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中性子星同士の衝突で重元素が誕生していることが初めて観測される

2021.01.27 Wednesday

2019.10.24 Thursday

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中性子星同士の衝突によりストロンチウムが生成されるアーティストイメージ。/Credit:ESO/L. Calçada/M. Kornmesser

Point
■鉄より重い元素は、恒星の核融合で生み出すことができず、生成過程の多くが謎に包まれていた

■重元素の生成は中性子星同士の衝突により起こっているという仮説が唱えられたが実証は困難だった

■2017年初めて中性子同士の衝突が観測され、このデータ解析によって地球質量の5倍に相当するストロンチウムの生成が確認された

宇宙には様々な元素が存在しますが、元々宇宙には水素しか存在していませんでした。

それ以外の重い元素は全て、元素同士の融合によって誕生しているのです。

もっとも代表的な例は、太陽などの恒星で行われる核融合反応です。太陽も水素を核融合してヘリウムを生み出すことで光り輝いています。

しかし、星の核融合で生成可能なのは鉄までです。それより重い元素は核融合反応では作り出すことができません。でも宇宙には鉄より重い元素は数多く存在しています。

星の核融合では作れないのに、重元素は一体どうやって生まれているのでしょう? これは宇宙の大きな謎の1つでした。

もっとも有力視されていたのは中性子同士の衝突による生成です。今回の研究は2017年に人類史上初めて観測された中性子星同士の衝突データを解析することで、この説が事実であることを確認したのです。

この論文は、デンマークのコペンハーゲン大学の天体物理学者Darach Watson氏を筆頭とした天文学者の国際チームにより発表され、10月23日付けで総合科学雑誌『Nature』に掲載されています。

Identification of strontium in the merger of two neutron stars
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1676-3

重元素の誕生

© 2018-2019 International Year of the Periodic Table of Chemical Elements.

E = mc2という有名なアインシュタインの式が表すように、物理の世界ではエネルギーと質量は変換可能な等価のものとして扱われます。

太陽が凄まじい熱と光を発しているのは、水素と水素を核融合してヘリウムを作った際少しだけ質量が余るので、その余剰分をエネルギーとして放出しているからです。

しかし、この様に核融合で質量が余るのは元素番号26番 鉄(Fe)までです。鉄より重い元素の生成では、元の元素の和よりも少しだけ質量が足りなくなります。つまり核融合によって逆にエネルギーを消費してしまう状態になるのです。エネルギーが足りない状態では、陽子のクーロン力を抑え込んで新しい元素を生み出すことができません。

そのためどれほど巨大な恒星でも核融合は鉄で止まってしまいます。

では、鉄より重い元素はどのように生まれているのでしょうか?

現在の物理学では、重元素はr過程という高速で大量の中性子を獲得する現象によって誕生していると考えられています。中性子は電気的に中性のため、陽子同士をくっつけるような反発は起こりません。大量に中性子が飛び交う状態なら元素は中性子を大量に取り込むことができるのです。

中性子はやがてβ崩壊によって電子を放出し陽子に変わります。こうして重元素が生まれるのです。

ではそのr過程は宇宙のどこで起こっているのでしょうか?

これについてはいくつか説が提唱されていますが、もっとも有力なのは中性子星同士の衝突によって起きるキロノヴァという大爆発です。

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