「42を3つの立法数の和で表わせ」長年未解決だった数学の難問が解明される

brain 2019/09/11
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Point

■ブリストル大学の数学者が、スーパーコンピューターを用いて「42を3つの立方数(3乗した数)の和で表現する解」を発見した

■これは64年間も未解決となっていた問題の解で、それは1016(1京)の桁にまで及ぶ巨大な数となった

■同研究者は今年の3月に33の場合の解を発見しており、1年間に2つの未解決問題を解決したことになる

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数学の世界には、一般の人々には到底理解できない難問が多数存在しています。

その1つが、今回話題になっている「1から100までの自然数を3つの立方数の和で表現する」という問題です。

「なんでわざわざ解くの?」のという問題はとりあえず置いておくとして、この問題には実に64年間も未解決となっている解が存在します

それが「33」と「42」になる場合の3つの立方数の組み合わせです。

英国ブリストル大学のAndrew Booker氏は、33の解については2019年3月に報告していますが、それからほんの半年ほどの時間で、続けて42の解も発見したのです。

ちなみに答えが33となる3つの立方数の組み合わせの解は、

33 = (8866兆1289億7528万7528)3+(-8778兆4054億4286万2239)3+(-2736兆1114億6880万7040)3

となるそうです。42の場合はこれよりさらに巨大な数字になりました。この数字を見ると、今まで発見できなかったのも無理はないと理解できるでしょう。

この飛んでもない「42の解」発見のニュースについては、9月6日付けでブリストル大学よりプレスリリースが発表されています。

Sum of three cubes for 42 finally solved – using real life planetary computer
https://www.bristol.ac.uk/news/2019/september/sum-of-three-cubes-.html

3つのキューブで自然数を表現する

Credit:Lucy Reading-Ikkanda/Quanta Magazine

聞いただけでは意味が取りづらいこの問題は、もともとは1954年にケンブリッジ大学より提示されました。

問題の内容を簡潔に記述すると「n = a3+ b3+ c3 (nは1から100までの自然数)を満たす整数abcの組み合わせはなんでしょう?」となります。

基本的に数字の3乗というのは、立方体の体積を表す数となるので、これを立方数とかキューブと呼びます。

この問題を解くことに何の意味があるのか、というのは数学者でないと理解しづらいものですが、これはディオファントス問題と呼ばれるものの1つで、ある方程式の整数解を求める数論では非常に重要なテーマの1つです。

ディオファントス方程式はたいていは解があるかどうかを事前に判断する方法がありません。そのため、方程式を満たす解が存在するかどうか調べること自体が研究テーマになるのです。

有名な『フェルマーの最終定理』もこのディオファントス方程式の仲間になります。(フェルマーの最終定理について知りたい人は、こちらの記事を参照してください)

この問題は2000年に、ほとんどの解が発見されました。しかし、nが33と42の場合だけは、2019年になった時点でも解が見つかっていなかったのです。

(ちなみに、この問題で数字を9で割ったとき余りが4または5になる数には解が存在しません)

何がそんなに難しいのか?

Credit:pixabay

この問題は、ちょっと数字が異なるだけで難易度が激変します。そこがもっとも難しい問題になります。

例えば、33や42を3つの立方数で求める場合、上に記載した様な飛んでもない数になるのですが、一方で、43の場合を考えると、その答えは、「43 = 23+ 23+ 33」になります。え? 超簡単となりますよね。

基本的にこうした問題は、実際数を当てはめて式が成立するかどうか、組み合わせを調べていくしかありません。

43の場合は、手で計算していても答えは出せそうです。そして、33はスーパーコンピューターで3週間近く計算し続けてやっと答えを見つけ出すことができました

ところが42の場合は、スーパーコンピューターを使って計算しても、一向に答えが見つからなかったのです。

33までの計算では、立方数の組み合わせは1015(1000兆)の桁までの数が調べられていました。これは42の解がそれより大きい数であるか、もしくは解が存在しないかのどちらかということになります。

そこで今回の研究では、この解の調査を1016(1京の桁)まで拡張して行ったのです。

アルゴリズムの研究

Credit:depositphotos

そこまで調査の桁数を拡張して、やっとその答えは発見されました。答えが42となる立方数の組み合わせは次の通りです。

42 = (-8538738812075974)3+(8435758145817515)3+(12602123297335631)3

これは見つかるわけがないという、飛んでもない数の答えです。

今回のこの計算には世界中の未使用のコンピューターを並列処理するチャリティエンジンが利用されました。50万台以上の家庭用PCを使って合計で100万時間(114年)以上を掛けて計算されたといいます。まさに惑星スーパーコンピューターです。

コンピューターの並列処理というのは、大量の計算を複数のコンピューターに分けて同時に計算することを言います。

人の作業に例えるなら、例えば千羽鶴を1人で1羽1分掛けて折った場合、1000工程1000分という時間を要しますが、1000人で分担した場合、1人辺りの作業は1工程1分で済みます。

処理能力が低い家庭用PCだとしても、適切に作業を分散させれば膨大な計算が短時間で行えるのです。

これだけの計算を行う場合、重要となるのが適切なアルゴリズムの設計です。Booker氏の最大の貢献はこのアルゴリズムの設計にあるのです。

Booker氏は答えが導けたことに非常に安心したと答えています。なぜなら、この計算は1ヶ月続けても、1世紀続けても解が導けなかった可能性もあったからです。

解が存在するかわからない問題に挑戦することが、プロの数学者のもっとも困難ところなのです。

今回、この問題の1から100までの自然数は解決されました。しかし、これが1から1000までの範囲に拡張した場合、未解決の数は「114165390579627633732906921975」の10も残っているといいます。

今後は、これらの解決を目指していくことになるのだそうです。数学の世界は、ほんとうに果てしないですね…。

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reference:sciencealert,quantamagazine/ written by KAIN

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