小惑星リュウグウの解析画像から、惑星形成の謎に迫る新たな手がかり

Point
■小惑星リュウグウへのタッチダウン(着陸)で撮影された画像や温度測定の解析が行われた
■結果リュウグウには2種類の異なる岩石があり、2つの天体の衝突で生まれた小惑星の可能性がある
■リュウグウの岩は地球上で僅かに見つかる始原的隕石に似た特徴があり、惑星形成の謎を解く重要な手がかりとなりそうだ
先日「おむすびころりんクレーター」という謎センスな命名で話題になった小惑星リュウグウの探査プロジェクトですが、当然真面目な調査報告も発表されています。
「はやぶさ2」に搭載されたドイツとフランスの共同開発による小型探査機「MASCOT」が、2018年10月3日と2019年7月11日に2回のタッチダウン(着陸)に成功しました。その際、撮影された画像から、リュウグウの組成に関する新しい知見が得られたとのこと。
それは地球を始めとした惑星形成の謎に対する新たな手がかりとなる他、小惑星リュウグウ自体の成り立ちについても言及しているものです。
この研究論文は、ドイツ航空宇宙センター(DLR)の研究者を筆頭とする研究チームより発表され、8月23日に科学誌サイエンスに掲載されています。
https://science.sciencemag.org/content/365/6455/817
リュウグウとイトカワ

今回話題となっている小惑星リュウグウですが、これは以前に調査が行われた小惑星イトカワとは異なるタイプの小惑星です。
イトカワは「S型小惑星」という分類がされている天体で、これは主材料が岩石の小惑星です。S型のSとは石質「Stony」、またはケイ素質「Silicaceous」から来ています。
対して、リュウグウは「C型小惑星」と呼ばれます。これは岩石に有機物が多く含まれると考えられている小惑星です。有機物とは炭素のことでC型のCとは炭素質「Carbonaceous」を意味します。
イトカワの岩石は「普通コンドライト」と呼ばれるもので、これは地球で最も多く見つかる隕石と同タイプの岩石です。
対してリュウグウの岩石は「炭素質コンドライト」であると予想されています。これは地球でも希少なタイプの岩石で、始原的隕石(太陽系初期の情報を多く保った隕石)と同じものだと考えられています。
炭素と水は、地球生命誕生に非常に深く関わる元素です。そのため、S型小惑星だったイトカワに比べて、C型小惑星のリュウグウの方が地球起源を辿る上では重要な情報を多く保持していると考えられているのです。
2種類の岩石

リュウグウの表面近くで撮影された写真を解析したところ、リュウグウには2種類の異なる岩石の存在が確認されました。
1つはカリフラワー状のもろく黒っぽい粗い岩で、もう一つは白っぽく滑らかな表面の岩です。
こうした異なる見た目の岩の存在は、リュウグウが2つの天体の衝突から生まれた可能性を示しています。
考えられる仮設は、リュウグウが2つの異なる天体の衝突後、それらが重力で再結合されたか、または衝突の結果生じた高温と高圧により異なる2つの岩(物質)が生成されたという可能性です。
なんにせよ、非常に激しい過程の末の生成物がリュウグウであると考えられます。
また、画像からは、岩に多くの赤や青の小さな含有物が確認できました。これは地球上で発見される「炭素質コンドライト」と特徴が非常によく似ているそうです。

これは非常に原始的な物質であると考えられていて、原始太陽系を取り巻き、惑星の材料となった塵やガスに含まれた物質の可能性が高いとのこと。
小惑星は、初期の太陽系で惑星の材料とはならずに現代まで取り残された物質と考えられています。
こうしたリュウグウの岩石は、未だに詳しい状況が不明な惑星形成時の初期の様子を知るための重要な手がかりとなるのです。
現在はまだ、リュウグウの表面撮影映像や、温度測定などの情報を元に推測した研究報告にとどまっており、はやぶさ2が採取したサンプルを地球へ届けるのは、2020年の予定となっています。
リュウグウから採取したサンプルの分析が行われれば、謎の多い惑星形成初期の1000万年から1億年ほどの期間について理解が進むことが期待されています。