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お手軽?「ワームホールの作り方」を示す研究が発表される

2021.01.28 Thursday

2019.09.01 Sunday

Credit: depositphotos

Point

■宇宙空間の2点間を結ぶ「ワームホール」の生成方法を示した研究が発表される

■電荷を帯びた2つのブラックホールが、それぞれの地点をつなぐ架け橋としてワームホールとなりうる

■生成には「宇宙ひも」も不可欠であり、宇宙ひもを2通りの方法で利用することで、ワームホールを安定させることができる

宇宙の2地点間のショートカットであるワームホール。気が遠くなるほどに広い宇宙空間の中に、ワープ装置ともいえるこのワームホールを自在に作成することができればどんなにいいことでしょう。

しかしその実現は技術的に難しく、たとえ完成させたとしても、それは非常に不安定なものになってしまいます。そこに光子を1つ落としてみたとしても、光よりも速い速度でワームホール自体が崩壊してしまうことでしょう。

しかし、「arXiv」に掲載されたカリフォルニア大学の新たな研究において、安定したワームホールの生成方法が示されました。そのワームホールも崩壊してしまうことには変わりありませんが、その速度はメッセージを伝えるのには十分な遅さであり、物がワームホールを通過できる可能性さえも示唆されているのです。

Traversable Asymptotically Flat Wormholes with Short Transit Times

https://arxiv.org/abs/1908.03273

2つのブラックホールが材料

ワームホールを壊れにくくすることは、理論上は簡単です。そこに「負の質量」を持つ物質があれば、ワームホールを通過しようとする物の邪魔を防ぐ働きをしてくれるため、物質がワームホールを通り抜けることが可能になります。

しかし、私たちはまだ「負の質量」を持つ物質の生成方法を確立できていないため、別のプランが必要となります。

ワームホールは、すべての物質が脱出不可能なブラックホールと、すべての物質が侵入不可能なホワイトホールを結ぶものと考えられており、これら2つの不思議な物体を組み合わせることで、ワームホールを作り出すことができるかもしれません。

しかし、私たちはまだホワイトホールの存在も確認できていないため、この方法も採用することができません。

Credit: pixabay

そこで科学者たちが考え出したのが、ブラックホールに荷電させるといった方法です。電荷を帯びたブラックホールの中は、通常であれば点で存在している特異点が、ひずんで伸びてしまうのです。

そしてそのひずみが、他の電荷を帯びたブラックホールとの間の「架け橋」を形作ります。そしてこれこそが、私たちが生成を夢見るワームホールに他ならないということです。

しかし、このワームホールには2つの問題点があります。1つ目は、例に漏れず不安定であるということ。そのため、そこに何かを通そうとしたところで、ワームホール自身がばらばらになってしまうでしょう。

2つ目は、2つのブラックホールが持つ重力と電気の力により、両者が引き寄せられてしまうということです。両者が接近しすぎてしまえば、そこにはただ1つの大きなブラックホールが残されるのみとなってしまいます。

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