- 液体や細菌を自律的にはね除けるプラスチック表面のコーティング技術が開発される
- 「ハスの葉」の表面が持つ超撥水性がヒントに
サランラップやプラスチック容器は、食品保存に便利な一方で、細菌にはあまり耐性がありません。肉や魚など、生の食材を触った手から菌が付着してしまうことはよくあります。
そこでカナダ・マックマスター大学の研究チームは、細菌や液体を寄せ付けないプラスチックのコーティング技術を新たに開発しました。
このコーティングを施したプラスチックは、水や血液などの液体、抗生剤耐性のある危険な細菌を、自律的にはね除けることができます。今後この技術は、台所や病院などで応用される予定とのこと。
研究の詳細は、12月13日付けで「ACS Nano」に掲載されました。
https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acsnano.9b06287
「ハスの葉」がヒント
このコーディング技術がヒントにしたのは、「ハスの葉」が持つ超撥水性(superhydrophobicity)です。
ハスの葉に無数にある極小のエアポケットのおかげで、葉の表面が粗くなり、水を自然と弾きます。そのとき液体は、まるで針の束の上に立っているように、葉表面と液体との接触面積が最小になるのです。
研究チームは、これと同じメカニズムをプラスチック上にナノスケールで刻み込みました。さらに、化学処理によって、プラスチック表面の細菌反発特性を高めています。
その結果、水などの液体はもちろん、大腸菌やサルモネラ菌、黄色ブドウ球菌などもはじくことに成功しました。
実証テストでは、抗生物質への耐性が特に強い2種の細菌を、コーティングを施したプラスチック表面に散布しています。電子顕微鏡による分析では、表面への細菌の移動はほとんど見られませんでした。
研究主任のレイラ・ソレイマニ氏は「コーティング効果は持続的で、コストもかからないため、台所用品や病院の器具に応用することが期待される」と話します。
今後、研究チームは、製造会社と協力し、コーティング技術を用いたプラスチック用品を商品化する予定です。この技術を使った商品が市場に出回れば、台所の衛生事情が格段に向上しそうですね。