津波が東京タワー展望台と同じ高さに? 最新の研究で判明した2018年インドネシア津波の真実

science_technology 2019/12/05
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  • 2018年に発生したインドネシア・クラカタウ火山噴火による津波が、最大150mの高さだったとわかった
  • 火山崩落の地滑りによる津波は、地震よりも巨大な津波を生む可能性が高い
  • このレベルの津波が直接街を襲った記録がまだないのは、単なる運の問題だという

2018年12月22日にインドネシアのアナク・クラカタウ島の火山噴火は、近隣の島の海岸に最大で13メートもの津波を発生させ、437人もの死者を出しました。

原因は、火山噴火によって山が崩落し、海に滑り落ちたことだといわれています。

最新の研究で、このときのデータを解析しモデル化した結果、最大で150メートルもの津波が発生していたと報告されました。

日本でも、2011年の東日本大震災による津波の記憶は新しく、その恐ろしさはよく知っていますが、このときの津波は15メートルだったとされています。

地滑りによって起きる津波は、地震による津波に比べて非常に強力であることが知られていて、今回の解析結果も地滑り津波の恐ろしさを示す重要な報告です。

この研究は、東大の研究者を含む国際研究チームより発表されており、『Ocean Engineering』の2020年1月号(195巻)に掲載されています。

Numerical modeling of the subaerial landslide source of the 22 December 2018 Anak Krakatoa volcanic tsunami, Indonesia
https://doi.org/10.1016/j.oceaneng.2019.106733

危険な火山 クラカタウ

1883年のクラカタウの噴火の津波シミュレーション。/Credit:Steven N. Ward

上図は、2018年の津波の原因になったのと同じ、クラカタウ火山が1883年に噴火した際の大津波をシミュレーションしたものです。

クラカタウ火山は100年以上前にも噴火による津波を発生させていて、このときは3万人を超える死傷者を出しています。

今回崩落したアナク・クラカタウ島は同じ火山に属していて、この火山の海底噴火で1927年に形成された新しい島です。名前の意味は「クラカタウの子」を意味しています。

島にそびえる山は火山活動の影響で毎年5メートル近く高くなっていたと言いますが、それが2018年の6月に噴火し、12月には火山活動の影響で崩落して、巨大津波を引き起こしました。

津波の2カ月前に撮影されたクラカタウ火山の横方向の噴火。/Credit:VolcanoDiscovery/Krakatoa volcano explodes: spectacular huge eruption two months before 2018 tsunami

こうした火山噴火などに伴う地滑りで、大量の土砂が海に流れ込むことで発生する津波は、通常の津波に比べて規模が巨大になると言われています。

地滑り津波の脅威

2018年のアナク・クラカタウ島の火山噴火による津波は、人が住んでいる島の沿岸で確認された限りでは10メートル程度だったと記録されています。

しかし、ロンドン・ブルネル大学や東京大学の研究者はそれがこの津波の見せたほんの一部の被害に過ぎないことを報告しているのです。

彼らが今回の津波を解析しモデル化した結果、津波のピーク時の高さは100から150メートルに達していたというのです。

この高さはちょうど東京タワー展望台のある高さや、京都タワーの高さと同じくらいです。

津波は陸地に乗り上げるときもっとも高くなると言われています。東日本大震災では、この遡上高が40メートルだったと言われていますが、インドネシアの津波では陸地に当たった時点での高さが80メートルに達していたと言います。

これは重力の影響や摩擦によりある程度縮小した状態で、陸地に乗り上げこの高さだったのです。

「幸い、この津波がぶつかった島には誰も住んでいませんでした」とブルネイ大学の研究者Mohammad氏は話しています。

しかし、もしこの火山の5キロメートル圏内に人の住む海岸があった場合、50から70メートル近い津波に襲われていたでしょう。

崩落前後の島の様子。この崩落で山は228mも崩れて海に流れ込んだ。/Credit:Mohammad Heidarzadeh/© 2019 The Authors. Published by Elsevier Ltd.

今回のシミュレーションは、現実と状況を一致させるために、実際にインドネシア政府が計測した波浪計のデータが使用されました。

実際のデータを使用したシミュレーションは非常に重要な検証です。

これまでのモデルでは、波にはいくつかのピークがあると考えられていました。しかし、今回のシミュレーションでは、初期波がほぼ純粋な巨大な波のこぶを作り、仰角に広がって形成されたことを示しています。

これは高さが100メートル以上となり、波の長さ(波長)は2.5キロメートルもあったと考えられます。

これは地滑りの津波が、いかに強力なものになるかを示す最初の証拠になるといいます。

こうした種類の津波は、発生報告が少なく研究はあまり進んでいません。ほとんどの場合津波は非常に弱く、数センチ程度にしかなりません。

日本では地震の被害が記憶に新しいですが、その場合でも10〜20メートルという高さです。しかし、地滑りはこれより遥かに巨大な津波を発生させる可能性があるのです。

ほんの数年前にグリーンランドで起きた大規模な地滑りでも100メートルの高さを持つ津波が引き起こされたと言われており、発生源から遠く離れた漁村でも4人の死者が出ました。

現在こうした津波のピークが、人口の多い地域にぶつかった記録はありません。しかし、これは単に運の問題だろうといいます。

インドネシアだけでも130近い火山があり、多くは海の近くにあります。日本も火山と地震の多い国で海洋国です。こうした特殊な津波に対する研究と理解が、まだ見ぬ大災害の被害を最小限に食い止めるために重要になるかもしれません。

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reference:sciencealert/ written by KAIN
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