Point
■実際に光に当たらなくても、明暗をイメージングするだけで、瞳孔のサイズが変化することが判明
■瞳孔は、私たちの意思に応じて、明暗の変化が起きることを事前予測している可能性が高い
目の瞳孔は物を鮮明に見るために重要な器官です。
暗い環境下では多くの光を取り込もうとして瞳孔が開き、明るい環境下だと光を遮ろうとして収縮します。
これはカメラのレンズ絞りに似た機能で、瞳孔は必ず目の前の状況に応じて変化します。
ところがオックスフォード大学(英)の研究により、明るい物あるいは暗い物を心に描くだけで、瞳孔の大きさが変化することが判明しました。
ことわざにある「目は心の窓」とは、核心を突いた言葉なのかもしれません。
研究の詳細は、10月21日付けで「PNAS」に掲載されています。
https://www.pnas.org/content/early/2019/10/18/1909959116
「瞳孔」は一歩先を行く
研究チームは、明暗に関するイメージングのみで、瞳孔の動きに変化が見られるか実験しています。
健康な男女22名を被験者に、「暗い」あるいは「明るい」パッチを、それぞれ特定の音と結びつけて、繰り返し見てもらいました。例えば、「黒パッド1を見せるときは音1を聞かせる」というようなことです。
パッチは現れた2秒後に消えます。その後、被験者には、特定の音をランダムに聴かせて、それに対応する正しいパッチをイメージしてもらいます。
すると興味深いことに、被験者の瞳孔は暗いパッチを思い描いたときに拡大し、明るいパッチを思い描いたときに収縮していたのです。これは、瞳孔が実際に明るい物体や暗い物体を見せられたときに現れる反応と同様のものです。
研究主任のNahid Zokaei氏は「こうした瞳孔の反応は、明度の変化が起こる前にそれを予測していることを示している」と指摘します。
つまり瞳孔は、暗い部屋でライトをつける直前に収縮して、来たる眩しさに備えているのです。
瞳孔は、私たちの「電気をつけよう」という意思に反応して、明るさを先取りしていたんですね。