ブラックホールが奏でる「和音」の検出に成功

space 2019/09/17
Credit:LIGO/Caltech/MIT/Sonoma State (Aurore Simonnet)

Point

■2つのブラックホールの衝突から、重力波の和音と呼ぶべきものを検出することに成功した

■現代の観測技術では、2つの異なる成分の音(重力波)を識別することは不可能と考えられていたため、今回の成功は快挙といえる

■これにより、融合後のブラックホールの質量とスピンを測定できる可能性がある

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金属を強く打つと、トライアングルや鐘のように金属の振動が共鳴して、長い音色を奏でます。実は2つのブラックホールが衝突して融合したときにも、これと似たようなことが起こります。

それは音波ではなく重力波ですが、「レーザー干渉計重力波観測所(LIGO)」の施設ではこのブラックホールが奏でる音を検出することができるのです。

これは和音のように、複数の周波数が混ざりあって伝わってきます。今回の研究は、和音を調べる倍音の理論を使って、この重力波から異なる成分の重力波を2つ検出することに成功したというのです。

これの何がすごいかと言うと、この検出方法により、ブラックホールの持つ角運動量(自転速度)や質量を測定することができたのです。

この研究に関する論文は、マサチューセッツ工科大学カブリ物理学宇宙研究所の物理学者を筆頭とした研究チームより発表され、9月12日付けで天文ジャーナル「PHYSICAL REVIEW LETTERS」に掲載されています。

響き合うブラックホール

Credit:ブラックホール波シミュレーション/LIGO Lab Caltech:MIT

2つのブラックホールがもつれ合って互いの重力により回転し始めると、そこから重力波の波紋が発生します。そして2つのブラックホールが衝突したとき、非常に強い重力波のピークが発生するのです。

重力波は不協和音と同じく、複数の周波数成分が絡まりあった状態になっています

ブラックホール衝突の瞬間には、短時間に弱い重力波の発生するリングダウンと呼ばれる現象が起こると考えられていましたが、重力波のピークに隠れてしまい、検出は無理だと考えられていました。

Credit:LIGO Orrery/SXS Collaboration

これまでの検出では、ブラックホール衝突の重力波からは、一つの周波数の成分しか検出することができませんでした。しかし今回の研究チームは、そのリングダウンを音響の倍音の理論を利用することで特定できるのではないかと考え、分析を行ったのです。

音楽では、音の周波数が整数倍になったとき調和して規則的に混じり合った波形を作ります。この音の考え方を元に、重力波の成分を分けて識別しようと試みたのです。

ブラックホールには毛が無い!?

一般相対性理論によれば、この絡まりあった重力波にはブラックホールの質量とスピン(角運動量:自転速度)に関する情報が含まれているはずだと予測されています。

元々天体は、物質の化学的組成、温度、形などの物理的な性質を多数持っています。しかし、ブラックホールになったとき、こうした性質の殆どは消え去ってしまい、質量と自転(角運動量)、電荷という3つの情報しか持たない状態になってしまいます

このことをアメリカの物理学者ホイーラーは「ブラックホールには毛が(3本しか)ない」と表現しました。

なぜ髪に例えた? と言いたくなりますが、このホイーラーの発言がきっかけで、ブラックホールが物理的性質の多くを失うことは「ブラックホール無毛定理(または脱毛定理)」と呼ばれています。毛が3本ということで、日本では「オバQ定理」と呼びたがる人も多いようです。

これは逆に言うと、まったく観測が不可能に見え、あらゆる情報が事象の地平面へと消え去っているように見えるブラックホールでも、重力波を測定することでその質量や自転速度を計測することが可能ということを示しています。

もちろんこれは、一般相対性理論から導かれる予想でしかありませんでした。

しかし、今回の研究は、ブラックホール衝突による重力波から異なる成分を識別することにより、新しく生まれたブラックホールの質量とスピンを測定することができ、ブラックホール無毛定理が正しいことも証明できたのです。

下の動画は、ブラックホールの重力波を音に変換した動画です。

ブラックホールの放つ重力波を音に直して解析するなんて、なんとも天文学はロマンチックですね。

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【編集注 2019.09.18 15:20】
論文筆頭著者の所属研究所名に誤りがあったため、修正して再送いたします。
reference:sciencealert,Phys/ written by KAIN

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