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人には光の強度のみを感知する「第三の視覚」があった

2021.10.07 Thursday

2019.12.11 Wednesday

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Credit:pixabay
point
  • 網膜には視覚映像を作る神経細胞以外に、ipRGCと呼ばれる明るさだけを感知する第3の特殊な細胞がある
  • 新たな研究はこの細胞がさらに3つの種類に分かれており、昼夜の判別を行っていることを明らかにした
  • この発見は、自然の昼夜サイクルとリンクした自然な照明を設計するために役立つと考えられている

目は視覚映像を作るためだけに存在している器官と考える人が多いでしょうが、実は視覚神経の中には視覚映像を作らない特殊な細胞が存在しています。

これはipRGCと呼ばれる細胞で、明るさのみに反応しています。

米国カリフォルニア州のソーク研究所は、このipRCGが3種類の細胞に分かれていて、それぞれ異なる光への反応を行っていることを明らかにしました。

明るさのみに反応するipRGCは、人間が昼夜の判断を行うために機能していると考えられており、この働きの詳細を明らかにしていくことで、人間が屋内にいながら時間変化を体感できる照明の開発が可能になるかもしれません。

この研究論文は、ソーク研究所の研究者Ludovic S. Mure氏を筆頭とした研究チームより発表され、12月6日付けで学術雑誌『Science』に掲載されています。

Functional diversity of human intrinsically photosensitive retinal ganglion cells
https://science.sciencemag.org/content/366/6470/1251

人の視覚を作る2つの視細胞

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左:錐体細胞。右:桿体細胞。/Credit:左,Ivo Kruusamägi/右,Madhero88/Wikimedia Commons

よく知られている網膜の視細胞は、錐体細胞と桿体細胞という2つの細胞です。

この2つはそれぞれ役割が異なっていて、錐体細胞は主に色覚の基礎を作っている細胞です。「赤」「青」「緑」という3原色にそれぞれ反応する3種類の錐体があり、色の付いた視覚映像を作り上げます。

ただ、錐体細胞は感度が低いため、明るい場所でしか機能しません。そのため、基本的に昼間に働きます。

一方、桿体細胞は色を判別する能力は持っていません。代わりに感度がとても高く、暗い場所でも形を判別することができます。このため、主に夜に働く細胞です。

暗い場所だと、「ぼんやり物の形がわかっても色の判別は付かない」というのは、錐体細胞が機能せず、桿体細胞のみが機能しているからです。

視覚はこの2種類の細胞によって作られているため、長く人の視細胞は2つだけだと考えられていました。しかし、最近はこれに加えて、もう1つ視覚イメージは作らない視細胞が存在していることがわかったのです。

次ページ第3の視細胞 ipRCG

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