「夕方の空に輝く宝石」金星が見頃に! 実は太陽系の中でも変わり者な話と、観測のポイント

science_technology 2019/12/28
Credit: ofugutan 夏の大三角形で知られる、わし座の1等星アルタイルと金星。明るさの違いは一目瞭然(2019年12月27日)

夕方に、西の空の低いところで輝く星。明らかにほかの星とは異なる存在感に、気になる人が増えてきているはず。

その星の名前は、金星です。金星は明け方か夕方にしか見えず、1時間ほどですぐに見えなくなってしまいます。

Credit: ofugutan 西の空に並ぶ木星と金星(2019年11月20日)

明け方に見えるときを「明けの明星」夕方に見えるときを「宵の明星」といいますが、2019年は11月頃から来年の5月頃まで「宵の明星」の時期にあたります。

観測チャンス本番が到来

先月末は見え始めの金星と、日々沈むのが早くなって見納めの木星と土星、それに三日月が並んで見られると注目されたので、観測に挑戦してみた方もいることでしょう。

とはいえ、かなり高い建物からや、ひらけたところでないと観測は無理でした。そのときの金星と木星の高度は、10度ありませんでしたからね。

Credit: ofugutan 月と惑星が並ぶ様子を撮影、葛飾区郷土と天文の博物館前にて(2019年11月29日)

ちなみに、高度10度というと握りこぶしくらい。このこぶしを使って星の位置を説明する方法は、星空案内人®として解説をしているときにもよく使います。

Credit: ofugutan

11月はまだ見えにくかった金星ですが、日々高度を上げ、ようやく観察しやすい位置までのぼってきています。今は日没が早いので、観察が可能な時間が長いのもポイント。

ポピュラーな惑星、金星

さて、太陽と月を除くと星の中で1番明るく見える金星は、世界各国で親しまれてきました。

たとえば、日本神話でアマテラスとツクヨミとスサノオは、姉、兄、弟という関係です。皆さんご存知のとおり、アマテラスは太陽、ツクヨミは月の神様ですが、スサノオは金星という説があります。

ほかには、漫画好きならご存じの、メソポタミア神話の愛と美と豊穣、戦の女神イシュタルでしょうか。名作、『天は赤い河のほとり』という漫画で、イシュタルと呼ばれる星が夜明けに昇るとき、古代ヒッタイトに召喚された女の子が戦の女神として活躍する話です。

このイシュタルと呼ばれる星は、金星。イシュタルは金星の神でもあるからです。トルコ出張の際、ヒッタイト遺跡にも訪れましたが、ちょうど夜明けに金星が見える時期でした。そこで、この漫画好きの後輩を誘って観察したら、感動されたものです(曇っていて、見られたのは隣の国ヨルダンになってしまいましたが)。

女神イシュタル / Credit: depositphotos

そんな金星は複数呼び名を持っており、「地球の兄弟星」もその1つ。

地球と金星を比較すると、金星は地球のすぐ内側で太陽の周りを公転しており、大きさを地球と比較すると、直径が約0.95倍、表面積が約0.90倍、体積が約0.86倍と非常に似ています。しかも内部構造まで酷似しているのだとか。

でも、もしも地球以外の太陽系の惑星に移住するなら、火星が第一候補とされていますよね。地球と火星の距離より、金星の方が地球に近いし、サイズも似ていて豊富な大気もあるのですが…。

実は、金星は太陽系の中でも極めて厳しい環境と、ユニークな素顔を持っている星なんです。

金星のイメージ画像 / Credit: depositphotos

ほかの惑星と反対の向きに自転している

太陽は、反時計回りに自転しています。地球をはじめとする太陽系の惑星や、月も自転と公転とともに、反時計回りで一緒です。

太陽系ができるとき、まず太陽が誕生して反時計回りで自転をはじめ、太陽の重力に引っ張られたガスやちりが太陽の自転と同じ反時計回りにまわっているうちに複数の場所で集まり、それぞれの惑星ができたからというのが一説。

ところが、金星の自転は地球やほかの惑星とは逆で、時計回りです!

ただ、本来は反時計回りなのだけど、自転軸が177.4°傾いているせいで、ほとんど逆さまの状態で自転しているととらえることもできます。

同じような状況で有名なのが、天王星です。土星のように輪っかがあることで知られていますが、輪っかが縦に描かれるイラストも多く見られます。

天王星のイメージ画像 / Credit: depositphotos

輪っか自体が縦になっているわけではなく、天王星の自転軸が97.4°傾いていて、ほとんど横倒しの状態になってしまっているからです。

金星と天王星が大きくひっくり返っている原因として、巨大な天体が衝突したからではないかと言われています。

また、金星はもとは地球と同程度の水があったと考えられていますが、現在は10万分の1程度しかありません。

太陽に近いから水が蒸発したにしては、少なすぎなので、この巨大天体の衝突のせいで金星の水分が取り除かれたという説もあります。

1年よりも1日が長い

金星の公転周期は225日ですが、自転周期は243日。つまり、1日の方が1年よりも長くなっています。金星に住んでいたら、頭が混乱しそうですね。

しかも、1990年代初頭の観測と2012年の探査機の観測データを比べると、自転が遅くなっているという結果まであるそう。後述する、高い気圧と星全体に高速の風が吹くことが影響していると考えられています。

