「1人っ子は自己中」が偏見であることが科学的に示される

brain 2019/10/22
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Point
■自己愛的性格を調べるアンケート調査を行った結果、1人っ子と兄弟を持つ人との性格的な傾向の違いは確認されなかった

■1人っ子が自己愛的な性格に偏るという考えが誤りである可能性が高いが、こうした偏見をなくすには時間がかかる

1人っ子は甘やかされていて、利己的で自己中心的な性格になりやすい。そんな考え方を聞いたことはないでしょうか?

確かに、幼い頃に兄弟との競争や協調、または両親の愛情の分散などを経験せずに成長した人間は、自分優先な性格になりそうだ、というのはイメージしやすく納得できる説明かもしれません。

しかし、最新の研究は、1人っ子であることと自己中心的であることには関連性が見当たらないという事実を報告しています。

これは少子化傾向が進む現代社会において、親となる人たちには重要な発見かもしれません。

この論文は、ドイツのライプツィヒ大学の心理学者Michael Dufner氏を筆頭とした研究チームにより発表され、社会心理学および人格心理学の学術雑誌『Social Psychological and Personality Science』に9月19日付けで掲載されています。

The End of a Stereotype: Only Children Are Not More Narcissistic Than People With Siblings
https://doi.org/10.1177/1948550619870785

1人っ子につきまとう偏見

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今回の研究者たちは、まず世間の人々が1人っ子にどういうイメージを持っているかの調査を行いました。

この調査では556人を対象にアンケートを行っており、その結果から、兄弟姉妹がいる人でもいない人でも、同じように1人っ子は自己愛的である可能性が高いと考えている人が多いことが明らかになりました。

これは古くから言われていることで、実際アンケートなどの調査結果からこの結論を行っている研究も存在しています。しかし、今回の研究者たちは明確な証拠を提示している研究はまだ存在していない、と語っています。

その理由は、1つにサンプルサイズが小規模の実験が多く、有意差を引き出せていないということ、そして外部的な要因をきちんと考慮した分析が行われていなかったことなどを上げています。

今回の実験では、1人っ子233人を含む1810人を対象としたドイツの大規模縦断調査のデータを用いて、その回答を分析しています。ここでは、親の社会経済的地位、回答者の性別、居住地が田舎か都会か、また移住した場合その背景も考慮しています。これらの要因は全て、自己愛的な傾向へ影響を与える要因と考えられています。

研究で注目したのは、自己愛を測定するための2つの特性です。1つは他社からの称賛や注目を求める自己愛的特性で、もう1つは自分への批判を避けるために示す他人への攻撃的な特性です。

これらは自己愛の強い人の示す典型的な特性と考えられています。

結果は、1人っ子と兄弟姉妹を持つ人で自己愛的な傾向に有意な差はないというものでした。

研究者たちはこの結果から、1人っ子だから自己中心的になるわけではない、とかなり自信を持って宣言しています。

ただ、今回の研究には注意点もあると言います。それはドイツ人のみを対象としている点です。これは他民族へと調査範囲を拡張した場合、また異なった傾向が出てくる可能性もあります。

また、分析しているのが自己愛の外向的な性質についてのみである点です。自己愛には他に内向的な性質もあり、他人の評価に対して過敏で脆弱な面や、他人に傷つけられたくないというような面については、今回は評価されていません。

しかし、今回の結果からは一般的に信じられている1人っ子に対する仮定が真実でない可能性が高いことを示す科学的な評価結果です。

まだ追加の研究が必要となるでしょうが、研究者たちは「社会学者や政策立案者が、低出生率のマイナス面を語る際に、1人っ子ばかりになると世の中に自己中心的な人が増える、というような考えを出すことは避けるべきだろう」と論文の中で結論づけています。

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1人っ子の話しに限らず、確かに私たちはカテゴリーで一括りにして他人の性格を語ってしまうことがあります。世の中から、そうした偏見をなくすことは容易なことではありません。そのためにも、こうして科学的な根拠を示していく研究は、とても意義のあるものでしょう。

兄弟間でイジメにあうと精神病にかかりやすくなるという研究が発表

reference:sciencealert,ResearchDigest/ written by KAIN

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