人には光の強度のみを感知する「第三の視覚」があった

science_technology 2019/12/11
Credit:pixabay
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  • 網膜には視覚映像を作る神経細胞以外に、ipRGCと呼ばれる明るさだけを感知する第3の特殊な細胞がある
  • 新たな研究はこの細胞がさらに3つの種類に分かれており、昼夜の判別を行っていることを明らかにした
  • この発見は、自然の昼夜サイクルとリンクした自然な照明を設計するために役立つと考えられている

目は視覚映像を作るためだけに存在している器官と考える人が多いでしょうが、実は視覚神経の中には視覚映像を作らない特殊な細胞が存在しています。

これはipRGCと呼ばれる細胞で、明るさのみに反応しています。

米国カリフォルニア州のソーク研究所は、このipRCGが3種類の細胞に分かれていて、それぞれ異なる光への反応を行っていることを明らかにしました。

明るさのみに反応するipRGCは、人間が昼夜の判断を行うために機能していると考えられており、この働きの詳細を明らかにしていくことで、人間が屋内にいながら時間変化を体感できる照明の開発が可能になるかもしれません。

この研究論文は、ソーク研究所の研究者Ludovic S. Mure氏を筆頭とした研究チームより発表され、12月6日付けで学術雑誌『Science』に掲載されています。

Functional diversity of human intrinsically photosensitive retinal ganglion cells
https://science.sciencemag.org/content/366/6470/1251

人の視覚を作る2つの視細胞

左:錐体細胞。右:桿体細胞。/Credit:左,Ivo Kruusamägi/右,Madhero88/Wikimedia Commons

よく知られている網膜の視細胞は、錐体細胞と桿体細胞という2つの細胞です。

この2つはそれぞれ役割が異なっていて、錐体細胞は主に色覚の基礎を作っている細胞です。「赤」「青」「緑」という3原色にそれぞれ反応する3種類の錐体があり、色の付いた視覚映像を作り上げます。

ただ、錐体細胞は感度が低いため、明るい場所でしか機能しません。そのため、基本的に昼間に働きます。

一方、桿体細胞は色を判別する能力は持っていません。代わりに感度がとても高く、暗い場所でも形を判別することができます。このため、主に夜に働く細胞です。

暗い場所だと、「ぼんやり物の形がわかっても色の判別は付かない」というのは、錐体細胞が機能せず、桿体細胞のみが機能しているからです。

視覚はこの2種類の細胞によって作られているため、長く人の視細胞は2つだけだと考えられていました。しかし、最近はこれに加えて、もう1つ視覚イメージは作らない視細胞が存在していることがわかったのです。

第3の視細胞 ipRCG

見つかった第3の視細胞は、正式名を内因性光感受性網膜神経節細胞. (intrinsically photosensitive retinal ganglion cell : ipRGC)と呼びます。長いの基本的にはipRCGと呼ばれています。

これは光の明るさのみを感じ取っていて、視覚イメージは形成しません。

視覚障害の人が、視力が無くとも昼や夜の感覚を理解しているケースが報告されています。これは上で説明した、視覚を作る2つの細胞にかかわらず、ipRGCが機能するために起こる現象です。

これにより、視覚障害の人は、見えないけど明るいことがわかるというのです。そして眠るタイミングや覚醒時間を調節することが可能になり、明るさで体内時計を保てるのです。

Credit: depositphotos

この人の持つ第3の視覚は、まだ未知の部分が多く正確な機能は明らかになっていません。

しかし、新たな研究は、亡くなったドナーから提供された網膜を電極上で培養し、光に対するこの細胞の電気的な反応を調査することで、その機能を明らかにしています。

それによると、ipRGCは実際には3種類存在しているといいます。

タイプ1は、光に迅速に反応し、神経がオフになるまでに長い時間がかかります。

タイプ2は、光に対しての反応が遅く、オフになるまでも時間がかかります。

タイプ3は、光が非常に明るい場合のみに反応し、反応速度はもっとも速い細胞で、光源が失われるすぐオフになります。

こうした機能の違いにより、ipRGCは光の品質や量、持続時間を計測し、それに応じた反応を身体に生み出すのです。

これは特に青い光への感度が高いことが知られています。こうしたipRGCの機能を利用すれば、青い光の強度を変えることで、脳を騙すこともできるといいます。

見えない視覚が人に存在しているというのは、面白い話です。こうした細胞の働きが完全に解明され技術に応用できるようになれば、夜中に眺めていても眠りに影響しないスマホとか、夜ふかしや一日中屋内にいても体内時計を調節できる照明ができるようになるかもしれません。

常人の100倍「色の数」が見える女性

reference:zmescience/ written by KAIN
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