人生の有益な判断には、数学に対する「理解と自信」が重要と判明

psychology 2019/09/22
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Point

■自身の抱える健康と経済の問題について、基礎的な数学スキルが欠如しているために効果的な判断を下せない人たちが世の中には大勢存在している

■しかし実は、数学のスキル以外にも自分の数学的な能力に自信を持っていることも重要であることが明らかとなった

■自分の数学的な能力に自信を持てない人たちは、心理学的実験の結果、自身に不利な決断を下す傾向が強まった

みなさんは自分の数学的な能力にどの程度自信を持っているでしょうか?

クレジットカードの回数払いや、年間の保険料と控除額など、私達が自分に有益な判断を下すために数学の知識を必要となる場面は、日常の中に意外とたくさん潜んでいます。

今回、こうした数の理解力と、選択や決断といったものの関係性を心理学的側面から調査した研究が発表されました。

それによると、単純に数学的なスキルが高い、低いだけではなく、自己の能力に対する信頼度も、効果的な判断に重要な意味を持つことが示唆されたのです。

この研究に関する論文は、米オレゴン大学の研究チームより発表され、9月9日付けで科学専門誌の米国科学アカデミー紀要「PANS」に掲載されています。

Despite high objective numeracy, lower numeric confidence relates to worse financial and medical outcomes
https://www.pnas.org/content/early/2019/09/05/1903126116

数に対する理解力

心理学の研究者たちが行った、簡単な数学のテストがあります。あなたはこの問題にすんなり回答ができるでしょうか?

『小さな町の人口1,000人のうち、500人が聖歌隊のメンバーです。聖歌隊500人のメンバーのうち、100人が男性です。聖歌隊にいない500人の住民のうち、300人は男性です。無作為に選ばれた男性が聖歌隊のメンバーである確率はどれくらいでしょうか?』

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こうした数を扱った問題にすんなりと上手く答えられる人は、それができない人とは異なる決定を下す傾向があるといいます。すんなり回答できた人々は、数字のそれぞれが何を意味していて、どう影響するか明確に理解することができるからです。

この問題の場合、重要なのは男性に絞った数についてのみ質問されているということです。街の人口1000人だとか聖歌隊が500人いるという情報は、この問題では無意味なものとなります。聖歌隊でない男性は街に300人であり、聖歌隊メンバーの男性は100人です。そうなると街に住む男性の合計は400人となり、この中から無作為に選んだ人物が、聖歌隊メンバーである確率は、「100/400」ということになります。

つまり正解は25%です。

こうした順序を立てて、すんなりと回答に行き着けない人の場合、何かの決定において感情に依存した決定を行う場面が多くなり、結果不利な判断をしてしまう傾向も強くなると言います。

これはまでは、こうした問題が単に数学的な能力のみに依存して発生していると考えられてきました。

しかし、最新の研究では、少し違った事実が明らかになっています。

数学の能力と自信の関係

人が何かを決断する場合、数学的な合理性の他に、自身の考えに自信が持てるかどうかが非常に重要となってきます。

数学の成績は良いスコアを出すにも関わらず、自分の数学的能力に自信が持てない人の場合、結局は決断に数学的な合理性が反映されない場合があるためです。

研究ではこのことを示すために、「数学スコアが良く、自分の数学能力に自信がある人」、「数学スコアは良いが、自分の数学能力に自信のない人」、「数学スコアは悪いが、自身の数学能力には自信がある人」、を調査しました。

自分の数学能力の評価について、例えば「あなたは分数の計算は得意ですか?」というような質問項目を備えた、アンケートによって調査を行っています。

1つ目の調査では、数学的な能力や自信の有無とその人の経済状況の関係性を調べています

この経済状況というのは、投資などの運用状況、クレジットカードの利用状況、ローンの有無などから総合的に評価して、良いか悪いかを判断しています。

その結果、「数学スコアが良く、自分の数学能力に自信がある人」で経済状況の良い人は82%でした。そして、「数学スコアは良いが、自分の数学能力に自信のない人」は経済状況の良い人が78%となったのです。

この4%の差はごく僅かなものに見えます。しかし、実は年収5万ドル(約540万円)の人と、年収14万4千ドル(約1500万円)の人の差は4%なのです。これは、この調査による経済状況の差と非常に近似しています。

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2つ目の調査は、全身性エリテマトーデス(SLE)という難病の患者に対して行われました。この病気は薬物治療により症状をある程度抑えることが可能ですが、必要とされる薬の種類が多く、用法・用量の管理が難しい外用薬を用いたり、保険適用された薬とそうでないものが含まれるなど、症状をコントロールするのがとても難しい面を持っています。

この患者に対して、調査を行ったところ「数学スコアが良く、自分の数学能力に自信がある人」は症状が悪化して追加治療が必要になったパターンが7%でしたが、「数学スコアは悪いが、自身の数学能力には自信がある人」では症状の悪化が44%にものぼりました

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これは単に数学能力に自信を持てば良いということでなく、実際の数学能力と数学能力への自信が一致していないと、より不利な決断を下しやすいことを示しています。

数学的な能力が無いにも関わらず、自分の判断に自信を持つ人は、適切なアドバイスを受け入れることができず、結果的に誤った判断を繰り返す状況になるのです。

数学とか勉強する必要あるの?

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たびたび子どもたちの間から上がるのが、数学の勉強って意味あるの? という疑問です。もちろん大人にもこうした疑問を持つ人は多いでしょう。

しかし、こうした研究は数学が人生の重要な判断を下す際に、非常に大きな役割を果たしていることを示しています。

クレジットカードの利用も、結局は正しい計算ができなければ大きな不利益を被ることになります。健康面においても、現在の保険制度を正しく理解して利用するために、数学的な能力が必要となります。

また、ただなんとなく勉強をこなすのではなく、はっきりと自分の能力に自信が持てるように勉強することが重要であることも、今回の研究が示しています。

数学を勉強するだけじゃなくて自信を持てとは、これまた難しい要求ですが、豊かな人生を送るためには、知識を得るだけではダメなようです。これは教育を施す側にも大きな責任が伴う、というお話なのかも知れません。

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reference:theconversation/ written by KAIN

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