100年の時を経て同じ場所に埋葬された2人のヴァイキング その理由とは?

- ノルウェー中部で、重ねて埋葬されている2人のヴァイキングの男女の遺骨を発見(2人の埋葬時期は100年異なる)
- 2人は、埋葬地が家族の所有物であることを証明するために同一の場所に埋葬された可能性がある
8〜11世紀にかけて、スカンディナヴィア半島を中心に隆盛を誇った海の戦士ヴァイキング。
彼らは、遺体を埋葬する際、ヴァイキングの象徴でもあるボートとともに埋葬する習慣を持っていたことで有名です。
ところが今回、ノルウェー科学技術大学の調査により、ノルウェー中部のVinjeøraにて、一風変わった奇妙な埋葬地が発掘されています。
そこでは、ヴァイキングの女性の遺骨が男性の遺骨の上に重なり合うようにして埋葬されていました。しかもDNA分析から、女性が埋葬されたのは9世紀半ば、男性は8世紀頃と、100年もの間を隔てていたのです。
これは偶然の産物ではありません。
というのも、全長7〜8mある女性のボートが、全長9〜10mある男性のボートにすっぽりと収まるように埋葬されていたのです。明らかに、何らかの目的があって埋められています。
2人には、一体どのような関係があったのでしょうか。
女性は「社会的地位」が高かった
出土した埋葬品から女性は、社会的身分が高かったことが判明しています。
遺骨は豪奢な衣服に包まれ、側には宝石や銅製のブローチやパールのネックレスなどの装飾品、それから食料と見られる物から大きな牛の頭部が発見されました。

さらに、遺骨のDNA分析の結果、女性の住んでいた場所や容姿、食べていたもの、何歳で亡くなったのかが明らかになっていると言います。
最も興味深い品は、十字型をしたブローチです。その形や表面の装飾模様から、ブローチはアイルランドで造られた馬具の留め金の一部であることが判明しています。

研究主任のレイモンド・ソバージュ氏によると、当時、ヴァイキングの間では、使わなくなった馬具を分解し、装飾品として再利用することが一般的だったそうです。
そして、この装飾品を身につけるのは、もっぱら位の高いヴァイキングに限られていました。
2人には「血の繋がり」がある?
一方の男性は、剣や盾、槍などとともに埋葬されており、生粋の戦士であったことが分かります。ただそれ以外では、遺骨や埋葬品の腐敗が激しく、多くの情報は得られていません。

しかし、最も気になるのはなぜ2人が重ねて埋葬されていたのかということです。
ソバージュ氏は「1つの埋葬地に複数の遺骨およびボートが埋葬される事例はありますが、100年もの間を隔てて、2つの遺体が重ねて埋葬されるのは聞いたことがない」と話します。
2人の関係性は今も不明のままですが、ソバージュ氏は「当時の時代背景からある予測が立てられる」と指摘します。それは、2人の男女に家系的なつながりがあったのではないか、ということです。

バイキングにとって「家族」は、身分上の理由だけでなく、法的な理由からも非常に重要でした。家族は個人の身分だけでなく、土地や財産の所有権を証明するものとなります。特に、埋葬地は土地の私的所有権を証明するために使用されていました。
さらに、ヴァイキング時代に存在した私的所有権に関する法律には、「家族が5世代にわたってその土地を所有していたことを証明しなければならない」というルールがあったそうです。
これを考慮すれば、2人が100年の時を経て同一の場所に埋葬された理由は、家族がその土地を所有していることを示すためだった可能性があります。
同地では、現在も調査が続けられているとのことです。