巨大「製氷潜水艦」で北極を救え! 壮大な誰得プロジェクト「再氷山化」計画とは?

geoscience 2019/08/17
Credit:ASA-Com-120765143221/Faris RajakKotahatuhaha

Point

■巨大氷山製造潜水艦で、北極の氷床を復活させるという、なんとも壮大な計画が提案された

■この提案は、持続可能性のある新アイデアを競う、ASA国際デザインコンペティション2019において、第2位を受賞した

■なお、北極の生態系を回復する所に主眼が置かれた計画であり、氷山の製造に伴う排出量の増加などは考慮されておらず、実現には疑問の声が多い

最近は暑い日が増えたと思う人も多いでしょうが、北極はそれどころではなくヤバいそうです。

北極は海水が凍りついてできた大地ですが、その中でも古くて厚い氷の層が溶けて砕けてしまっていることが確認されました。

地球温暖化の影響は地域によってかなりムラがあり、北極はこの中でも特に上昇が激しい地域に含まれます。

北極の融解は生息する生き物たちの棲家を直接削ることになり、生態系に大きな影響が出ていると言われています。

そんな中、北極の氷山を再生させようと、ある斬新なアイデアが提案されました。

インドネシアのデザイナーFaris氏が率いるチームは、なんと氷山製造潜水艦を建造して艦隊を組み、これによって北極海を再氷山化させようというプランを発表したのです。

この一見力技のようなアイデアは、「環境に優しく人間本位にならない建築デザイン」をテーマとした、タイ王立建築家協会(ASA)主催の国際デザインコンペティション2019において、第2位に選ばれ公式サイトに掲載されています。

Re-iceberg-isation Hexagonal Tubular Ice Arctic
https://www.asacompetition.com/results-all/re-freeze-the-arctic

北極 再氷山化プロジェクト

Credit:Dezeen/Iceberg-making submarine aims to tackle global warming by re-freezing the Arctic

設計によると、この氷山製造潜水艦は、水面下に沈むことで水槽に海水を2,027立法メートル(202万7千リットル)集め、逆浸透膜システムによって塩分を抽出して凍結しやすくしたのち、エアタービンを使って海水を凍結させるのだそうです。

エアタービンは圧縮空気を用いたエンジンで、空気が膨張するときに周囲の熱を奪って凍結させます。

大体一ヶ月位で、この六角形の巨大な氷山を作り上げることができるといいます。

Credit:asacompetition/Faris RajakKotahatuhaha

デザイナー自身、このアイデアに気候変動を止めたり、温室効果ガスの排出量を削減する能力が無いことは認めており、主な目的は、氷床を再生させることで、極地の生態系(アザラシ、オオカミ、キツネ、白熊、魚)を回復させることだといいます。

建築デザインの賞では評価されたこのコンセプトですが、実際には、懐疑的な声が多く上がっているようです。

その理由の1つが、北極の海氷融解は、海面上昇などに寄与していないということです。

北極の氷は南極などと異なり、すでに海に浮かんでいる状態のため、溶けても凍っても海面には影響がありません。氷の融解で脅威となるのは、陸氷が融解し海に流れ込んだ場合で、この方法はそうした危機にはなんの効果もありません。

それどころか、大量の海水を氷結させるために、逆に地球規模では温室効果ガスの排出量を増やす結果になると考えられます。

また、この潜水艦艦隊の電力をどの様に供給するのか、などについても不明な点が多くあります。

大気科学者のMichael Mann氏は、このコンセプトに対し「潮が満ち始めたとき、砂浜に作った砂の城を守るためにコップで海水を掻き出しているようなものだ」と厳しいコメントを寄せています。

北極の環境を守るためなら、地球温暖化の加速も辞さないこの誰得プロジェクト。壮大な試みですが、どうやら実現されることはなさそうです。

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reference:sciencealert,adfwebmagazine/written by KAIN

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