超高速度星は「幻の中間質量ブラックホール」に弾き飛ばされたかもしれない

space 2019/09/12
Heavy black hole.

Point

■超高速度星「PG 1610+062」は、天の川銀河外縁のハローに位置し、秒速約540kmで移動する

■超高速度星は、連星が銀河中心にある超大質量ブラックホールに接近することで、弾き飛ばされた片方の恒星だとされる

■しかし、PG 1610+062の放出は、超大質量ブラックホールではなく、まだ発見されていない中間質量ブラックホールが原因の可能性がある

超高速度星「PG 1610+062」の分析が、思わぬ大発見を呼ぶかもしれません。

天の川銀河の外縁部「ハロー」に位置するこの星は、他の超高速度星と同様、銀河中心部にある「超大質量ブラックホール」の影響で弾き出されたと考えられていました。

ところが、フリードリヒ・アレクサンダー大学(独)の研究によると、PG 1610+062の出発点は銀河中心部ではなく、銀河円盤部の「いて・りゅうこつ腕」だったのです。

Credit:astro-dic.jp

その結果、PG 1610+062をハローまで飛ばした原因として、まだ発見されていない「中間質量ブラックホール」の存在が示唆されています。

研究の詳細は、8月6日付けで「Astronomy & Astrophysics」に掲載されました。

PG 1610+062: a runaway B star challenging classical ejection mechanisms
https://www.aanda.org/articles/aa/abs/2019/08/aa35429-19/aa35429-19.html

超高速度星の原因は「超大質量ブラックホール」にあり

超高速度星とは、毎秒数百kmを超えるハイスピードで宇宙を移動している天体で、その原因は、天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」であると言われています。

1988年には、太陽の約400万倍もの質量を持つ「いて座A*」に1組の連星が接近した場合のシミュレーションが実施されました。すると、連星の片方はブラックホールにより破壊されましたが、もう片方の星は、エネルギーを得て急激に加速され、弾き飛ばされたのです。

銀河を飛び出す超高速度星/Credit:keckobservatory

そのスピードたるや、銀河系を脱出できるほどであり、超高速度星の中には、月と地球の間を10分以内で通過することができるのだそう。現に、PG 1610+062の速度も秒速540±50kmで飛翔しています。

ところが、PG 1610+062を詳しく調べてみると、予想外の事実が浮かび上がってきたのです。

原因は仮説上の存在「中間質量ブラックホール」だった⁈

フリードリヒ・アレクサンダー大学の研究チームは、ケック天文台(ハワイ)の望遠鏡や欧州宇宙機関(ESA)の「ガイア望遠鏡」を用いて、PG 1610+062の詳細なデータを集めました。

その結果、太陽質量の半分程度の質量を持つ古い星だと思われていたPG 1610+062が、実は太陽の5倍の質量を誇る若い星であることが判明したのです。さらに重要なことは、その放出地点でした。

なんとPG 1610+062の放出点は、銀河中心部の「いて座A*」ではなく、銀河円盤部に位置する「いて・りゅうこつ腕」付近だったのです。ということは、PG 1610+062は、超大質量ブラックホールではない他の何かによって弾き飛ばされたと仮定されます。

Credit:depositphoto

そこでアンドレアス・イルガング研究主任と研究チームは、「円盤部にある中間質量ブラックホールが原因ではないか」という結論を出しています。

中間質量ブラックホールとは、その名の通り、普通の星が超新星爆発を起こして出来る「恒星ブラックホール」と銀河の中心にあるような「超大質量ブラックホール」の中間の質量を持つ天体です。

実際にはまだ見つかっていない天体ですが、仮説では、銀河円盤部の比較的若い星団にあるとされているので可能性は高いと言います。超高速度星の探求が、まだ見ぬ天体の発見に繋がるかもしれません。

 

reference: keckobservatorysorae / written by くらのすけ

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