- 中国の研究により、抗炎症薬がうつ病に効果があることが実証される
- 身体的な炎症は、免疫システム・代謝・睡眠・記憶などを通して、心理的にダメージを与えていると予測される
中国・華中科技大学の研究により、抗炎症薬がうつ病に効果があることが判明しました。
近年の研究では、うつ病や双極性障害が、免疫システムの調節不全やサイトカインの過分泌、炎症反応を伴うことが証明されています。さらに、炎症がアレルギー反応と同じようにうつ病を常に引き起こすことが発見されているのです。
ここから、心理的な感情機能と身体的な炎症反応との間には、何らかの繋がりが存在すると予測されます。
研究の詳細は、10月28日付けで「Neurology Neurosurgery and Psychiatry」に掲載されました。
https://jnnp.bmj.com/content/early/2019/08/29/jnnp-2019-320912
抗炎症薬は「うつ病」に効く
炎症は、菌の蔓延や異物の侵入を防ぐために免疫システムが起こす防御反応です。例えば、外傷の周りにできる赤い腫れ(炎症)は、侵入する菌を隔離し、身体中に広がる前に退治しようとします。
このように、身体は病気の引き金となる原因に晒された時、サイトカインと呼ばれるタンパク質を作り出すのです。この物質が炎症反応を促進しており、体内のサイトカイン量を測定すれば、炎症のレベルを評価することできます。
そして、症例データの多くは、炎症が「私たちがどう感じるか」という心理面にも影響を与えていることを示しています。影響は、免疫系・代謝・睡眠・ストレス反応・認知的思考・記憶・気分などを通じて現れ、うつ病へと繋がるようです。
つまり、炎症とうつ病は強い繋がりを持っていると断定できます。
そこで研究チームは、1610人の被験者を対象に、うつ病に対する抗炎症薬の効果と安全性を検証しました。抗炎症治療には、NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)やスタチン、サイトカイン阻害剤などが含まれます。
その結果、抗炎症薬は、きわめて安全かつ効果的にうつ症状を緩和できると証明されました。効果には限界も認められる一方で、こうした知見は医療従事者にとって大変有益なものとなります。研究チームは今後、炎症の根本原因がいかに精神疾患と結びついているかを解明する予定です。
現在、世界人口の約6%が何らかのうつ症状にかかっていると言われる世の中で、精神疾患の効果的な治療法は需要を増し続けています。