発見できれば、ブラックホールのメカニズムもさらに研究が進むと期待できますが、物質の欠乏した宙域に浮かぶブラックホールは、上の2つの例のような痕跡がほぼ現れないため、発見を難しくしているのです。

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