最初の現生人類が誕生した場所、南アフリカのボツワナと特定

history_archeology 2019/11/02
ヘイズ氏と現地民/Credit:Chris Bennett, Evolving Picture

Point

■現代人の祖先が誕生した地が、南アフリカの「ボツワナ北部」とピンポイントで特定される

■母系遺伝する「ミトコンドリアDNA」を調査することで、最初期人類の起源を追跡

■結果、最初期の人類は約20万年前にボツワナ地帯に生まれ、13万年前の気候変動に伴い移動していった

「およそ20万年前に南アフリカに現代人の祖先が誕生した」のは専門家の間でも共通の認識でしたが、その正確な場所は謎に包まれていました。

しかし今回オーストラリア生物医学研究所により最初期人類の誕生した場所が、ザンベジ川南部に位置する「ボツワナ北部」が最有力として発表されました。

そこには、現代技術なしには解明できない秘密が隠されていました。

研究の詳細は、10月28日づけで「Nature」に掲載されています。

Human origins in a southern African palaeo-wetland and first migrations
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1714-1

「ミトコンドリア・イブ」を探せ!

調査にあたり研究チームが着目したのは、「ミトコンドリアDNA」です。

ミトコンドリアDNAは、細胞小器官であるミトコンドリアの中に保持されており、「アデノシン三リン酸(ATP)」を生産する重要なDNAです。また、ATPはすべての生命に欠かせない生命活動のエネルギー媒介物質です。

ヒトにおけるDNAの大部分を占める「核DNA」は、両親それぞれから半分ずつ受け継ぎますが、ミトコンドリアDNAは、原則として母親からしか受け継がれません。

Credit:pixabay

実は、このミトコンドリアDNAを調べれば、お母さんのお母さん、そのまたお母さん…と女系の祖先をたどることができます。

そうして現れるのが「ミトコンドリア・イブ」です。つまり現代人の母系祖先を遡れば、共通する一人の女性に行き着くという考え方です。

注意が必要なのは、すべての人類がミトコンドリア・イブから生まれたわけではないということです。イブと同時代にも他の女性はいましたし(子孫が男だけの場合にミトコンドリアDNAが途切れる)、イブのさらに前の先祖を遡ることもできます。

ただすべての母系祖先の中で、ミトコンドリア・イブが現代人に最も近い祖先ということになるのです。

頂点が「ミトコンドリア・イブ」、L0~L3系統がイブに最も近い/Credit:ja.wikipedia

現在イブに最も近い子孫たちが「L0系統」と呼ばれる遺伝子グループで、現在ではアフリカにしか存在しません。

研究チームは、L0系統の包括的なゲノム年表を確立するため、南アフリカに住む1000人以上の地元民から血液サンプルを採取しました。

その中には、L0系統のDNAを高い割合で保持することが知られている民族「コイサン」の人々(200人)も含まれています。

人類のゆりかごは「ボツワナ」

そして、収集された遺伝テータを地理的分布や気候、考古学データなどと重ね合わせた結果、L0系統の起源は、約20万年前のボツワナ北部地帯であることが判明しました。

ボツワナ(左下)の上部がザンベジ川

同地は「マカディカディ・オカバンゴ」と呼ばれており、昔は巨大な湖が広がっていたといいます。その後、徐々に水が枯渇していき、水分を含んだ湿地が広がっていったといわれてます。

研究主任のヴァネッサ・ヘイズ氏は「この湿地環境が、人類の繁栄に適していたのではないか」と指摘します。

現在の「マカディカディ・オカバンゴ」/Credit:inverse

人類は同地に約7万年滞在した後、約13万年前の他地域へ移動したといわれています。

ではそのきっかけは何なのでしょうか。

地軸の変化をシミュレーションしたところ、約13万年前にアフリカ南部に照射する太陽光の量が変化し、降雨量の増加を引き起こしていることが明らかになったのです。

よって人類が移動したきっかけは、気候変動が有力といわれています。

Credit:inverse

この気候変動により、植物の生い茂った地帯が、13万年前に北東へ、次に11万年前に南西へ広がったのでしょう。それに合わせて、第1陣が北東へ、そして第2陣が南西へ移動していったと考えられます。

そして第3のグループはそのまま同地に居残り、現在に至るのです。

ただしこの説にはまだ異論も多く、「確定」とするにはまだ考察の余地がありそうです。人類誕生の謎が解明されれば、私たちがどこから来てどこへ行くのかという謎にも光明が差すはず。今後の反証や研究に期待しましょう。

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reference: zmescienceinverse / written by くらのすけ

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