超過酷な金星の環境

太陽系で一番暑い

もっとも太陽に近い、水星が一番暑いのでは?と思ってしまいそうですが、実は違います。

確かに水星の地表は太陽の光があたる「昼」の地表は最大約420度にあがりますが、あたっていない「夜」は最低約-180度にもなる極寒です。なので、平均では約179度。

いっぽう、金星は二酸化炭素を主成分とする、厚い大気に覆われています。二酸化炭素といえば、温暖化ガスのひとつ。

温室効果によって、昼も夜も変わらずずっと「暑い」んです。地表の温度は約460度にもなるそう。

深海レベルの気圧

金星の地表は90気圧もあります。水深900mの深海と考えると、大抵のものはぺしゃんこに。

そういえば、昔図鑑で見た「金星人」も、金星に人類が住む予想図も、雲の上に浮かんでいる設定でしたね。

上空だと気圧が低いので、ちょうどいい場所でという意味でしょうが、気圧以外にも過酷なので、そこまでして金星に住まなくていいのではと子ども心に感じました。

大気の上層に強風が吹き荒れる

金星の大気の上層では、秒速100mもの風が吹いています。金星をたったの100時間弱で1周してしまうほどの速さ。自転が速いならわかるけれど、遅いのに不思議です。

硫酸の厚い雲が覆っている

高度60㎞あたりに、濃い硫酸の雲が浮かび、惑星全体を覆っています。金星には火山がたくさんあり、火山ガスに含まれる硫黄化合物が硫酸のもとになったからというのが一説です。また、金星が非常に明るいのは、太陽光の80%近くが、この雲によって跳ね返されるからです。

Credit: NASA/JPL-Caltech 起伏が激しく、活動する火山がたくさんある金星

金星は、木星や土星と異なり、岩石の地表がある惑星なのに、火星探査機で見られるようなローバーが地表を練り歩いて、写真を送ってくる話は聞かないですよね。

これだけ着陸するのにも、地表に降りたあとも過酷な状況なら、納得な話。

実際のところ、1985年にソビエト時代の探査機Vega2号が金星の地表にランダーを送り込んだのですが、たったの56分しかデータを送信できませんでした。近くても遠い、謎につつまれた星と言えそうです。

ただ、技術探査の技術も発展してきています。周回軌道からでもヨーロッパの「ヴィーナス・エクスプレス」は大気や地表面の化学組成を、日本の「あかつき」は大気の流体運動をメインに調査し、新しいことがわかってきています。

金星は太陽系の中で唯一、地球とほぼ同じ大きさと質量を持っていて、地球と同時期に似たような姿で誕生したとされる星です。金星の研究は、なぜ地球が長期間海を維持でき、生命があふれる星になったのかという謎を解き明かすカギになると期待されており、これからも注目したい惑星です。

金星の観測でこれからの見どころ

まずは直近の話だと、今月12月29日に、細い月と金星が並ぶのに注目したいですね。定番といえる構図ですが、やはり美しい。

©国立天文台

また、金星がもっとも明るくなるのが2020年の2月17日です。マイナス4.6等星になり、1等星の約170倍の明るさにまでなるのだとか。

それに、高度が1番高くなるのは3月25日です。周囲が高い建物や木に囲まれるところに住んでいる方でも観測チャンスですよ。

ところで、下の図のように、金星は月みたいに満ち欠けをします。地球に一番近いときほど直径が大きく、欠けた三日月に近い形をしています。そして、遠くにあるほど直径は小さく、まるい形になります。ただ、太陽の後ろに隠れて(外合)、満月のようなまん丸の状態は見られません。

©国立天文台

そして、図で地球の右側にあるときが夜明けに見え、左側にあるときが夕方に見えるときです。明けの明星のときは「西方最大離角」、宵の明星のときは「東方最大離角」の位置に金星が来たときが、もっとも高度が高く見えます。

なお、満ち欠けは35倍程度の小さな望遠鏡でも確認することが可能。昨日、12月27日に実際に観察したのですが、ほぼまん丸の状態でした。

手作り望遠鏡「コルキット・スピカ」で観察

金星は夜明けか夕方、わずかな時間しか観測ができないので、観望会でターゲットにするところは非常に少ないです。

よって金星の満ち欠けは、自分で観測からこそわかる醍醐味。形が日々変わっていくのを見るのは、感動しますよ。明るい星なので、望遠鏡でとらえるのは難しくないですし、今からならほぼ「満月」から「三日月」の状態まで全工程を観察できますから、挑戦してみましょう。

夕方の夜空で金星はこれから約5カ月間、目を楽しませてくれます。下は明けの明星の観察の写真ですが、早起きするのが大変ですからね…(Instagramに、満ち欠けの観察もレポートしています)。

夕方は西の空に、ぜひ注目してみてください。

Credit: ofugutan 明け方に下弦の三日月と、金星と木星が並ぶ(2019年2月)

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Reference: 国立天文台(1, 2, 3), 宇宙ラボAstroArts, JAXA / written by ofugutan

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