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しゃっくりはなぜ出るの? 胎児の「練習説」が浮上

2021.10.07 Thursday

2020.01.06 Monday

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point
  • しゃっくりは反射運動の一種だが、医学的には何の機能も果たしていない
  • 新しい研究は胎児のしゃっくりと脳波の関連から、これが呼吸訓練の名残である可能性を指摘している

人間生きていれば一度や二度はしゃっくりに悩まされた経験があるでしょう。

そのたびに思うのが「これなんのために起きるの? 人体に必要なものなの?」という疑問でしょう。

結論から言うと、残念ながらしゃっくりの存在理由は現在のところ謎のままです。

しかし、その理由について最近、興味深い説が発表されました。その説によると、しゃっくりは子宮内にいる胎児が呼吸を学ぶために必要な機能かもしれないというのです。

果たしてしゃっくりは本当に人間に必要なものなのでしょうか?

この研究はユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の神経科学の研究員Kimberley Whitehead氏を筆頭とする研究チームにより発表され、オランダの医学雑誌『Clinical Neurophysiology』2019年12月号(130巻)に掲載されています。

Event-related potentials following contraction of respiratory muscles in pre-term and full-term infants
https://doi.org/10.1016/j.clinph.2019.09.008

しゃっくりの謎

しゃっくりはハンマーで膝を叩いたときにぴょんと脚が跳ねるのと同じ様な、一種の反射運動です。

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こうした反射運動の多くは人間の身体を守るために起こるものが多く、熱いものに触れて即時手を引っ込めてしまうのも反射運動です。

しゃっくりは主に、食道や胃への刺激をトリガーにして、脳幹が横隔膜や呼吸筋へ信号を送ることで不随意な収縮を発生させることで引き起こされています。このとき、喉頭蓋という物を飲み込むときに気道に蓋をする舌の後ろの弁が閉じます。これが特徴的な「ヒック」という音を立てる原因です。

横隔膜が痙攣する以上、素直に考えれば何らかの呼吸を補佐する機能のように感じます。しかし、実際しゃっくりは気道を塞いでしまうため、呼吸に対して意味のある働きをしていません

異物を吐き出して窒息を防ぐような絞扼反射という反射運動も存在しますが、しゃっくりはそうした運動とも異なり気道や喉を保護する動きもしていません。

このため、研究者たちは、しゃっくりの反射運動が「何の機能も果たしていない」と首を傾げています。

そこで提唱されているのが、しゃっくりは今の私たちに必要ではないが、かつての私たちに必要だった機能の名残なのではないか? という考えです。

成長した私たちと異なり、子宮内の胎児はまるで状況が異なっています。子宮内では、胎児は胎盤を通じて身体に必要な酸素を摂取しています。しかし、赤ちゃんは生まれるとすぐに自分の力で呼吸することを求められます。これに失敗した場合、命はありません。

こうなるとぶっつけ本番で呼吸をすることはリスクが高いでしょう。赤ちゃんは母親の子宮内にいるとき、しゃっくりによって呼吸筋を繰り返し収縮させ、呼吸の訓練をしているのです。

もちろん体内で本当に呼吸をする必要はありません。だからこのとき気道は閉じて吸入は阻害されるのです。

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新しい研究が行ったのは、子宮内の胎児や、新生児が行うしゃっくりと脳活動の関連です。

この調査によると、胎児は推定1日に14分程度しゃっくりをして過ごします。早いと、このしゃっくりは妊娠9週間という時期から始まっていたと言います。こうしたしゃっくりの発作は、新生児の脳波を刺激していました。

動物の研究では、不随意な筋肉の収縮は脳が身体の各部を認識するための「ボディマップ」形成に利用されているとわかっています。横隔膜の収縮も、潜在的に脳が呼吸筋の制御方法を理解するためのプロセスと考えられるのです。

人間の呼吸はほとんど無意識に行われます。しかし、私たちは深呼吸するときなど意識的に呼吸することも可能です。これは、赤ちゃんのときにしゃっくりを通じて呼吸筋の制御方法を脳が学んでいたためかもしれません。

つまりしゃっくりは、胎児のとき必要だった神経回路が生後も脳幹に埋もれて維持されており、何らかの刺激によって偶然活性化されて起きている可能性が高いのです。

このため、研究者たちの一致した見解は、「しゃっくりは新生児にとっては重要な機能だが、今の私たちにとってはまったく無用なもの」とのこと。

ゲームで例えるなら、テストプレイ用に開発時に入れていたシステムを消し忘れて発売しちゃった、という感じなのでしょう。しゃっくりはそんな開発段階の初期機能が悪さをする、ただのバグみたいな存在のようです。

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reference:livescience/ written by KAIN

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