ベトナム、そして北朝鮮へ
海上ホテルは、竜巻などの自然災害による客足の低下や高騰する維持費のため、経営困難に陥りました。
しかし経営破綻に陥っても別の場所に移動できるということが、海上ホテルの利点です。当時のオーナーは、損失を補うために、ホテルをそのまま移動させて、ベトナムの会社に売り払ったのです。
ベトナムが戦後の観光ブームに突入したことで、海上ホテルは、高級な宿泊施設を迅速に手に入れるための良い機会と見なされました。
ホテルは「サイゴン・フローティング・ホテル」へと改名し、1989〜1997年にかけて、サイゴン川に留まることになります。ホテルはたちまち宿泊客の人気を集めましたが、海上ホテルの旅はまだ終わりにはなりませんでした。
ホテルは再び財政難に陥り、新たな買い手である北朝鮮へと移って行きます。
こちらは、北朝鮮のクムガンサン港に係留された現在のホテルの様子です。
あの頃の栄華はすでに失われ、廃墟然とした佇まいにはなっているものの、現在もひっそりとホテルとして経営しています。
美しい環礁地帯に浮かぶ楽園としてスタートしたホテルは、およそ1万4000kmを移動して、古びた港にたどり着きました。5つ星だった海上ホテルは、現在、利用者の平均評価2.8と輝きを失っています。