遺伝子編集による「アルビノトカゲ」の作成に世界初の成功

animals_plants 2019/09/09
遺伝子編集で生み出されたアルビノトカゲ / Credit:Doug Menke

Point

■米ジョージア大学の研究チームが、遺伝子編集を行ったアルビノトカゲを作成

■爬虫類の遺伝子編集は非常に困難で、成功例は世界初

■アルビノの人々が持つ、視覚障害の研究のためのモデル組織として使用できる

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カリブの植物相では、アノールトカゲ科と呼ばれる、人間の指ほどの大きさの小型爬虫類が飛び回っています。

種類が豊富なことから、アノールトカゲは爬虫類の発達と進化を調べる上で、重要な科学的モデルとして扱われてきました。それにもかかわらず、このトカゲの多様性の背後にある遺伝学を探るためのツールが存在せず、解明は困難を極めています。

こうした中、米ジョージア大学の研究チームが、遺伝子編集を行ったトカゲを造ることに世界で初めて成功しました。これは、他の生物の発達と進化についての謎の解明に、トカゲを利用するための大きな一歩になるはずです。

研究チームがCRISPRという遺伝子編集技術を使って造ったのは、アルビノのトカゲ。アルビノの人は視覚障害を持つ場合が多いため、これらのトカゲを利用して、アルビノが目の発達に影響する仕組みを理解することができるのではないかと、期待を寄せています。

論文は、雑誌「Cell Reports」に掲載されています。

CRISPR-Cas9 Gene Editing in Lizards through Microinjection of Unfertilized Oocytes
https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(19)31005-8

難しい爬虫類の遺伝子編集、突破口は孵化前の卵

これまで、ヒトを含む動物の遺伝子編集は行われたことがあります。ですが、爬虫類の遺伝子編集はそう単純ではなく、実施例がこれまでありませんでした。

遺伝子編集を施した哺乳動物をつくる場合、孵化直後の胚が細胞分裂を始める前にCRISPRを注入します。ところが爬虫類の場合、メスの体内に精子が長期間保存されるため、孵化が始まる時期を予測できないという問題があるのです。

この問題を解くため、研究チームは新しいアプローチを開発しました。トカゲの体内でいつ孵化が始まるかを予測する代わりに、孵化前の卵を使うことにしたのです。未だメスの卵巣内にある孵化前の卵にCRISPRが注入されました。

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Credit: depositphotos

この方法は予想以上の成功を収めました。

研究チームは、皮膚、目、毛髪の色素を作り出す働きを持つ酵素の遺伝子を編集。この遺伝子の働きを止めたところ、色素は消え、アルビノのトカゲが誕生したのです。

研究チームは初め、孵化前の卵にCRSPRを注入したため、母親から引き継いだDNAの遺伝子編集のみが行われるものと予測していました。ところが実際CRISPRによって編集されたのは、母親と父親の両方のDNAでした。

アルビノのトカゲは、アルビノの人々が持つ視覚障害の研究のためのモデル組織として使用することができます。アルビノの人は中心窩と呼ばれる目のくぼみが欠落しているか、未発達なために、視力が弱いことがあるのです。

ネズミには中心窩がありませんが、昆虫を捕まえるために高い視力を必要とするトカゲは中心窩を持っています。

今回の成功は、アルビノの研究だけにとどまらず、その他の遺伝病の遺伝学的ルーツの解明にも役立つ可能性を秘めています。アノールトカゲの多様性を支える遺伝子を理解することは、ヒトのDNA変異が先天異常に繋がる仕組みを理解することに通じるかもしれません。

1万種以上が存在すると言われている爬虫類。私たちに多くのことを教えてくれる存在なのかもしれません。

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reference: discovermagazine / written by まりえってぃ

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