カラスに「マシュマロ実験」をさせてみた結果、未来を予測して計画的に行動できると明らかに

animals_plants 2019/11/27
Credit:pixabay
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  • マシュマロ・テストとは子供の忍耐力や将来の計画性を調べる実験
  • これをカラスで行うことで、本能に逆らって自身をコントロール能力や、将来の計画能力を調査した
  • 結果、カラスは報酬がより良くなる場合、己を制御し我慢して待つという行動が取れることが明らかになった

目先の利益を我慢することで、将来より価値の高い結果を得る――

こうした自己制御行動は、「未来を見据えて計画を立て意思決定する」認知能力がなければ成立しません。

1960年代にスタンフォードのウォルター・ミシェル博士は、人間のこうした認知能力の発達を研究するために、マシュマロ・テストを提案しました。

これは、子供に「15分間マシュマロを食べないで我慢できたらもう一個マシュマロをあげる」と約束して、子供が2つ目のマシュマロを見事ゲットできるかどうか観察するものです。

これまで、こうした研究は主に人間のみが対象で、他の動物との比較調査はあまり行われていません。そこで新しい研究では、このマシュマロ・テストをカラスで実験してみたと言います。

ずる賢いと言われるカラス、彼らの認知能力は一体どの程度発達しているのでしょうか?

この研究は英国ケンブリッジ大学の心理学者Rachael Miller氏が率いる研究チームにより発表され、動物行動学の査読付き科学雑誌『Animal Cognition』に10月19日付けで掲載されています。

Delayed gratification in New Caledonian crows and young children: influence of reward type and visibility
https://link.springer.com/article/10.1007/s10071-019-01317-7

マシュマロ・テスト

Credit:pixabay

通常のマシュマロ・テストは、人間に言語を用いて説明します。

しかし、言葉がわからないカラス相手に同じ実験をするわけにはいきません。

そのため研究者たちは実験を少し修正し、透明なケースの中に一部が突き出した回転するトレイを置いて、その上に2つのおやつを置きました。手前には満足度の低いおやつ、奥には豪華なおやつ(例えばリンゴ片の代わりに肉)か量が多いおやつを置きます。

どちらかのおやつを取った場合トレイの回転は停止します。そのため、おやつはどちらか1つしか手に入れることはできません。

我慢できずに最初にやってくるおやつを取ってしまうと、奥にある豪華なおやつは手に入らないというわけです。

Credit:Miller et al./Animal Cognition, 2019

この装置の仕組みを十分学習させた上で、本番のテストを行いました。

これは比較実験なので、同時に子供も使って同じ装置で実験しました。ちなみに、この実験では子供へのご褒美はちょっと豪華なおやつではなく、キラキラステッカーにしたそうです。

実験では飼育されたカラスではなく、野生のカラスを9匹捕まえてきて行ったそうです。人間は3歳から5歳までの子供61人に協力してもらいました。

結果は、人間の子供とカラスで違いがありませんでした。どちらの場合も、より良い報酬のために、評価の低い報酬は見送って辛抱強く待つ選択をしたのです。

報酬を隠したら?

実験はもう一つケースを不透明にして何が入っているか見えない状態でも行われました。

この場合、カラスより子供のほうが良い報酬を手に入れるという結果が得られたと言います。

何が隠れているか見えない以上、目の前の報酬を見送って待つためには、別のもっといい報酬が隠れている可能性についての推論が必要になります。

こうした決定を下すことはカラスに精神的負荷をもたらしたのかもしれません。

また、この実験には少し問題があったようです。

実はこの実験は、設置するときに子供も同じ部屋にいたので、箱の奥に良い報酬が設置されているのを子どもたちは見てしまっていたようなのです。

カラスは野生のものを使ったので、設置中は部屋の隅に逃げてしまって何をしているか見ていませんでした

そのため、カラスと子供で結果に差が出てしまった可能性があるそうです。

こうした異なる種族間で、認知能力の成績を比較するという実験は、自己制御のメカニズムをより理解するための将来的な研究に役立つだろうと研究者は語っています。

やはりカラスは賢い

2014年にもニューカレドニアのカラスで、実験が行われました。そこでは水の入った管の中に餌を浮かべてありますが、そのままでは届かない容器を使いました。

この実験ではカラスは水の中に物を落として水位を上げ、餌を手に入れるという方法を取りました。これは7歳の児童に相当する知性だと言います。

今回の実験でも、カラスは高い知性を発揮し、良い報酬を得るためには辛抱強く待った方が得だという自己制御の行動を見せました。

人間と動物の大きな違いはより長い未来を思考して行動の決定ができるかどうかにあると言われています。

人間はこの能力が発達しすぎて、あまりに先の未来を思考できるようになったゆえに、死の概念を知ってしまい、そのために宗教や葬式のような文化が誕生しました。自殺してしまう人がいるのもこうした能力の弊害かもしれません。

カラスにそこまで未来を考える力はないでしょうが、彼らもまた未来を思考した上で、より良い結果を得るために計画的に行動する認知能力があるようです。

Credit:pixabay

ところで、マシュマロ・テストには子供の「自制心レベル」を測るという側面もあるそうです。別の研究では、1960年に行われたマシュマロ・テストの再現を2000年代の現代の子供で行ったという研究が報告されています。

それによると、現代っ子は昔の子供より長く我慢できるという事実が明らかになったそうです。

マシュマロ・テストには、ぜひ2時間映画館でスマホをいじらずに我慢できるかというバージョンも試してみてもらいたいですね。カラスには使えないでしょうが。

「最近の子は我慢ができない」は間違っていた。若者の自制心の高さをマシュマロ・テストが証明

reference:sciencealert/ written by KAIN

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