2000万年前の「手のひらサイズの頭蓋骨」から脳進化の大ヒントを発見

history_archeology 2019/08/23

Point

■2,000万年前に存在した霊長類「Chilecebus carrascoensis」の頭蓋骨のCTスキャンにより、脳の3D復元モデルが作成された

■嗅球や視神経の状態から、Chilecebus carrascoensisの嗅覚と視覚はともに優れていなかったことが分かり、嗅覚と視の進化は私たちが考えるほど密接には関連していないと示唆された

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古い時代の脳なくして、一体どうやって脳の進化を研究することができるのでしょうか?

言われてみればその通りですが、だからといって簡単に古い脳が手に入るわけではありません。

中国科学院のXijun Ni氏とアメリカ自然史博物館のJohn Flynn氏らが、2,000万年前に存在した小さな霊長類「Chilecebus carrascoensis」の、極めて保存状態の良い頭蓋骨のスキャンニングに成功しました。論文は、8月21日付けで雑誌「Science Advances」に掲載されています。

Cranial endocast of a stem platyrrhine primate and ancestral brain conditions in anthropoids
https://advances.sciencemag.org/content/5/8/eaav7913

系統樹に空いた空白を埋める小さな頭蓋骨の存在

ヒトの脳は進化の過程で驚くほど巨大化してきましたが、その特性が発展しはじめた時期はほどんど理解されていません。その原因の一つは、古代に生息した霊長類の頭蓋骨の化石が良い保存状態で残されているケースがかなり限られることです。

およそ3,600万年前、類人猿の祖先である狭鼻下目(旧世界ザル)は、広鼻下目(新世界ザル)から分岐しました。Chilecebusは広鼻下目に属し、体重は530gほどで、初代iPadの重さにも満たないほどの小型の猿です。

実は、頭蓋骨そのものは、1990年代にチリのアンデス山脈の中心の初期中新世の火山砕屑性堆積物の中から発見されていました。新第三紀(中新世・鮮新世)の広鼻下目の化石としてはもっとも保存状態が良いことから、研究者たちは、この化石が「系統樹にぽっかりと空いた空白を埋めるために重要な役割を果たしてくれるのでは?」と期待を寄せています。

Chilecebusはもっとも初期に分岐した広鼻下目の一種として知られており、その分類を行うことをはその分岐郡の祖先の脳の特性を評価する上で特に重要です。

広鼻下目と狭鼻下目では脳の特性は独立して発生

とはいえ、頭蓋骨と脳は同じものではありません。そこで、研究チームは最新のCTスキャン技術を用い、この頭蓋骨にかつて覆われていたであろう脳の3D復元モデルを作成しました。

復元モデルは、次の動画で確認することができます。

その結果、脳が存在すべき場所に、球根状の領域が存在することが分かりました。単にChilecebusが霊長類の一種であることを確認しようとしていただけだった研究チームは、この事実に驚いたといいます。

そこで研究チームは、分析結果を元に、この奥行きを持つ脳の嗅球のサイズと、視神経管と視神経の形状といった特性を解析。嗅球が比較的小さいことから、Chilecebusの嗅覚が弱かったという推測を導き出しました。

では、弱い嗅覚を補うために視覚に優れていたかというと、そういうわけではないことが分かりました。このことから、研究チームは視覚と嗅覚の進化は私たちが考えるほど密接には関連していないのではないかと推測しています。

コモンマーモセット/Credit: Raimond Spekking / CC BY-SA 4.0 (via Wikimedia Commons)

Chilecebusの体の大きさは現代のマーモセットほどですが、脳にはそれとは対照的な複数のシワも見つかっています。これは、より複雑な認知能力があることを示しています。つまり、脳の発達すら、脳の大きさと常に関連しているとは限らないということです。

研究チームは、Chilecebusとその他の類人猿の比較によって、全般的な脳の特性の多くがモザイク状に変化を遂げ、広鼻下目と狭鼻下目では独立して発生したものと考えられることを記しました。つまり、初期の類人猿における主な脳の分化は、脳の大きさと相対的な一貫した拡大パターンを示さないということです。

手のひらサイズの小さな頭蓋骨の存在が、脳の進化に関する大きなヒントを与えてくれました。

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reference: sciencealert / written by まりえってぃ

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