「時間を逆行している」といわれるガンマ線バースト、その仕組みに新説が登場

space 2019/10/02
Credit: DESY, Science Communication Lab

Point

■ガンマ線バーストは、大量のガンマ線を噴出する宇宙でもっとも明るい天体現象

■このガンマ線バーストのパルスの時間変動を見ると、まるで時間を逆行しているように見えるが、原因は不明

■最新の研究はこれをチェレンコフ放射のような、媒質中で光が減速するために他粒子に追い抜かれる効果を用いて説明している

並行宇宙の存在を示す5つの理論

私達にとって時間とは、過去から未来に向けて一方向にだけ動く存在です。しかし、相対性理論によれば、光速を超えて運動する物体は時間を逆行することになるといいます。

もちろんそんなことは起こり得ないと考えられるので、この世界で光速を超えて運動する物質の存在は否定されています。

しかし、ガンマ線バーストと呼ばれる宇宙でもっとも強力な爆発現象では、その決まりを破って光速を超えた運動が起こっているのではないか、と指摘される問題が見つかっています。

最新の研究は、こうした問題について、相対性理論を守ったまま説明する方法を提案しています。

謎の多いガンマ線バースト現象ですが、その内側では一体何が起こっているのでしょうか?

この研究は、チャールストン大学、ミシガン工科大学の宇宙物理学者たちによって発表され、天文学と天体物理学を扱う査読付き学術雑誌「The Astrophysical Journal」に、9月23日付けで掲載されています。

Time-reversed Gamma-Ray Burst Light-curve Characteristics as Transitions between Subluminal and Superluminal Motion
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ab3bdf

宇宙でもっとも眩しい現象 ガンマ線バースト

ハッブル宇宙望遠鏡で見たM87の中心核から伸びるジェットの可視光イメージ。/Credit:J. A. Biretta et al.

ガンマ線バーストの最初の観測は、1967年の核実験監視衛星によるものだったと言われています。このとき衛星は、宇宙から一方向にそろって降り注ぐ大量のガンマ線を観測しました。

しかし、この現象は一瞬の出来事で、どこからガンマ線が来たのか具体的な位置を特定することはできず、何が起こったのかも理解することはできませんでした。

その後の研究で、この現象には「X線残光」が確認され、それは数日の間残ることがわかったのです。これにより、科学者たちはガンマ線バーストがどの座標で起きたのか、発生位置を特定できるようになりました。

「あすか」が観測したガンマ線バーストのX線残光。右が発生一日後。左は二日後。/Credit:JAXA/ISAS

その結果、ガンマ線バーストは遠いものでは130億光年もの遠方からも届いており、発生後にはその場所に超新星の光が確認できることがわかりました。

このことから、ガンマ線バーストは非常に重い天体の崩壊現象により発生していることがわかったのです。大質量星の崩壊とともにブラックホールが形成された場合、その中心から回転エネルギーを使って細く絞られ磁化されたプラズマが、相対論的速度(光速の99.99%の速度)のジェットとなって噴出します。

指向性(偏光度)が高いのは、シンクロトロン放射であるためと考えられています。これは強力な磁場によって弾体を一方向へ射出する装置と似たような原理で起こる、粒子の方向が揃った放射現象です。

ガンマ線はこのジェットの中に捕らわれており、崩壊した星外層を突き抜けてジェット放出されたとき、飛び出してくると考えられています。

ガンマ線バーストのジェットで起こる光球面放射のイメージ。拡大図の青い粒子は陽子。黄色い粒子は電子。/Credit:国立天文台

ただ、ガンマ線バーストのメカニズムにはまだ謎が多く、全てが完全に解明されているわけではありません。この辺りは、今後も詳しく研究されていく領域です。

時間を逆行している?

これらのガンマ線バーストで確認されているのが、時間反転現象です。鮮やかな光波が一方向に放出された後、逆の順序で再び放射されているスペクトルが確認できます。

下のグラフは2018年の論文で報告されたものですが、バーストからのパルスの立ち上がり時の波形と、減衰する終端の波形を反転して重ねるとピタリと一致していて、時間的に波形が反転していることがわかります。

バーストのパルス。右は実線が発生時、点線が終端のパスルを表し、反転・延長したものを重ねあせている。/Credit:Jon Hakkila(2018)

これはバースト現象が光速を超えるために、時間を逆行して起こった現象の可能性もありますが、この報告では原因は明らかとなっていませんでした。

今回報告された最新の研究では、この原因について説明しています。

それによると、ガンマ線バーストの起こるジェットの中では、光が媒質(ガスまたはプラズマ)を通るとき、真空中の光速度cを下回っていると考えられます。

これは水などの媒質中を光が通過するときと同様の現象です。そして、こうした状態の時、媒質中を移動する粒子は、光を追い抜くことがあります。これはチェレンコフ放射として知られている現象です。

原発などでは、反射材の水槽から青い光が走ったと報告されることがありますが、これがチェレンコフ放射にあたります。

実験炉で観測されたチェレンコフ放射。/Credit:Wikipedia Commons /Argonne National Laboratory

ガンマ線バーストの中ではこれと同じ現象が起こっており、ジェット内のインパクタ波(電子など)が媒質中を進む光を追い抜く瞬間と、追い抜かれる瞬間が発生しているというのです。

この2つの遷移は、相対論的なイメージとして、光曲線を時間通りに移動しているものと、時間に対して逆行している様に見える2つの現象として現れます。

ただ、これはまだ実験的に観察された現象ではありません。あくまで予想としての論文ですが、これならばガンマ線バーストの光曲線に見られる不思議な時間可逆性を説明可能だと言います。

もはや何が起こっているのかよくわからない世界の話ですが、こうした現象の中では、見かけ上でも時間を逆行することがあるようです。

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