お手軽?「ワームホールの作り方」を示す研究が発表される

space 2019/09/01
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Point

■宇宙空間の2点間を結ぶ「ワームホール」の生成方法を示した研究が発表される

■電荷を帯びた2つのブラックホールが、それぞれの地点をつなぐ架け橋としてワームホールとなりうる

■生成には「宇宙ひも」も不可欠であり、宇宙ひもを2通りの方法で利用することで、ワームホールを安定させることができる

宇宙の2地点間のショートカットであるワームホール。気が遠くなるほどに広い宇宙空間の中に、ワープ装置ともいえるこのワームホールを自在に作成することができればどんなにいいことでしょう。

しかしその実現は技術的に難しく、たとえ完成させたとしても、それは非常に不安定なものになってしまいます。そこに光子を1つ落としてみたとしても、光よりも速い速度でワームホール自体が崩壊してしまうことでしょう。

しかし、「arXiv」に掲載されたカリフォルニア大学の新たな研究において、安定したワームホールの生成方法が示されました。そのワームホールも崩壊してしまうことには変わりありませんが、その速度はメッセージを伝えるのには十分な遅さであり、物がワームホールを通過できる可能性さえも示唆されているのです。

Traversable Asymptotically Flat Wormholes with Short Transit Times

https://arxiv.org/abs/1908.03273

2つのブラックホールが材料

ワームホールを壊れにくくすることは、理論上は簡単です。そこに「負の質量」を持つ物質があれば、ワームホールを通過しようとする物の邪魔を防ぐ働きをしてくれるため、物質がワームホールを通り抜けることが可能になります。

しかし、私たちはまだ「負の質量」を持つ物質の生成方法を確立できていないため、別のプランが必要となります。

ワームホールは、すべての物質が脱出不可能なブラックホールと、すべての物質が侵入不可能なホワイトホールを結ぶものと考えられており、これら2つの不思議な物体を組み合わせることで、ワームホールを作り出すことができるかもしれません。

しかし、私たちはまだホワイトホールの存在も確認できていないため、この方法も採用することができません。

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そこで科学者たちが考え出したのが、ブラックホールに荷電させるといった方法です。電荷を帯びたブラックホールの中は、通常であれば点で存在している特異点が、ひずんで伸びてしまうのです。

そしてそのひずみが、他の電荷を帯びたブラックホールとの間の「架け橋」を形作ります。そしてこれこそが、私たちが生成を夢見るワームホールに他ならないということです。

しかし、このワームホールには2つの問題点があります。1つ目は、例に漏れず不安定であるということ。そのため、そこに何かを通そうとしたところで、ワームホール自身がばらばらになってしまうでしょう。

2つ目は、2つのブラックホールが持つ重力と電気の力により、両者が引き寄せられてしまうということです。両者が接近しすぎてしまえば、そこにはただ1つの大きなブラックホールが残されるのみとなってしまいます。

「宇宙ひも」がすべてを解決

つまり、2つのブラックホール間の距離を適度に離しておき、安定させなければこのワームホールの問題は解決しないわけですが、その解決策として「宇宙ひも」を用いる方法が提唱されています。

宇宙ひもとは、時空の理論上の「欠陥」のことであり、水が氷になる際の亀裂にたとえられるものです。これは非常にエキゾチックな物質であり、幅は陽子の直径ほどしかないにもかかわらず、その長さは軽々とエベレストを超えてしまいます。

そして、宇宙ひもは極度に張り詰めた状態にあり、その状態から変化しようとしません。つまり、その宇宙ひもに2つのブラックホールを結びつけることができれば、両者が近づくことなく、離れた距離で固定されるということになります。

すなわち、宇宙ひもの両端が「綱引き」をおこなうような状態となり、その結果としてブラックホールが引き合おうとする力を相殺することができるのです。

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しかし、たとえ宇宙ひもが「ブラックホール間の距離」といった1つの問題を解決したとしても、さらに根本的な問題である「ワームホール自身の不安定さ」を解決したことにはなりません。

そこで利用されるのが、もう1つの宇宙ひもです。その宇宙ひもでもワームホールをつなぎますが、ここではそれだけでなく、2つのブラックホールの間の通常の宇宙空間に宇宙ひもの輪を作り出します。

宇宙ひもは輪によって閉じられると、非常に激しく、小刻みに振動します。そしてこの振動が、「負の質量」を持つ物質と同じような効果を発揮することで、ワームホールの崩壊を防いでくれることが期待できるのです。

少し複雑な構造となっているこのワームホールですが、発表された研究の中では、その生成方法がステップ・バイ・ステップで示されています。

しかし、当然ながらこの方法が完璧であるかどうかは実際に作ってみないと分かりません。そして何よりも、現段階では観測すら困難とされている宇宙ひもを、どのようにして用意するのかといった方法論までは語られていません。

この研究が、夢のワームホール完成に近づくための貴重な1歩であったことは否定しようがありませんが、まだまだ「理論」と「現実」の間には非常に大きな隔たりが存在しているようです。

鏡像の並行世界、ミラーワールドを証明する実験! この世界裏設定多すぎ…

reference: livescience / written by なかしー

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