銀河に隠れた数百万の「孤独なブラックホール」が見つかるかもしれない

space 2019/08/02
天の川銀河中心部を飛び交う野良ブラックホールの想像図/Credit:慶応義塾大学

Point

■現在発見されているブラックホールは、銀河中心核となる超大質量のものや、連星の片割れなど物質の豊富な場所に限られている

■周囲に何もない、野良ブラックホールは数百万単位で銀河に存在すると考えられているが、観測が難しく数十個しか見つかっていない

■日本の天文学者が提案した新たな電波検出方法は、2020年中に孤立したブラックホールを700個以上発見できる可能性がある

最近はその姿を撮影した映像なども登場したブラックホール。今や当たり前に観測できると思ってしまいそうですが、実際は私達の知るブラックホールは宇宙の極々一部のものでしかありません

現在観測可能なブラックホールは、連星の片割れや銀河の中心核など、周囲に物質があふれた環境にある30個程度のものに過ぎないのです。

人と関わらないニートや引き篭もりの人が、社会にどれだけ潜んでいるのか正確にはわからないのと同じ様に、孤立して周囲に影響を及ぼさないブラックホールは、どこにどれだけいるのかさっぱり不明なのです。

こうしたブラックホールを検出するための新たな方法が、日本の天文学者により提案されています。

この方法は、ブラックホールの流出物質と、星間物質の衝突で発生する電磁波を捉えるというもので、2020年から稼働予定の電波望遠鏡SKAにより、孤立ブラックホールを700個近く発見できると期待されています。

この研究は、東京大学、京都大学の研究者から発表されていて、現在は正式な査読は受けていない状態ですが、王立天文学会月報での発表が予定されており、論文はコーネル大学arXivに公開されています。

Radio Emission from Accreting Isolated Black Holes in Our Galaxy
https://arxiv.org/abs/1907.00792v1

2種類のブラックホール

光さえ吸い込むブラックホールは直接見ることはできないため、周辺の物質に与える影響から、その存在を知る以外に方法がありません。

そのため現在宇宙で観測されているブラックホールは、連星に属するものと、銀河中心核を成す超大質量ブラックホールの2種類だけです。

連星系の片割れとなる恒星がブラックホールとなった場合、残された伴星がブラックホールに多くの餌を与えることになります。大量の吸われた物質は降着円盤(ブラックホールを取り巻く円盤状の塵)を作り出し、そこから強いX線を放って輝きます。

伴星を吸うブラックホールCredit:ESO/L. Calçada/M.Kornmesser

また、連星では食を起こしている場合があり、これによる伴星の輝きの変化もブラックホール観測の手がかりとなります。

銀河中心核の超大質量ブラックホールは、周囲に星間物質や恒星が豊富なため、やはり同じ様な原理でその存在を観測することが可能です。こちらは連星よりももっと強力なX線を放つので、その姿を撮影することさえ可能となります。

2019年4月に撮影に成功したブラックホールは、こうした銀河中心の巨大ブラックホールです。

楕円銀河M87中心ブラックホールの画像/Credit: EHT Collaboration

現在見つかっているブラックホールはこうした、太陽質量の10倍から100倍程度の連星系に属する恒星質量ブラックホールと、100万倍以上の超大質量ブラックホールしか見つかっていません

2つのブラックホールの質量にはあまりに大きな隔たりがあるため、このミッシングリンクを埋める中間質量ブラックホールも存在するだろうと言われています。

ブラックホールの形成メカニズムは未だ不明確な部分が多く、なぜ中間質量のものが見つからないかは明らかではありませんが、原因の1つに周囲にあまり物質の存在しない孤立したブラックホールが発見できないという問題が考えられています。

孤立したブラックホールを発見できれば、ブラックホールのメカニズムもさらに研究が進むと期待できますが、物質の欠乏した宙域に浮かぶブラックホールは、上の2つの例のような痕跡がほぼ現れないため、発見を難しくしているのです。

孤立したブラックホール

孤立したブラックホールは、星間ガス(分子雲)の周囲とは異なる特殊な振る舞いから見つけ出す試みもありましたが、明確にその存在を明らかにはできていません。

ただ、こうした研究から、銀河内に未発見の孤立ブラックホールは数百万単位で存在しているだろうという予測がされています。

今回提案された方法では、ブラックホールから光速で流出する物質が、星間物質と衝突した際に発生する微弱な電磁波を捉えようとするものです。

ブラックホールは、強力な重力で物質を吸い続けていますが、物質の欠乏した場所では、降着円盤を形成できないため、物質を吹き散らしてしまう流出の方が大きいと考えられます。

この物質の流出は光速に近い速度に加速されており、粒子の物質と衝突することで加速電子を放射するのです。

これは電波波長の電磁波であり、南アフリカとオーストラリアに大陸をまたいで建設中の世界最大の電波望遠鏡SKAで検出可能と考えられています。

南アフリカのSKAサイト/Credit:SKA

この方法は、うまくノイズを取り除いて検出を行えれば、2020年中に孤立ブラックホール700個以上発見できるのではないかと期待されています

こうして見ると、ブラックホールはまだまだ未知の部分の方が大きい謎の天体です。

この提案は若い天文学者から提案されたかなり単純な方法ですが、同じく孤立ブラックホールを研究するオランダ、ライデン大学の天文学者Simon Portegies Zwart氏は「とても興味深い論文で、孤立ブラックホールを見つける素晴らしい方法だ」と述べているそうです。

隠れたブラックホールが明るい場所へと引きずり出されるのも、時間の問題かもしれません。

なぜ小さな銀河が巨大ブラックホールを持てるのか? 謎に迫る

reference:livescience,isas,astroarts,SKA/ written by KAIN

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