死のタイマー「テロメア」の長さを「遺伝子操作なし」で2倍にしたマウスが誕生

medical 2019/10/26
Credit:depositphotos

Point

■寿命は細胞分裂の回数で決まっており、分裂のスピードが落ちることを「老化」、分裂回数が尽きると「死」を意味する

■分裂回数を決める「テロメア」の長さを2倍にしたマウスは、通常より12%も寿命が延びた

「人間五十年…」と歌われたのも今は昔。現代人の寿命は著しく伸び、特に日本人の平均寿命は84歳を超えて最も長寿の国の一つとなっています。

それでも「不老不死」という人類古来の夢には遠く及びませんが、現代科学は確実に一歩ずつ、その夢へと近づいています。

今回、スペイン国際ガン研究所(Spanish National Cancer Research Center)により、遺伝子操作をまったく行わず、マウスの寿命を12%も延ばす新たな方法が発見されたのです。

研究の詳細は、10月17日付けで「Nature Communications」に掲載されています。

Mice with hyper-long telomeres show less metabolic aging and longer lifespans
https://www.nature.com/articles/s41467-019-12664

死へのカウントダウン「テロメア」を止められるか

寿命の長さは、細胞分裂の回数によって決まります。

ヒトや動物の胚細胞は分裂を繰り返すことで成長していきますが、一生涯で行われる分裂回数は最初から決まっています。

分裂のスピードが落ちることは「老化」と呼び、ついに分裂できなくなった時が「生の終わり」を意味するのです。

この分裂回数を決めているのが「テロメア」という染色体の末端にある構造です。

テロメアは、細胞の染色体の端っこに付いており、染色体を保護する役目を持ちます。

赤丸部分が「テロメア」/Credit:ja.wikipedia

細胞分裂のたびにテロメアは短くなっていき、完全になくなると分裂はストップします。テロメアは、生まれたときに1万5千ほど存在し、35歳ほどでその半分、2000を下回ると身体は老化状態に入ります。

ただし、テロメアの減少スピードは、日々の生活習慣や心的ストレス、運動不足、寝不足などで変わります。要するに、寿命の長さは、死へのカウントダウンであるテロメアをいかに止めるかが鍵となるのです。

遺伝子操作なしで「テロメア」の長さが2倍に!

そして今回、いかなる遺伝子操作を用いることなく、テロメアの長さを延ばす方法が見つかりました。

研究チームは、ペトリ皿に幹細胞を放置し、それ自身で分裂増殖させたとき、通常の2倍の長さを持つテロメアが自然にできることを発見。さらに、これと同じ現象がマウスの胚細胞にも応用可能だと判明しました。

この胚細胞を通常の初期胚に注入し、2倍の長さのテロメアを持つマウスをつくります。その結果、新たに誕生したマウスは、他と比べて平均寿命が12.74%も長くなっていたのです。

それだけに留まらず、マウスは悪玉コレステロールの数値も低く、老化に伴う悪性腫瘍の発生率が通常マウスより20%も下がっていることが判明しています。

テロメアが長いということは、例えるなら生まれたときからライフポイントが他の仲間より多いということです。

Credit:nature

研究チームのマリア・ブラスコ氏は「同じ方法をいますぐヒトに応用することは不可能ですが、遺伝子操作しなくても、生命には寿命が延びる余地が十分に残されている」と指摘しました。

また、テロメアに関する研究では、他に「テロメラーゼ」と呼ばれる酵素を用いて、テロメアを活性化させたままにする方法も模索されています。これが実現すると、身体の老化も止まるため、さらに不老不死へと近づくことになるでしょう。

Credit:pixabay

しかし、これには大きな危険も伴います。

というのも、身体は死ぬまで細胞分裂を繰り返しますが、脳は早い段階で分裂をストップします。つまり、身体の老化を止めることができても、脳の老化は止められないのです。

この問題を克服しない限り、見た目だけ若い植物人間のような人類が…という恐ろしい事態に陥る可能性もあるかもしれません。

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reference: futurismnhk.or.jpsciencealert / written by くらのすけ

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