史上最高の精度でパルサーを解析!灯台みたいな教科書のモデルは間違いだった

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Credits: NASA’s Goddard Space Flight Center
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  • 中性子星のパルサーは灯台のように、2方向へ放射されるX線ビームが回転しているイメージで描写される
  • しかし、実際は強力な重力で歪んでいるため、表面の正しい状況はわかっていなかった
  • 新たな研究は高精度で中性子星を調査し、表面が単純な2極ではなく複雑な構造であると明らかにした

中性子星のイメージ映像を見たことがある人は、この星が灯台のように2方向へ明るい光を伸ばして回転しているのを見たことがあると思います。

これはパルサーと呼ばれる種類の中性子星です。強力な磁場によるX線を極から放射しながら高速回転しています

この放射は非常に規則的に繰り返されていて、初めて観測した学者はこれがエイリアンの送る信号だと考えたほどです。極めて短い時間内で規則的に繰り返される信号をパルスと呼びます。そのためこのタイプの星はパルサーと呼ばれるのです。

しかし、これは遠目にパルサーを見た場合のイメージでしかありません。

実際の中性子星は強力な重力を持っており、その周辺の時空は歪んでいます。そのため、星の裏側へ回った光も地球の望遠鏡に飛び込んでくるので、パルサーの表面が実際はどのようになっているかよくわかってはいません。

国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されたX線望遠鏡(NICER:ナイサー)は、パルサーであるJ0030 + 0451(略してJ0030)を高精度で観測し、史上初となるパルサー表面のマッピングに成功しました。

その結果は、教科書に描かれた単純な灯台のイメージとは異なり、複数の極を持つような複雑なパルサーの姿だったのです。

この観測による一連の論文は、現在『The Astrophysical Journal Letters』のNICER特集号に掲載されています。

パルサーが灯台のように光るモデル

パルサーの模式図。/Credit:宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所

中性子星は、十分に質量の大きい恒星が超新星爆発を起こした後に生まれます。

ブラックホールほどではありませんが、非常に高密度で重い天体です。今回観測されたJ0030も直径25キロメートルほどでありながら、その質量は太陽の1.3倍あります。

そして中性子星の一種であるパルサーは、星が非常に高速回転しています。J0030は1秒間に205回も回転します。

灯台のように2方向にX線ビームが発生する原理は、中性子星の強力な磁場にあります。強い磁場は星の表面から粒子を引き剥がして加速させ、星の反対側の極へとぶつけます。

こうして2つの磁極にホットスポットが生まれ、そこがX線で観測したとき、とても明るく輝いて見えるのです。

こうした地球と似たような磁石構造がこれまでのパルサーのモデルでした。しかし、実際パルサーはそれほど単純ではなかったようです。

思った以上に複雑だったパルサー表面

Credits: NASA’s Goddard Space Flight Center

中性子星は非常に強力な重力を持つ天体です。そのため周囲の時空は歪んでいて、高速回転するパルサーの裏から放たれた光が正面から観測される状況も生まれています。

このため星は実際より大きく見え、本来見えていない部分も見えている状態となり正しい解析ができませんでした

しかしX線望遠鏡NICERは、従来の20倍の精度である100ナノ秒(ナノは10億分の1)以上の測定ができるため、パルサーから放たれたX線の正しい放射位置を予測できます。

これにより、科学者たちはパルサーの正確な大きさを、不確かさは10%以下という非常に高い信頼性で計算できるようになったのです。

こうして観測されたホットスポットの位置は、これまでの予想と大きくことなっていました。今までの観測から予想されるホットスポットは北半球と南半球の極点に存在するように考えられていました。

しかし、実際は全てのスポットが南半球に存在していたのです。しかも、そのスポットの数は、磁石の極数から予想される2つではなく、最大で3つ見つかったのです。

研究チームは二手に分かれて、観測されたX線信号を再現するシミュレーションをスーパーコンピューターによって行いました。これは分析に1カ月もかかりませんでしたが、デスクトップパソコンで行った場合、10年はかかる計算だったと言います。

アムステル大学のチームでは、この計算結果が1つの小さい円形と長い三日月型のホットスポットとして現れました。

アムステルダム大学のチームによるホットスポットのシミュレーション。/Credits: NASA’s Goddard Space Flight Center

メリーランド大学のチームは少し異なる結果を示していて、こちらは2つの楕円のホットスポットと、さらにもう1つ他より冷たいスポットが南極近くに発生するという可能性を発見しました。

メリーランド大学のチームによるホットスポットのシミュレーション。/Credits: NASA’s Goddard Space Flight Center

理論上の予想では、ホットスポットの位置や形状は変化する可能性があることが示唆されていましたが、観測結果によるシミュレーションにより実際にその特徴が示されたのは今回が初です。

極が南半球に集中していて、最大3つも放射のホットスポットを持つというのは、これまで考えられていたパルサーのモデルとは大きく異る状況です。中性子星の核が一体どういう状態になっているのか、謎は深まるばかりです。

予想外に複雑な構造の中性子星パルサー。知れば知るほど謎の深まる天文学ですが、そこがやっぱり魅力なんでしょう。

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reference: NASA, 天文学辞典/ written by KAIN
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