虫歯も怖くない? 歯のエナメル質を「再生」する技術の開発に成功

science_technology 2019/09/04
Credit: Zhejiang University/Science Advances

Point

■トリエチルアミンを用いて、小さなリン酸カルシウムのクラスターを作ることで歯のエナメル質を再生する方法が開発された

■クラスターは時間を掛けて結晶化し、下の層の構造物の上に積み重なるようにして継続的に結晶を形成する

■このクラスターで補修されたエナメル質は、自然のエナメル質と遜色ない強度と耐性を備える

これで虫歯も怖くない!?

エナメル質はヒトの身体の中でもっとも硬い組織ですが、自己再生することができません。その複雑な構造を再現し、エナメル質を実質的に「蘇生」するメソッドが発見されました。

発見したのは、中国の浙江大学の研究チーム。論文は、雑誌「Science Advances」に掲載されています。

Repair of tooth enamel by a biomimetic mineralization frontier ensuring epitaxial growth
https://advances.sciencemag.org/content/5/8/eaaw9569

極小サイズのリン酸カルシウムのクラスター

2016年のデータでは、世界に永久歯に虫歯を持つ人は24億人、乳歯に虫歯を持つ子供は4億8,600万人といわれています。

損傷を負ったエナメル質を修復する材料として、現在はレジン・金属合金・アマルガム・セラミックなどが用いられていますが、これらはどれも理想的な材質とは言えません。たとえばレジンは、エナメル質に上手く接着しないため、施術から5年ほど経過すると徐々に隙間が出来てきます。

数年前に入れた歯の詰め物が、キャラメルを噛んでいたらポロリ…という経験を持つ人も多いでしょう。

Credit: pixabay

研究者たちは、さまざまな手法を用いてこの問題を解決しようと試みてきましたが、そのたびに「自然の歯が持つエナメル質の複雑な構造を再現することは難しい」というハードルに直面してきました。

研究チームは今回、エナメル質の主な構成成分である直径わずか1.5ナノメートルほどのリン酸カルシウムのクラスターを作ることで、この難題を打開。これは従来とは比べ物にならないほどの小ささです。

クラスターは、トリエチルアミンという物質を使って作られます。この物質はクラスターが塊になるのを防ぐ効果があり、費用が安価なだけでなく大規模な調合が可能なので、多くの人が必要とする歯の治療にはうってつけです。

48時間以内に厚さ約2.7マイクロメートルの結晶層を形成

研究チームは、自然のエナメル質に似た結晶性ヒドロキシアパタイトを使い、このクラスターを試しました。

その結果、クラスターが結晶性ヒドロキシアパタイトに融合し、かつてないほどきつく密集した層を形成することが判明。新しい層は時間を掛けて結晶化し、単に多くの結晶領域を形成するのではなく、下の層の構造物の上に積み重なるようにして継続的に結晶を形成していました。

その後、これらのクラスターを酸に晒したヒトの歯に付着したところ、徐々に結晶層が形成され、48時間以内には厚さ約2.7マイクロメートルの結晶層が形成されました。この結晶層は、その下にある自然のエナメル質と同じ、魚の鱗状の複雑な構造を持っていました。

Credit: Zhejiang University/Science Advances

補修されたエナメル質は、損傷を受けていない自然のエナメル質と遜色ない強度と耐性を備えていました。

「そんな素晴らしい治療法、早く歯科で導入してほしい!」と思ってしまいますが、実用化にはあと数年を要するのだそう。特に、虫歯の箇所を埋めるため、厚さ0.5〜2ミリほどの結晶層を作れるようになることが大きな課題の1つです。

研究チームは、この課題を解決すべく、現在さらなる研究を進めているところです。今後1〜2年以内に、ヒト臨床試験が予定されています。

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reference: theguardian / written by まりえってぃ

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