「歩きたい」が届く。全身麻痺患者が再び歩けるようになる「外骨格スーツ」が開発される

technology 2019/10/09
Credit:FONDS DE DOTATION CLINATEC

Point

■全身麻痺患者が、思考内容を伝えることで歩くことができる「外骨格スーツ」が開発される

■「歩く」という脳波をコンピューターが読み取り、それを指令として変換し、スーツに送信する仕組み

全身麻痺を患う人が再び歩けるようになる「外骨格スーツ」が開発されました。

これは脳にインプラントしたセンサーを通して脳波を読み取ることで、思考した命令をスーツに送信することができるというもの。

スーツ開発に参加した、四肢の麻痺を患うチボーさん(30)は、スーツを装着した感想について「月に初めて降り立った人類になった気分」と形容しています。

チボーさん/Credit:FONDS DE DOTATION CLINATEC

スーツには、まだ多くの改善点が山積みとなっていますが、全身麻痺医療において画期的な挑戦であるのは確かです。

開発は、フランス・グルノーブル大学、メディカル企業Cinatechなどが参加しています。

研究の詳細は、10月3日付けで「The Lancet Neurology」に掲載されました。

An exoskeleton controlled by an epidural wireless brain–machine interface in a tetraplegic patient: a proof-of-concept demonstration
https://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(19)30321-7/fulltext

思考内容をスーツに送信

チボーさんは、フランス・リヨン出身の30歳男性で、4年前にクラブのバルコニーから15m下に落下し、脊髄を損傷しました。その後、肩から下がすべて動かなくなり、2年を病院で過ごすことになります。

それから2017年に、グルノーブル大学が始めた「外骨格スーツ」の開発実験に参加することになりました。

スーツは装着者の脳波を読み取って動く仕組みであるため、チボーさんは、まず体の動きを司る脳領域の表面に2つのセンサーをインプラントする手術を受けました。

Credit:FONDS DE DOTATION CLINATEC

各センサーに付いている64個の電極が脳波を読んで、その内容を外部コンピューターに送信します。その後、受信した内容をソフトウェアが読み込んで、スーツを動かす指令に書き換えるのです。

例えば、チボーさんが「歩く」と考えると、コンピューターがスーツの足を動かす指令となります。

Credit:FONDS DE DOTATION CLINATEC

思考を伝えるには厳しい訓練が必要

しかし、思考内容を正しく伝えることは非常に難しく、簡単には出来ません。

チボーさんは、ビデオゲームなどを使って「歩く」「手をあげる」といった基本動作を伝えられるように、数ヶ月間の訓練を行なっています。その結果、自らの思考によって、スーツを動かすことに成功したのです。

チボーさんは「2年間も立っていなかったので、自分が周りの人よりも背が高いことを忘れていました」と話します。

Credit:FONDS DE DOTATION CLINATEC

一方で、スーツは65kgの重さがあり、転倒防止のために、ラボ内の天井に繋がった状態でしか使用できません。また、一般の人と同じように全身が同時的に動く自然な歩行は不可能で、片腕・片足ずつの動作となっています。

現時点では、脳波を読み取って、指令に変換し、スーツにリアルタイムで送信できる情報量には限りがあるそうです。「歩く」という思考がスーツの動作に変わるまでには、100分の35秒必要で、それを超過するとスーツは機能しません。

実用化にはまだ多くの問題が残されていますが、将来的にこのスーツが全身麻痺の患者さんを手助ける可能性は大いにありえるでしょう。

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reference: futurismbbc / written by くらのすけ

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