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500人を殺せるヒ素濃度の湖でも元気ハツラツな線虫を発見

2021.01.27 Wednesday

2019.09.27 Friday

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Credit: Caltech

Point

■極限環境のモノ湖に生息する新種の線虫「Auanema種」が8種発見された

■ヒトの致死量の500倍もあるヒ素濃度を生き延び、子供をカンガルーのように体内に抱え込み、3つの性別を持つ

■過酷な環境と穏和な環境の両方に適応する遺伝的素因を備えている可能性がある

猛毒のはずのヒ素を呼吸して生きる細菌を太平洋で発見

カリフォルニア工科大学の研究チームが、カリフォルニア州モノ郡のモノ湖に生息する新種の線虫を発見しました。

この極限環境下でも元気いっぱいな線虫の環境適応能力が今、注目を集めています。

生物学者ポール・スターンバーグ氏らによる論文は、雑誌「Current Biology」に掲載されました。

Newly Identified Nematodes from Mono Lake Exhibit Extreme Arsenic Resistance
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(19)31040-1

子供を体内に抱え、性別は3つ! 極限環境を生き抜くツワモノたち

モノ湖は塩分濃度が海水の3倍と非常に高く、アルカリ性pHが10にも上る塩湖です。これまで、この極限環境での生存が確認されている生物はアルテミアアルカリミギワバエの2つだけでした。

モノ湖 / Credit: Wikimedia Commons/Ottofunk9

研究チームは今回、モノ湖の中とその周辺に生息する線虫の仲間8種を新たに発見。現時点では「Auanema種」と名付けられています。ヒトの致死量の500倍もあるヒ素濃度を生き延び、子供をカンガルーのように体内に抱え込み、3つの性別を持つとのこと。

線虫はオス、メス、両性具有という3つの性別を持つ生物です。卵と精子の両方を持ち、自家受精により数百という子孫を生むことができます。また有性生殖によって繁殖することを選ぶ場合は、遺伝子をシャッフルすることでオスの子孫を多く生むことも可能です。

ただし自家受精の問題点は、子孫の遺伝的多様性が有性生殖に比べて欠けることです。

良好な環境下では、有性生殖による繁殖の方が理に叶っています。ですが、環境が悪化すると、線虫は自家生殖によって短期間で多くの子孫を生むことを選択します。こうして生まれた子孫が、生きるための新天地を求めて移動します。

こうした線虫の習性は、極限の環境で生きる生物がどのように生存政略をとっていったのかを示す鍵になるのです。

次ページ過酷な環境と穏和な環境の両方に適応する弾力性と柔軟性

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