充電できる「鉄イオン電池」の開発に世界で初めて成功

technology 2019/08/29
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Point

■充電可能な鉄イオン電池が開発された

■現在普及しているリチウムイオン電池には、安全面・環境面でさまざまな課題がある

■鉄イオンの酸化還元電位はリチウムイオンを上回り、鉄は充電中にデンドライト状にならずショートしにくい

いくつ解ける? 基本的な「科学知識検定」にチャレンジ

リチウム電池に代わる、新時代の電池の登場です。

インド工科大学マドラス校の研究チームが、リチウムイオン電池に代わる充電可能な「鉄イオン電池」の開発に成功しました。

詳細は8月2日付けで「Chemical Communications」に掲載されています。

A room temperature multivalent rechargeable iron ion battery with an ether based electrolyte: a new type of post-lithium ion battery
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2019/cc/c9cc04610k#!divAbstract

リチウムイオン電池が抱える多くの問題

リチウムは環境への負荷は高いものの、電気自動車をはじめ、スマートフォン、ガラスセラミック、エアバッグの作動にいたるまでさまざまな製品に使用されており、まさに引っ張りだこの状態です。

採掘自体にはさほど費用は掛からないリチウムですが、別の大きな問題点が存在します。

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海水中のリチウムに到達するために、その周囲を覆う海水を蒸発させる必要があるのです。1トンのリチウムを得るために必要な水の量は、15,000トン以上にも上ります。さらに、岩から掘り出すためには、環境に有害な化学物質を使用しなければなりません。

このようにリチウムは「環境に優しい製品を作るために、環境に負荷を掛ける」という致命的ジレンマを抱えています。リチウムイオン電池に代わる新たな電池の開発が急がれる中、研究チームはこれまで見落とされてきた「鉄」に白羽の矢を立てました。

効率も安全性もリチウムイオン電池を上回る

研究チームによると、鉄はリチウムに似た物理化学的特性を持つだけでなく、鉄イオンの酸化還元電位はリチウムイオンを上回り、鉄イオンのイオン半径はリチウムイオンと肩を並べる程度に小さいというメリットが存在します。酸化還元電位とは、ある物質が電子を放出したり、受け取ったりする際に発生する電位のことです。

研究チームが開発した鉄イオン電池は、管理された条件下で150サイクルの充電と放電に耐えました。また、50サイクル後も54%の容量を保持し、見事な安定性を示しました。

リチウムと違って鉄は、充電中にデンドライト状(金属などの溶融液が凝固して生じる樹状結晶)にならず、安定して保たれるため、ショートしにくい性質を持ちます。このため、コストを大幅に抑え、より安全に取り扱えるようになるのです。

Credit: Chemical Communications/Ajay Piriya Vijaya Kumar Saroja, Sai Smruti Samantaray and Ramaprabhu Sundara

研究チームは、次のステップとして、鉄イオン電池のパフォーマンスのさらなる改善を計画しています。課題の1つが、陰極(外部の負荷から正電荷が戻る方の電極)の問題です。電池の中には陰極の入れ替えが可能なものも存在しますが、鉄の場合はそれができません。

研究チームは現在、陰極に結びつく鉄イオンの量を増やすため、さまざまな金属酸化物を使って試作を繰り返してているところです。より多くの鉄イオンを陰極に結びつけることができれば、より多くのエネルギーを電池内に蓄えることができ、パフォーマンスの上昇が期待できます。

リチウムイオン電池に代わる次世代の電池を追い求める国際競争は、ますます激化していきそうです。

「海水と淡水が混じる場所」でエネルギーを生む電池が開発される

reference: popularmechanics / written by まりえってぃ

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