つくれるの!? 電波望遠鏡をDIYした地質学者が話題に

fun 2019/10/06

天体観測に必要な電波望遠鏡の大きさは最低どれくらいかを知っていますか? 答えはなんと、わずか50cm。それこそ15,000円程度の費用で、天の川銀河の中心から伸びる複数の腕「スパイラル・アーム」を簡単に観察できちゃうんです。

銀河の「腕」のような部分がスパイラルアーム / Credit:depositphotos

今回は、IEEEの地質学者デイヴィッド・シュナイダー氏による「DIY電波望遠鏡」の製作秘話をご紹介します。

宇宙には予想外の「匂い」が漂っている

試行錯誤の末にたどり着いた材料

シュナイダー氏はまず手始めに、衛星テレビアンテナと、コーヒー豆の缶で作ったカンテナ(アマチュア無線やWi-Fiに用いられるアンテナ)を使った望遠鏡を試作しました。

ですが、このシンプルすぎるアプローチは失敗。氏がもっとも求めていた「21cm線」をキャッチするのには、缶のサイズが小さすぎたとのこと。

21cm線とは、中性水素原子のエネルギー状態の変化によって放射されるスペクトル線のことで、その波長が 21.106114cmであることからこの名が付けられています。この電波を用いれば、天の川銀河のスパイラルアームに存在する星間ガス雲の位置や動きを計測することができるんです。

天の川銀河の図。黄色が太陽系の位置で、茶色がオリオン腕。 / Credit: Wikimedia Commons/Surachit

続いてシュナイダー氏は、成功率が高いと言われているホーンアンテナ(ラッパのような形状の無線通信用アンテナ)に着目。電波望遠鏡関連のオンラインソースに掲載された事例を真似て、アルミメッキが施されたフォーム板の絶縁体を購入し、アンテナの材料にすることにしました。

ところがまたしても、表面のアルミメッキが電気を通している証拠はマルチメーターで確認できず…。シュナイダー氏は、アルミが電波に対する望ましい効果を発揮しているかどうかを今一度確かめるため、フォーム板で作った小さな箱の中に携帯電話を入れてみました。

もし電波が完全に遮断されていれば、外から電話を掛けても携帯電話は電波をキャッチしないはずですが、実際に電話を掛けてみると、普通に掛かってしまったようで…。

「多くの人がアルミメッキのフォーム板を使って成功しているというのに…なぜだ?」と納得できないシュナイダー氏。フォーム版をさっさと打ち捨て、今度は幅15センチメートルの防水用アルミテープを1ロール購入しました。

ホーンアンテナの開き口の大きさはテープの幅から決め、4つの面の長さはテープ全体の長さ3メートルを4で割った75cmと決めました。ハサミで切った防水用アルミテープを、同じくアルミ製のHVACテープでつなぎ合わせ、アルミメッキではない通常のフォーム板を四角く切り取ったものを端に取り付けると、小型のホーンアンテナが完成しました。

Credit: David Schneider

導波管供給口と受信機も備えて…

また、塗料用シンナーが入っていた1ガロン缶を、ホーンアンテナの土台の導波管供給口として活用することに。これにより、中性水素線の周波数を1420メガヘルツ(12cm線の周波数)にぴったりと収めることができると考えたからです。

問題は、供給口の針、つまり導波管内部で信号を拾って望遠鏡の受信機にそれを伝えるパーツの作り方でした。多くのチュートリアルで、針の長さは波長の4分の1にすべきだという情報を入手したシュナイダー氏。針の長さはすぐに53ミリと決まりました。

Credit: David Schneider

ところが、ここで対象となる波長は21センチではなく、導波管内波長と呼ばれるものであることが判明。すんでのところで針の長さを68ミリに修正し、N型同軸バルクヘッドコネクタとN-SMA変換アダプタを取り付ける穴をドリルで空けました。

受信機については、TVチューナーとHDSDRと呼ばれるソフトウェア無線のアプリケーションを含んだUSBドングルを利用することに。このUSBドングルは、低ノイズアンプと1420メガヘルツに集約した表面弾性波フィルターを備えています。ジュナイダー氏は、ホーンアンテナの隣の地面に、USB延長コードでコンピュータに接続したUSBドングルを設置しました。

Credit: David Schneider

お待ちかねの初観測!

さて、こうしてようやく完成した電波望遠鏡を使って、いよいよ初観測です!

Credit: David Schneider

初めは中性水素線をかすかにしか観察できなかったシュナイダー氏ですが、HDSDRの使い方に慣れるにつれ、信号を時間平均化し、スペクトル図表の焦点を当てるコツを身に着けます。

はくちょう座でもっとも明るい恒星デネブにアンテナを向けると、図表にははっきりと中性水素線の存在を示す「線」が現れました。アンテナをはくちょう座の方角へ向けると、天の川銀河のオリオン腕が発する1420.4メガヘルツに極めて近い強力な信号を受信することができます。

また、アンテナをカシオペア座の方角へ向ければ、中性水素線が1420.5に変化することが分かります。これは、わずかなドップラー効果がにより、これらの波長を発生させる物質が観測者である私たちに近づくほど相対的な速度を上げるためです。

Credit: David Schneider

このように、お手製の電波望遠鏡を用いれば、天の川銀河の中心から伸びる複数のスパイラルアームから発生するさまざまな周波数を持つ個別の信号をいくつも観察することが可能です。

Credit: David Schneider

「宇宙人からのメッセージを受け取りたい」と密かに願うそこのあなた。それは難しくても、電波望遠鏡をDIYすれば天の川銀河のマッピングは可能ですよ!15,000円の材料費は決して高すぎることはないはずです。

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reference: spectrum.ieee / written by まりえってぃ

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